第130話 南の女が2人 ~「ピョンさんあっしは一人で大丈夫っすよ」 「・・・『主の命令!』」
また更新が開いてしまった。
こんばんは。
やっと投稿できましたのでどうぞご覧ください。
では第130話です。
知矢はニャアラスを伴いボンタから聞いた洞窟を進みその奥で発見した魔道具を制御する魔道具魔力供給機のエネルギー供給源魔結晶を抜き取り幻惑や回避の結界の停止に成功した。
その後二人は洞窟を進み地上への出口を見つけたがその先には2人の女性と思しき気配を感じ確認のため接近するのに知矢の魔法、気配遮断を使い接近を試みるのだった。
(行くぞ!)ハンドサインでニャアラスへ合図を送ると黙って頷きニャアラスは知矢と共にそおっと洞窟の暗闇から出口へと進んでいった。
斜めに傾斜している洞窟穴から出ると周囲は広く木々が倒され倒れた木々を積み上げた仮の防壁が作られその内側には革のテントや革の日よけがロープで張り巡らされ中には木を加工した小屋なども作られており仮のキャンプにしては各所にしっかりと施設が設けられているように思えた。
(こりゃあかなり以前からここへ根を張っていたようだな)知矢はここが急遽作られたキャンプ地などでは無く帝国へ深く侵入した工作員たちの砦であったかと驚きながら周囲を確認していた。
「コルサミル、何だかわからないけど光の壁が消えたって事は結界が無くなったと言う事でしょう。それならあいつらが帰ってこない内にここから出られると言う事よね」
砦の中央、広場の様に空間がとられ中央には石組のかまどと屋根もありそこが暖を取り食事も作れる施設であると見受けられる。
そこには声の主、女が2人かまどに薪をくめ暖を取りながら話をしていた。
「ミサエラ前逃げ出した時にすぐ追手が掛かり罰として食事を抜かれたのを忘れたのか。あたしゃ腹へりは二度とごめんだよ」
コルサミルと呼ばれた女は木の枝を手に持ち振り廻しながら反論する。
その姿は細身であるが引き締まった体躯と革の籠手や胸当て、脛当てなどを装備して腰には中振りの剣を装備しているところから冒険者か剣士のもみえる。歳の頃は30前後。鋭い目つきをしているがその表情は何か諦めきった様子だ。
ミサエラと呼ばれた方は革のワンピースドレスに色取り取りの小さな石をあしらったネックレスとブレスレットを装備し背は低いが歳の頃は20代後半のように見える。その様子から魔導士か魔法使い系であろう。
「でも結界が無ければ魔獣なども侵入してくるわそれに通りすがりの冒険者やひょっとしたら帝国の兵士などに発見されるかもしれない。そうしたら私たちはどうなるの」
ミサエラは必死に逃げ出すことを提案しているがコルサミルは一向に話に乗ってくる気配が無い。
(逃げ出そうとしている? 南の工作員じゃないのか?しかし)
知矢が聴き耳を立てながら思案しニャアラスの方を見ると彼は知矢の顔を見て
(?わかんない)と首を傾げながら肩をすくめる。
(もう少し待て)と合図を送り観察を続けた。
「そんときはあたしの剣とあんたの精霊術でぶっとばせば良いのさ。だいたいこんなとこに兵士が来るわけないだろ。それに奴らが仕掛けた罠。あのえげつない毒針、見ただろう。あんなのにかかったらあんたお得意の精霊さまだって助けちゃくれないよ。
ここで大人しくしとくのをお勧めするね。
まあ、もっともあたしたちを救いに来てくれる王子様でも来たら考えなくはないけどな」
「貴方のそんな夢見る少女なところが今まで男が寄ってこなかった原因だって酒場のマリンダが言ってたね。」
説得を半ばあきらめたのかミサエラは枝かまどの灰をかき回し細い薪を増しくめた。
「ヘン、夢だけはタダで見放題さ。余計なお世話だよ」
コルサミルはプイと横を向き黙ってしまった。
「・・・でもさ今帝国の兵士に見つかって大人しく投降すればあんな国へ帰らなくて済むかもよ。そしたらもっと良い生活が出来る・・・かもしれないじゃない・・・」
ミサエラはかまどの灰をいじりながらふと呟く。
「・・・その辺、確証があれば・・・それもありなんだが。
共和国で聞いた話じゃ生きていくのも働くのも食べるのも全部自分たちでやんなくっちゃいけなくて飢饉でも国は食料を配る事も無いって話だし王族や貴族、金持ちが食べ物を溜めこんでるって話も聞くしよ。
そんなとこに行ったってあたしたちなんかすぐ飢え死にだ。ここで堅パンと草のスープが食べられる方が幸せなんだよ」
知矢は詳しい状況はつかめないが2人は南の大国の者だと言う事。そして不満を持っている事。
なによりミサエラと呼ばれている女は精霊使いであるような事を言っているのを聞きどう対処すべきか悩んでいた。
すると脇で同じように話を聞いていたニャアラスが知矢の肩を叩きハンドサインで(戻ろう)と言っていた。
それに無言で頷き二人は再び洞窟の中へと入っていった。
暫く洞窟の中を無言で戻り声も届かないであろう曲がり角の先まで来ると
「ふふぁーあ。黙っているのがこんなに辛のニャ」大きく息を吐く様にニャアラスは肩を落として話す。
「さて少しだけ情報が入ったがどう対処するか。
このまま突入して確保してから話を聞く。または声をかけて訳を話し協力を願う。それとも・・・・ニャアラスはどう思う」
隣でウニャウニャ声を出している友へ意見を聞いてみた。
すると
「ニャんだか少しかわいそうかもしれニャイニャ」と少しだけ聞いた二人の会話に同情を見せるニャアラス。
敵対する国の命令とはいえ帝国、その中核都市ラグーンへ潜入ししかも知矢達を危機に陥れようとしていた工作員の仲間であろうと思われた二人の女性であったがニャアラスはさわりだけとはいえ得た聞き及んだ情報に彼女たちへ同情を禁じえなかった。
元々獣人種猫族は優しい人柄と強い仲間意識を持つ種族ではあったが同時に他者をも仲間同様に心配したり助力を申し出たり時にお人好しな種族とも揶揄される程慈愛に満ちた種族であった。
そんなニャアラスが良く知らないしかも敵国の潜入工作員と思しき彼女たちの様子を少しだけ垣間見ただけではあったが大きく同情の気持ちが湧き上がってしまったようだ。
「ニャア、トーヤ彼女たちを助ける事は出来ニャイか」
ニャアラスは上目使いに知矢を見る。その目はすっかり感情移入してしまったようだ。
「助けるったってな。どうすりゃいいんだ、いやお前はどうしたい」
まだ知矢の中でも彼女たちへどう対処するか決まりが付いていない上にニャアラスが助けてほしいと言い出し考えが振出しに戻ってしまった。
実際はもっと情報を。具体的には彼女たちからじっくり話を聞いたうえで考えるのが筋であろう。しかし今は”精霊魂石”に封じられている精霊たちを静かに開放する術を得なくてはいけない。それが第一だ。
しかし彼女たちの片割れ、ミサエラと呼ばれた女は精霊使いであるかの話が話題に出ていた。
知矢は上手く話を付けて彼女に精霊魂石から精霊を開放してくれるよう頼むのも手ではあると思っていたがそれをどう持ち出すか。
ただ知矢達が顔を出して話をしたとしても素直に応じるとは思えなかった。
なにせ知矢達は帝国の住人で帝国の冒険者だ。
彼女達が所属する南の大国ルドマリッドは長年の敵でもあり今も帝国に侵攻するべく今回の工作員潜入以外にもあらゆる手を使い破壊工作や妨害工作時には暗殺などを繰り返している相手だ。
個人の意思とは無関係に国同士が長い戦争の中にいてその国へ所属する以上一度顔を合せて話をしてすぐに協力するとは到底思えない。それが知矢の考えだった。
「ニャア、あいつらは逃げたがってるニャ。なら逃がしてあげれば喜んで協力するニャ」
ニャアラスの言う事は至極真っ正直な獣人らしい考え方である。
嘘の付けない、人をだまさない種族。それが獣人族であるのは広く知られている。
さらに先に記した通り慈愛の一族であるのだから当然ではあるが知矢が心配している事のもう一つに
”王国民は獣人が嫌い” と言う事実である。
何故か・・・知矢もまだこの世界に転移して数カ月。ニーナやその他の物からの聞きかじり程度の知識しかないが何故か帝国民は獣人を遥か下に見て毛嫌いする傾向どころか事実であった。
以前、知矢が夜道を急ぎ帰路へ着く途中に出会った裏町のいわゆる大人の店で客引きをしていた男も言っていた
『俺たちみたいな”南の大国”から流れてきたものは獣人以下の扱いだ、まともな職に就けるわけねえだろ 』
獣人以下の扱い。つまり南の大国の者は獣人を最下層と最底辺と認知し帝国へ亡命してきた自分たちはそれ以下の扱いだと腐っていた。
認識や考え方の違いであると言ってしまえばそれまでだが確かに彼ら亡命者は大手を振って帝国で生活をしている者は少ない。ほとんどいないと言っても良い。
しかし帝国民側から言わせると
『何故彼らは帝国民として生きようとしないのだ?』
『ルドマリッドを捨てて来たのにあちらの生活や待遇を持ち出して国が自分たちを養わないとまともに働こうとしないのは何故だ』
『同じ帝国に暮らす者が助け合わずにどうする』
と疑問に思ってしまう。
その亡命者たちは皆口をそろえて
『自分は3級市民階級の者だ。こんな5級市民の様な汚れ仕事などできん』
(商家勤めの者は皆普通に働いていますよ)
『獣人なんかと同じ店で飯が食えるか』
(帝国民の30%は獣人族の方ですよ)
『家賃だと何故住む家に、しかもこんなこ汚い狭い小屋に金を払うんだ』
(普通の単身者用の安いアパルトメントですけどね)
『何故仕事をするのに頭を下げるのだ。俺にやって欲しいならそちらが頼むべきだろう』
(職業あっせん役所から面接してやって欲しいと紹介されたのに何故)
一事が万事、皆がその調子である。
昔、帝国からの亡命者を受け入れ始めた頃から今に至るまで変わらぬやり取りであった。
そのせいで帝国内に置いて亡命者は自ら裏町へ集まり亡命者だけのコミュニティーを形成し引きこもっているのだった。
実際は彼らの生活費は帝国民の税金からかなりの額が補助金として支払われている現状があってもほとんどの者は当然と受け止め帝国民として馴染み溶け込もうとしないのだった。
そんな現実を知った知矢はニャアラスの気持ちはわかるが彼女たちへそれが通じるかを疑問視していた。
場合によっては獣人であるニャアラスにひどい事を言ったりするのではないか。友がそれで傷つく姿を見たくないと心配している。
そんな知矢の悩みと葛藤を他所にニャアラスは知矢がきっといい案を出してくれるのではと期待のまなざしを向けていた。
それが解る知矢は余計に思案が付かず考え込んでしまうのだった。
果たして知矢は何かいい案を思いつくのか。
それとも強硬策に出るのか。
時間は過ぎ去るばかりである。
そろそろ小腹も空いてきたが今はそんな場合では無い・・・・・
「そうニャ!! 良い考えがあるニャ!! 」
知矢が考え込む脇で唐突にニャアラスが声を上げた。
それはいったい・・・・・
明日は仕事納め。
今年も残りわずか。
来年まで7日を残すばかり
来年は良い年になるかな・・・・・中国のバカ野郎!!




