第136話 死刑だ! ~ 「貴様騙したな!」
遅くなりましたが第136話投稿いたします
<(_ _)>
「ニャア、俺は先にボンタが待つキャンプへ戻ってるニャ」
「ああ、俺も直ぐ追うから」
知矢とニャアラスは南の大国、ルドマリッド人民共和国から潜入した破壊工作員の極秘キャンプ地を探し精霊魂石へ封じられている精霊を暴発させることなく解放する術がないかを探しに来ていた。
情報のあった森へ探索へ入った知矢、ニャアラスそしてボンタであったが敵が仕掛けた罠にかかりボンタが猛毒へ置かされ危うく死ぬ寸前であった。
偶然通りかかった解毒、体内の毒を消し去る聖なる魔法 ”聖光”を使うことが出来るモームス司祭のおかげで一命をとりとめた。
その後ボンタを養生の為キャンプ地に残し知矢の従魔、ゴールデン・デス・スパイダーのピョンピョンに警護を任せ知矢とニャアラスはボンタが依然見かけたと言う洞窟が怪しいと捜索へ向かったのだった。
洞窟は長い通路や分岐点を持つかなり深い物であったがその先には知矢達が探していた”幻惑” と ”回避” の魔道具を制御する魔道具を発見。結界の解除に成功した。
その後洞窟を更に進むとやはりその先、もう一つの洞窟の出口がありそこにあったのは南の工作員のキャンプ地であった。
キャンプ地と表現したがその規模は岩ばかりの砦と言って良いほどの規模でありそしてそこには2人の女性がいたのだった。
ミサエラ、コルサミルと名乗る2人は知矢達の美味しい匂いに誘われ姿を現しその身分を治安維持官であると偽装し近づいて来た。
しかし知矢とニャアラスは既にその本性を事前に把握しており何も知らない二人は知矢達から提供された普段お目にかかる事さえない美味しい料理の数々に舌包みをうち身も心もとろけそうになっていた。
そんな状態で最後に知矢が放った一発”クリーム・フルーツたっぷりのパンケーキ”によって共和国に於いて長年はもうにより戦争されていた思考の防壁がものの見事に粉砕され自らの口からこの先にキャンプ地があると語り出したのだった。
ミサエラとコルサミルを連れ知矢とニャアラスは南の工作員のキャンプ地を再び訪れ今度は堂々とその全容を探り証拠の品や情報の元になりそうな書類などそして残しておいては危険だと判断した毒薬や武器類そして僅かな帝国イエン等も全て押収しマジックバックへと収納した。
「えっそのバック!」知矢が次から次へと押収品を収納するのを見たミサエラは知矢とその手に持つマジックバックを指さし言葉も無い。
「ああ、これはマジックバックだ。一つあるだけでかなり便利だぞ。最近は冒険者でも購入できる安い高性能のマジックバックが帝国に流通しているからな。ほんと便利になったよな」
ミサエラ達へ同意を求めるように話を振るが2人は
(ちょっとちょっとマジックバックって言ったら1つで30億人民ゲインはするわよ)
(安くなったって言っててけど。帝国の冒険者ってそんなに儲かるのかしら)
そんな二人の様子を知りながらも聞こえぬふりをしながら知矢とニャアラスは品を押収し終えニャアラスは一人先にボンタの元へと向かうのだった。
(ボンタに上手く話を併せる様に言っておいてくれ)
(任せるニャ)
「ニャア、俺は先にボンタが待つキャンプへ戻ってるニャ」
「ああ俺も直ぐに追いかけるよ」
残った知矢は周囲を再確認する様に廻りながら後ろをついてくるミサエラ達の様子を窺がう。
(やっぱりあたし冒険者になるわ。それで美味しい物を毎日お腹いっぱい食べる!)
ミサエラはそれほど積極的でなかった態度を一変させミサエラ。
(おいおいさっきと随分違うな、まああたしはもうそのつもりだったけどな)
あきれ顔のコルサミルであったがやはり彼女と同様にミサエラの思考を縛っていた魔法障壁もすっかりはじけ飛び跡形も無く消え去ったと見える。
「さてもう十分だな。これで伯爵様へ良い報告が出来そうだ。俺たちはこれから仲間と合流してラグーンへ帰還するがお前たちはどうする。報奨金の事もあるが、あっいやお前たちは任務中だったな。それを放り出して俺達に同道するわけにもいかないか」
「っえ、いやあたしたちは・・・」
(どうするのよコルサミル。このままだと報奨金貰えなくなっちゃうわよ)
(どうするって、このまま置いてかれたらそれこそまた草スープと堅パンダ。それだけは何としても避けないと)
「何をごそごそ言っている。ああ、任務の事か、なら所属部隊の事を管理貴族様へ報告しておくから後日受け取ればいいだろう。心配なら俺がこの場で一筆残しておいても良いぞ。」
知矢はわざとじらし焦らすように二人の心を揺さぶるのだ。
「いやあの、部隊っていうかなんていうか・・・」
「所属って言ってもねえ・・・」
「・・・・・」
知矢は黙って二人を見つめていた。
その真剣なまなざしを受けた二人は益々動揺してしどろもどろで何も答えられない時間が過ぎていく。
(もう無理よ正直に言っちゃおう。うまくすれば亡命できるかもよ)
(でももし拷問されて処刑とかに成ったら)
(さっきこの人が言ってたじゃない、帝国の法に明記してあるって)
(それ信じていいのかな)
(じゃああんただけ共和国へ戻る?あたしはもう嫌だよこれから毎日おいしいもの食べるんだから!)
(ええ自分だけずるい、じゃああたしも)
(よし決まりね!)
知矢はじっと二人が結論に達するのを黙って見つめていた。
(こいつら本当に話が漏れていないと思っているところがそもそも工作員として失格だろうに)
などと思いながら。
「あのう、少し話を聞いてもらいたいのですが」
コルサミルの方が知矢を上目使いに様子を窺がいながら口を開いた。
「ああ、なんだ。何でも聞くぞ」(さてやっと腹が決まったか)
「・・・あのですね、実は・・・あたしたち・・・」
「・・・・・」
「・・・ルドマリッドの者なんです・・・。いやあの騙そうとかそう言うんでなくていや何て言うかそのう・・・・」
「・・・・・知ってた」
「「えっ!??」」
「だから気が付いていたと言っている。
お前たちが二人して愚痴を言いながら火にあたっていたところも見ていた
。だから最初からお前たちが南の工作員と解っていて、でも腹が減っててかわいそうだと先ほどの獣人族のニャアラスがお前たちに同情するものだからじゃあ何か食べさせて元気を出させてやろうとさっきの場所で料理を作りお前たちが来るのを待っていた。
そういう事だ。」
「「・・・・・・騙したわね!!!!」」
一瞬唖然とし知矢の言う事がすぐに理解できなかった二人であったがやっと思考が廻ったのかコルサミルは腰の剣を抜き払い、ミサエラは腰の革箱、おそらくは精霊魂石が入っているであろう者へ手を添えその表情は目に怒りを灯し怒りに満ちていた。
「何を勘違いしている。俺たちはお前たちを歓待しご馳走したじゃないか。それも嘘だったとでもいうのか」知矢は腰の刀へ手を添える事も無く淡々と話す。
「それにさっきも言ったが、ニャアラスの奴はなお前たちがひもじい思いをしながら仲間の工作員を待っている様子を見て心から心配して『あいつらに美味しい物を食べさせるニャ』 と言いながら料理を準備していたんだぞ。それもこれも嘘だったと言うのかお前たちは」
「「・・・・・・」」
2人は未だ硬い表情のまま知矢への態度を変えてはいない。
しかし知矢はそんな事を気にもしない風に話を続けた。
「まっ確かにお前たちが帝国に来たからと言ってすぐに俺たちのような生活が出来るとは思えん。冒険者ってのは地道な努力の積み重ねだ。あのニャアラスだってやっとの思いでBランクまで必死に登って来たんだ。しかもその収入の殆どを親も家族もいない同族の幼い子供たちを食べさせて教育するために費やしている苦労人だ。その思いが奴をここまで登らせた。お前たちにそれが出来るかは疑問だ。
何といっても競争社会の強い意志の中で必死に生き抜く経験なんかした事は無いだろう。
まあそれは仕方がない、産まれた環境もある。だがこれからは違う。パンケーキ美味しかったろ、あれを毎日食いたいならそれこそ必死に何でも仕事を嫌がらずに必死になって働くんだ。そうすりゃ帝国なら十分に生きていける、勿論美味い物を食べてな。」
「拷問は」
「さっき言ったろ、そんなの帝国で許されるわけないだろう。ただし素直に全部話せばだが」
「死刑は」
「同じことを何度も言わせるな。
帝国犯罪史を資料室で読んでみろ南の兵士だって工作員だって戦いの中ではそりゃあ死者も出るだろう。しかし一度捕虜になった者で病気や老衰以外で死んだ者などいやしない。」
確かに知矢の言うことは事実であり拷問や死刑など帝国内では常とう手段として存在していなかった。
しかし知矢はそんな事を実はほとんど知りもしないで彼女たちへ話している。
”はったりだ”
しかし知矢の真実味溢れた説得力のある話に二人はその怒気をすっかり沈めていた。
そしてコルサミルは
「亡命できるようにしてくれる?」
「ああ、間違いなくなく約束する」
ミサエラは
「報奨金は」
「そっちはお前らの情報次第だな。ああ特に今欲しい情報があるそれが手に入れば報奨金ではなく俺から直接払おう」
「幾ら?どんな情報?」
ミサエラはそこへ食いついてきた。
「そうだな俺の知りたい情報が手に入りその情報通りに事が成せたら・・・金貨1枚を払おう。おっと小金貨じゃないぞ正真正銘の大金貨、1.000万イエンだ!」
そう言うと知矢は無限倉庫から大金貨を1枚とりだし指で挟むと二人へ指し示した。
「大金貨・・・本物!」
ミサエラはその輝きにぼおっとする。
「大金貨て何人民ゲインよ・・・」
コルサミルは貨幣換算が出来ない様だった。
「ルドマリット通貨で・・・・ざっと5.000万ゲインだ」
「「・・・・・・」」二人は一瞬言葉を失ったが直ぐ見ミサエラが覚醒した
「何欲しい情報って、何でも聞いて知っているならすぐに答えるわ!」
既にその金貨に目が眩んでいた様である。
「まあまあまて、ともかく仲間と合流してラグーンへ帰ろう。こんな所で情報を聞き出していたら夜に成っちまう。一度ラグーンで腰を落ち着かせてから酒と美味い夕食でも食べて一晩ふかふかのベットで寝てからゆっくり話を聞こうじゃないか。」
と知矢はここで焦って聞き出そうとするより逃げられた力が変わらない内にラグーンへ連れ帰った方が良いと判断した。
(ここまでは及第点かな。一応保険も掛けておくか)
「そうそう、一応お前たちへ旅費代わりにこれを渡しておく。勿論大金貨なんて訳にはいかないがな」
そう言うと知矢は大金貨を無限倉庫へ収納し代わりに小金貨を2枚二人へ差し出した。
「これは?」貨幣情報に疎いコルサミルが渡された金貨を手に眺めながら聞く。
「小金貨、帝国通貨で10万イエンだ。ええと人民通貨換算だと・・50万ゲインか」
「ヒエッ!ご、50万ゲイン!!」
コルサミルは驚きで声が裏返りながら手に中の小金貨を両手でぎゅっと握りしめるのだった。
ルドマリッド通貨で50万ゲイン。コルサミルたちが毎月与えられる評価報酬は2000ゲインそこから1500ゲインを同志へ強制的に上納させられており実質500ゲインが彼女たちの収入だった。
500ゲイン、帝国換算で約100イエンである。知矢の屋台でうどん一杯も食べる事が出来なかった。
因みに帝国冒険者ギルドのFランク新人が何とか稼ぎ出す月の金額は10万イエンであった。
勿論Fランクであろうともっと何倍も稼ぐ者もいたし平均で言うと25~30万イエンだ。
しかし装備や宿代、消耗品に武装維持費を考えるとFランクの収入は生活ギリギリであった。
Eランクの依頼をこなせるようになるとその生活に余裕が出てくる。先ずはFランクの冒険者が目指すのはそこで会った。
閑話休題。
「よし、じゃあ納得できたようだな。なら武器を仕舞って荷物を持ち俺について来い。森の外で仲間が待っている。早くしないと夜に成っちまうぞ!」
未だ小金貨に衝撃を受けている二人を急がせ荷物をまとめさせた。
こうして取りあえず南の工作員に生き残りであった二人を確保し都市へ帰還する知矢達であったが未だ精霊使いであるミサエラへ事実は伝えていない。
まずは都市へ、そう思い知矢はニャアラス、ボンタと合流すべくるどまりっと人民共和国の工作員が密かに作った隠し砦、キャンプ地を後にするのであった。




