第143話 依頼 ~「兄貴あっしが行きましょうか?」
こんばんは
今日もなんとか投稿できました。
では第143話どうぞ。
「オイお前」知矢へ何者かが後ろから声を掛け肩を掴まれそうになった。
しかし知矢はその手が肩にかかる前すいっと足捌きで体を躱しながら振り返り声をかけた主の方へと向き直る。
するとその声をかけた者は知矢を掴もうとした瞬間躱されバランスを崩し前のめりに知矢の脇を転がったのだった。
ドタン、ガタンと倒れながら通路に置いてあった台を巻き込み倒れた者。
その音に未だギルド内にいた冒険者やギルド職員が静まりかえり音の方向へ注目が集まった。
「いてててて、お前何しやがんだ!」未だ床に尻を付けておそらく床に強打したのであろう後頭部を手でさすりながらその者は知矢へ苦情を訴える。
(なんだこいつ?)知矢は避けたままの位置に立ちその者を黙って見下ろしていたが見ると知矢へいきなり声をかけ掴もうとしていたのはどうやら知矢と同世代ぐらいの若い男の様だ。
金髪に近い茶系の髪を逆立て革鎧を着こみ冒険者ブーツを装備し背中には大剣とまではいかないが長めの幅広剣を背負うその男。体は未だ大人には成りきれていなさそうだが身長も175程だろうか、がっしりとした肩を見るとそれなりに鍛えていることが見て取れる。
ようやく起き上がった男は周囲を見回し皆に注目されていると気が付くと顔を真っ赤にしながら周囲へ訴える様な口調で「お前いきなり何しやがる!」と知矢を指さしながら大声を上げた。
(いやいや何もしてないぞわしは)と思いながらも変な奴にからまれたなと嘆息しながら腕を組んだ姿勢で様子を窺がう。
「おい手前!人を転ばせておいて何黙ってんだ。何だその顔は!」その若い男は知矢の態度が気に入らなかった様子でヒートアップしながら訴える。
そこへ
「おい小僧」近くにいた老練そうな冒険者の1人がその若い男へ声をかけた。
「ああっなんだいおっさん、今忙しいんだ。それに俺は小僧じゃねえ冒険者ギルドEランク、直ぐにAランクへなる男。ガンツ様だ!」若い男は立ち上がりながら声をかけた冒険者へ振り向きながら自分を指さし自己紹介なのか何か自慢げに語る。
「おお元気だな将来が楽しみだ。じゃがな小僧、一応親切で教えてやる。お前ひとりで転んだだけだぞ。トーヤはお前に声を掛けられ振り返っただけじゃ」とそのガンツと名乗った若い冒険者の肩をポンポンとなだめる様に優しく声を掛けながら注意してくれたようだ。
その老練そうな冒険者は知矢を見知っており事の顛末を偶然目撃していたようだ。
その冒険者の話に周囲にいた他の冒険者たちはクスクスと笑いをこらえる様にしながら推移を見守っている。
「なっ!」若いガンツと名乗った冒険者はさらに顔を真っ赤にして老練な冒険者や周囲の冒険者から逃げるように背を向け「来い!」と知矢の背を押し速足で逃げるように去っていった。
知矢は(何故俺を連れて)と思いながらもその若い冒険者ガンツに従いギルドの奥に設けられている仕切り壁の向こう側に設けられているミーティングなどに使える自由スペースの最奥へと連れていかれた。
知矢とガンツがその場を離れると背後から「「「「ワハハハハッ」」」」と大きな笑い声が響いていた。
無理やり連れてこられた知矢はそこに置いてある椅子へ腰かける様に言われ何か話があるのかと取りあえずは大人しく腰掛けてみた。
「ったくお前のせいでいらねえ恥をかいちまったじゃねえか」ガンツは知矢の向かい側の席へガタンと腰かけるといきなり苦情を吐く。
「いやお前が一人で騒がしてただけだろ。俺は関係ない」知矢は一応は反論しておいた。
だがガンツは
「何言ってやがんだお前は。俺様が出遅れて依頼もなさそうな新米だから情けをかけて声をかけてやったんだぞったくよ。感謝しろ」
その若い冒険者ガンツは少し依頼を受けるには出遅れともなる時間にギルドを訪れた知矢を新米冒険者と勘違いし年齢が近い事もあり親切で声をかけたようだった。
知矢は(思ったより悪い奴じゃないのかな?)と考えながらも一応ステータスを鑑定してみた。
ガンツ・アレル・モレルス (16)
帝国子爵 モレルス家 4男(出奔中)
・身体 LV24
・種族 人族
・知性 B級
・耐力 C級
・成長 C級
・武力 C級
・幸力 C級+
・筋力 C級
・速力 C級
・魔力 C級
・特力 基礎生活魔法LV2、風魔法LV6、火魔法LV3、土魔法LV3、礼儀作法LV3、
教養LV8、品格LV4、儀礼儀式LV3
・行使力 弓LV5、剣技LV11、大剣術LV5
・冒険者ギルドランクE
と出た。
(うん?こいつ貴族しかも子爵の息子か。しかし出奔中とはどこかの誰かを彷彿とさせるな)
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『ヘエエークショーーーン!!』
「うわっギルド長こちらを向いたままそんな大きなくしゃみをしないで下さい!」
「おっと、すまんすまん」
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(しかしギルドランクEだが総じて能力は高くはないがそう低くも無い。何か抜きん出た光る能力でもあればよいのだが。まあ、若いしこれから鍛えれば良い事か。だがいつぞやの準男爵の娘に比べれば礼儀や教養、品格もましな方だな)
そう知矢は冷静にその能力を観察していた。
「そうだったか。それは気を遣わしたな。だが俺は今日は依頼を探しに来たわけじゃないんだ。ギルド職員に話があって来ただけでな。気を使ってくれたのは嬉しいが」
知矢はそう言った事ならと正直に話相手が気を使ってくれた事へ感謝を述べる。
「なに澄ました事を言ってんだ。どうせその日暮らしのFランクなんだもっと積極的にガンガン行かなけりゃ直ぐ逃げ出すか死ぬ目に遭うだけだぞ。お前俺達と来い。仲間は今店へ消耗品の買い出しに行ってるがすぐ戻る。これから森の奥でキリングパンサーの討伐とドロップ品の採取だ金になるぞ」
ガンツはどうやら知矢が駆けだしのFランク冒険者だと思い込み親切にも仲間へ入り討伐へ行こうと誘っているのだった。
(そういやわしはまだ自己紹介していなかったな。こいつも思い込みでわしをFランクと信じてるがまあ面白そうだから様子を見るか)
「キリングパンサーか。まあこの時間からでも狩る事は可能だろうが相手は身軽で動きも早い。しかも木の上を飛び回り瞬発力を生かした頭上からの攻撃はバカには出来ない。ダイジョブなのか」
キリングパンサー :
体長3m程の魔獣、鋭い大きな牙で食いつかれると引き離す事は出来ない強い顎を持つ。その体長の割に身軽で素早い動きは重剣士には不向きな相手である。
弓矢等の飛び道具、風魔法のサンダーなどが有効だが素早い動きで的を絞らせない。
基本木々の茂る木の上から地面を通る獲物を待ち構える事が多い。
しかし地面を走らせると人族の数倍の速さを誇り走って逃げる事は出来ない。
しなやかで美しい紋様の毛皮が人気。いかに毛皮に傷を付けずに倒すかがポイント。
「なんだ少しは魔獣の事を知っているようだな。だかそう言うのを耳学問と言うんだ。俺たちは短期間、2年もたたずにEランクに上がった冒険者チームだ経験だって十分積んでいる。俺達について来れば楽勝だ」
知矢を格下の冒険者と思い込み自信気に胸を張るガンツであった。
冒険者登録後2年以内でEランク。
これは特質早いと言う訳では無いが遅くも無い。
しかし16歳と言う年齢から考えると十分に同年代の中では頑張っている方である。
ボンタは18歳でしかも冒険者登録は既に6年目でDランクの最低位だ。それと比べれば確かに将来有望ではある。こうして積極的に知矢へ声をかける姿などから知矢もやる気と覇気に満ちているのは感じられる。
(剣技だけ見てもこの歳でLV11なら大したものだ。おそらく子爵家で家庭教師にでもついて幼い頃から修練は積んでいたのだろう。しかしキリングパンサーか。仲間が何人いるかにもよるが・・・)
「まあ手を貸すのは構わないが仲間の人数や能力にもよる。君は大剣使いでは無さそうだがその大ぶりの剣はキリングパンサーの素早さに付いて行けるのか」
「何を偉そうに言ってる。俺様は5歳の頃から剣技を学び今はLV10をとっくに超えているんだぞ。その技はキリングパンサーの速さ何ど何する物だ」
自信満々の答えるガンツだったが知矢は少し足りないかもと心の中で心配をした。
そこで知矢は今日の予定を思い出していた。
(伯爵の返答はまあ暫し時間を必要とするとして。オースティン騎士伯の事をニーナやガインへ聞こうと思ったがそれ程あわてる必要も無い。店の方は問題ない・・・他の件も明日中に戻れば大丈夫だな)
「よしじゃあ俺も同行しよう。おれはトーヤ、剣士ではあるが一応少しは魔法も使える。
よろしくなガンツ」
そう言いながらガンツへ右手を差し伸べる知矢。
知矢は一緒に狩りへ出かけることを決めた。
たまには同世代(今の見た目だけ)の者と一緒に活動するのも悪くはないと考えた。
「よし、トーヤだな。おれはガンツ。俺達について来れば楽勝だ。今夜の宿と夕食は保証するぜ!」
知矢の差し出した手をがっしり握り互いに力強く握手しあうのだった。
握手を交わした二人は仲間と待ち合わせをしている表の広場へ移動する事になったが知矢は
「ああ先に表に行っていてくれ、職員の方へ伝言を残すから」
と声をかけて別れた後、ガンツが先ほどの騒ぎを思い出し他の冒険者の目を気にするように慌てて出て行くのを見送るとニーナの席へと向かった。
「こんにちはトーヤ君」
いつものデスクでいつもの様ににこやかに出迎えるニーナである
「こんにちはニーナさん」
「トーヤ君、先ほどの騒ぎはもう済みましたか」
「あれニーナさんお気付きでしたか」
「ええ、ドンガラガッシャーンと大きな音を立ててましたしね。何かガンツさんとトラブルでも」
ニーナは勿論ギルド職員として冒険者のトラブルなどへは敏感に対応する。
しかし事が知矢である。何が起きても大丈夫であろうと推移を見守っていたのだった。
「いえトラブルでは無く」
知矢はガンツが親切に声をかけ依頼への同行を誘ってくれた事を話した。
「では彼はトーヤ君がAランクの冒険者である事をご存じないのですか」
少し驚きながらそして少し微笑むニーナ。
「ええ、まあ聞かれなかったと言うのもありますがですが逆にランクを開示すると避けられそうなので黙って同行する事にしました。それに・・・」
「それに?なんですか」
「いささか心配なんですよ。余計なお世話と言われそうですが彼の能力を少し見させてもらいましたがキリングパンサー相手では僅かに届かないかと」
”能力を見る”知矢は周りに他の冒険者がいる事で言葉を選び”鑑定”で確認したと言う事をニーナへ伝えた。
「そうですか。確かに彼の、彼らのグループは近年目覚ましい成長で将来が楽しみだと言う方も多いですね。
しかしトーヤ君の心配と同様にギルド長も心配していましたよ
『う~ん あいつらそろそろ痛い目に遭いそうだな。大怪我なんぞしなければ良いが』 ってね」
冒険者ギルドとは単に種々の依頼を受け付けて冒険者へ発注するだけが業務ではない。
冒険者の育成、能力向上、安全な活動を支援、生活環境の確認等その他多岐にわたる。
その中でも重要なのが冒険者がいかに安全に命を落とさず大怪我をせずに戻ってくるか、これるか。これを見極めながら依頼内容を精査し受注ランクを見定める。
ガンツたちのグループは確かに成果を上げているがEランクに上がりまだ日も浅い。そしてEランクで受けられる依頼の最高位に位置するのが今回受けた依頼 ”キリングパンサーの討伐とドロップ品の採取”であった。
「そうですかギルド長もね」知矢は案外アイツもギルド長らしいことを言うんだなと顔を思い浮かべていた。
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『フェーエエークショーーーン!!!!』
「うわっギルド長、又こちらを向いたままそんな大きなくしゃみをして!!!!!」
「すまんすまん・・・風邪でも引いたかな?」
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「でもトーヤ君が同行して下されば安心ですね。あっかと言ってトーヤ君も気を付けて行ってきてくださいね」
「ハイ、了解いたしました主任殿!」
知矢とニーナは笑みを交わしながらその場で分れガンツが待つ冒険者ギルドを出た先の噴水広場へと向かうのだった。
お読みくださる皆さま
いつも誤字の指摘や感想もありがとうございます。
皆さまのお言葉を読み返しながらこれからも頑張りますね。
時にお返事も出来ない事もありますがお許しください。
間を見てお返事したいと思います。




