第139話 谷と山の一族 ~(・・・・・・・『そんなやつら私たちがやっつけましょう!』)
もう明日に成っちゃう!!
何とか投稿できました
では第139話どうぞ
「精霊魂石に封じてある精霊を無事精霊を怒らせぬように静かに開放してほしい。その方法をこちらへ開示してくれ。それが俺からお前に聞きたい話だ。」
とうとう知矢がミサエラへ問うた。しかし押し黙り下を向くミサエラ。
その横で事情を知ってか知らいでかハラハラしているコルサミル。
ニャアラスは心配そうにミサエラを見てこちらもハラハラと落ち着きがない。
知矢はそんな空気の中じっとうつむいたままのミサエラを見つめ黙って彼女が口を開くのを待つのだった。
ミサエラから話を聞きだし精霊魂石の精霊を開放しなければせっかく破壊工作を未然に防いでも怒り狂うた精霊がこの都市で暴れまわっては意味がない。是が非にでも語ってもらわなければならなかった。
長い沈黙だった。
いや実際にはそれほど時間は立ってはいなかったのかもしれない。
しかし当のミサエラはともかく周りで様子を窺がいながら待つ者にとっては無限の時を感じていたかもしれない。
その中で知矢は黙ったままじっとミサエラを静かに見つめる。
「・・・・・ハーッ・・・ごめんなさい」
どのくらい時が過ぎたか、とうとうミサエラが口を開いて詫びを口にした。
「・・・思いもよらない事を聞かれたからどうしたらいいのかわからなくなっていたの。決して約束を反故にする気は無かったのよ」
ミサエラは未だ黙って見つめる知矢へ言い訳を口にする。
「あたしは・・・ルドマリッドでもはずれのはずれ、首都から魔馬車で2週間もかかる人が殆ど訪れる事ない渓谷の奥に住まう一族、そう ”精霊の谷の一族”よ」
そして静かに語り出したのだった。
精霊の谷、そこはルドマリッド人民共和国内でもほとんど知られることのない人の入り込むことも無い深い渓谷の奥にある精霊の故郷、楽園でもあった。
そんな精霊の楽園にはあらゆる種類の精霊たちが思い思いの生活を送っている。
精霊にも種々の属性、種族がおり殆ど交わる事も無いが互いに不干渉と言う訳でもなく各種族がその特性に合った環境で自由に暮らしていた。
精霊とは何ぞや。
その問いにすぐ答えられる者は居ない。
俗に、
この世界のあらゆる根源を司る力を持つと言う者も。
この世界を作り出した神々の使徒だと言う者。
この世界の裏側から来た異界の者だと言う者。
その他さまざまな議論があったがそれを証明させることが出来た者はまだいない。
そんな精霊たちが住まう谷にはいつからか人族が住むようになった。
住んでいる者達も自分たちの祖先がいつからここに住みどこから来たのかをも知る者はいなかった。
しかしそこに住まう者は不思議な力を持っているのは住まう皆が知っている。
時折姿を見せる精霊と戯れる子供。
話しが聞こえる者。
互いに意思を通じ会話が出来る者。
願いを伝え叶えてもらえる者。
助けを求めると力を貸してもらえる者。
望まれて精霊に踊りを見せる者。
精霊の気まぐれかそれとも意思なのか、はたまた何かの魔法なのか。長い年月そこに住まう者は精霊と交わる事のあたりまえにそんな疑問を持つ事は無かった。
しかし或る時代から少し状況に変化が現れる。
その谷から険しい渓谷を越えた山の向こうにも実は大昔から住まう者達がいた。
それを精霊の山の一族と称する。
その一族も精霊と交わる事の出来る者が少なからずいた。しかし精霊の谷の様子と大きく異なるのがその一族は精霊を自在に操る術を知っていた。
いつから知っているのか突然知ったのかなど何もわからない。
しかし確かにその一族は精霊を呼び出し、命じ自在に言う事を聞かせることが出来た。
一族はその力を自分たちの生活に役立てていた。
火の精霊に明かりを灯させる。
水の精霊に畑に水をまかせる。
風が欲しければ風の精霊。
狩りの時にも精霊を武器に狩りをする。
魔物に襲われたときにも精霊を呼ぶ。
あらゆる生活の場面において精霊をまるで自分たちの使役獣のいや使用人の如く利用していた。
しかし精霊も黙って使役されてはいなかった。
山の一族から距離を置き命じられないような距離を取り皆がその自由な生活圏を彼らの為に奪われ移動を余儀なくされた。
しかし山から離れても谷の周囲、反対の山にも広大な場所はいくらでもある。精霊たちは特に争う事も無く彼らの声が聞こえない場所にいればまた自由に暮らせるのだから。
しかし思わぬ事態となった。
精霊の山の者が1人その精霊使役の技を持って山を出ていた。
その者は精霊の力は己の力と思いその力を持って一旗揚げようと街へ出たのだった。
魔物と戦い魔獣を食らい都市で逆らうものを脅して欲しい物を手にする喜びを知ってしまいそこからの行動は話すのも馬鹿らしい程自分勝手なものだった。
しかしその都市から要請を受けた軍の兵士が男の前に現れ自体は急変。
いかに人族を遥かに超えた力を持つ精霊であっても数は力。
その精霊使役を使う者は捕らえられ同志より厳しい取り調べを受けた。
その結果人民共和国で知られていなかった精霊を操る方法がある事、その技を持つ村と人々がいることが政府に知られると精霊の山の一族は大軍の急襲を受け即座に管理下へと治められる事態となった。
その後軍や人民共和国の高官により精霊使役の技を持った者は全員軍の支配下に置かれ軍の協力の元、山狩りの末多くの精霊たちが再び使役される事となる。
その後軍の研究によって精霊を封じる魔法と封じる精霊魂石が開発され精霊使役、精霊召喚を持った山の一族はそのまま軍属として前線へと身を投じていった。
そんな精霊の山の一族であったが精霊使役の魔法が使えるが軍の思惑通りに増えず明確な増やし方も解らない年月が暫し過ぎていった。
ある年、如何に強力な魔力を誇る精霊も戦いに敗れその数を激減させていった事に危機感を覚えた軍は新たな精霊を得る為精霊使い達を伴い精霊の山一帯へ新たな精霊を捕まえる大作戦を実行した。
その過程で険しい山、渓谷の奥地に住む精霊の谷の一族の存在とさらに多くの精霊が確認され山の一族同様精霊の谷の一族も強制的に軍へと召喚されたのだった。
しかし山の一族と谷の一族では精霊の使い方に大きな差があった。
精霊使役、精霊召喚を使う山の一族は精霊に対して強制できる魔法を行使できた。
しかし谷の一族は願う、話す、通じ合うそう言った行為で精霊の力を”借りる”事が出来る、そういう違いがあった。
これは強制的に敵と戦わせると言う軍の思惑のかみ合わず精霊を怒らせると動かす事も出来ず結局軍の最前線で精霊の谷の一族を強力な軍事兵器として使用することが出来なかった。
その代わりに精霊の谷の一族は細々と精霊に願いその力を貸してもらいながら情報収集や破壊工作などの裏側の活動を強いられる結果となったのであった。
そんな話をポツリポツリと語ったミサエラは
「・・・あたしは精霊さんと小さい頃から友達だった。ううん精霊さんしか友達がいなかった。だから同志に命じられても精霊さんのやりたくないような事はわざと失敗する様に誘導したりその力を発揮できないようなお願いしかしてこなかった。だからあたしはいつまでたっても組織の中で役立たずの補助的な役割しか任せられないでいたの。
そんなあたしでも精霊さんたちは踊りを見せるとすごく喜ぶの。力がみなぎるし幸せな気分になるって言って友達ではない他の精霊さんたちも寄って来て踊るあたしを囲みながらみんな楽しそうなの。
だからあたしは出来る事なら精霊さんたちを全て開放して谷へそして精霊の山へ皆を介してあげたいっていつも思ってた。・・・・でも精霊さんがいないとあたしは何もできない只の役立たず。軍にもいられないし働くことも出来ない。ご飯も食べられない・・・だから今まで・・・・」
そんなミサエラの告白を聞いていた全員が沈痛な面持ちになりニャアラスに至ってはそのクリりとした大きな目から滝のような涙をこぼし声を上げて号泣しているのだった。。
話しを終えたミサエラは膝の上で両手を強く握りしめ必死に何かに耐えている様子だったが俯いた顔からはその手にポツポツと涙がこぼれ落ちていた。




