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第126話 長い夜が明け   ~あらトーヤ様がいらっしゃらない?どちらへ!!

先週から投稿が停止しまして申し訳ございませんでした。

師走は色々と立て込みまして(言い訳はいらんと言われそうですが)


では第126話どうぞ



長い夜が明けた

知矢はニャアラスと交代で2度の夜番を初めて経験したのだった。


1回目はあれこれと今後の予定に思考を巡らせたりともに起きている従魔とおしゃべりをして時間を過ごした。

2度回は従魔は知矢の脇ですやすやと寝息を立てているようにぐっすり寝ていた。

その様子を見ながら様々な物に思いを馳せながらも周囲に気を配り過ごした一夜だった。



結果的に魔獣や魔物が知矢達へ近づく事も無く一夜を過ごしたが神経を張り詰めながら体を休めると言う相反する行為で知矢は休んだ気がしなかった。

しかも前日知矢は不眠不休で攫われた使用人を取り戻しさらには魔道具商店へ襲撃を掛けようとした敵との戦いもあり疲労は蓄積した居た。



しかし1刻程を2回寝たことで気分はすっきりとしていたのは自分でも意外だった。


これは知矢の感覚がいまだ60歳を超えた頃の感覚を引きずっていたからであり今の知矢は最高神に寄り16歳の生気溢れる若者へと若返らせてもらったのだから1晩や2晩寝なくても、そして少し仮眠さえ取れば十分活動できる体だった。

その事を思い出す様に今更ながら


「そっか16歳の頃ってそうだよな」


と、親の目を盗み深夜番組を見たり寝ないで夢中になっていた流行りの小説を読んだり少しアニメや漫画に凝っていた頃はイラストを夢中で描いたりしてそんな時を過ごすとあっという間に朝を迎えていたがそのまま学校へ向かい授業や部活動を思いきりやっても途中で寝落ちする事など無かった青春時代、そんな時を思い出させた一夜だった。




一夜明け、昨夜毒の罠にかかり一時は死をも覚悟していたボンタが偶然通りかかった司祭モームスの光魔法”聖光”によって毒を消し去ることが出来一命をとりとめたのだった。

その後毒に侵されて極度の疲労からか一晩眠り続けたボンタも目を覚ました。



「おいボンタ。どうだ体は動くか? 思考は明確か? 」目を覚まして一時はぼーっとしていたボンタに知矢とニャアラスは毒の後遺症などは無いかボンタを問い詰める様に確認した。



「兄貴・・・・・あっしは・・・」


「覚えているか、敵のトラップにかかった事を」


「・・・・そうっす、滅茶苦茶痛くて痛くてその内苦しくなって・・・あっしは助かったんで」


「ニャア、ここが天国なら可愛い女神さまがいるニャ」


「って事は!はー良かった兄貴!あっしを助けてくれたんですね!!!!」


記憶が少しずつ明確になってきたボンタは受けた痛みや苦しみも思い出し今この場でこうしていることを知矢に泣きすがりながら感謝するのだった。



「おいおい泣くなよ、だがまあ良かった。

しかしな、お前の毒を体内から必死に拭い去ろうと懸命に努力したのはニャアラスだぞ!感謝しろよ!」



「ニャアラスの旦那!」涙に濡れるまなざしをニャアラスに向けるボンタ。


しかし当のニャアラスは

「俺はニャンにもしてないニャ。みんな司祭様がやってくれたニャ。

そうだお前ラグーンに帰ったら新司祭のモームスと言う方に礼をしろ! 礼じゃすまないニャ、お前教会でしばらくただ働きの奉仕活動をするニャ! 絶対だニャ! 」


そう言うニャアラスの話に困惑するボンタへ通りすがりの司祭様がお前を”聖光”の魔法で助けてくれたんだと繰り返し説明した。


「本当っすか! あっしは神様に助けられたんすね! 兄貴!あっしは帰ったらしばらくニャアラスの旦那の言う通り教会で働かせて頂きやす! もちろん無料奉仕っス! 絶対この恩は返します!」


泣き止んだと思うと今度は真剣な顔をしながら知矢へと訴えるボンタだった。


その後真摯に教会への奉仕をつづけたボンタは敬虔な母神デミレサスの教徒になるのだったがその話はいつか閑話にて書く機会が有れば。




その後3人で朝食を食べた後、今後の予定を知矢が話した。


「昨日の一件は不十分な下調べでむやみに捜索を開始した俺のミスだ。済まなかった」

と頭を下げると慌てたボンタだったがそれを押し留め


「そこで今日はまず俺が魔法でその森の結界と思しき周囲を十分にサーチして他にもあるだろう罠を全て洗い出す。そして安全が確認できてから改めて結界を破壊して奴らのキャンプの捜索を始めよう。」



それまでまだ病み上がりのボンタを置いてニャアラスは周囲の警戒を頼み知矢は1人再び森へと脚を踏み入れるのだった。




「コナビ、周囲を検索。罠や何かを全て残らず探し出すんだ。」


サポートナビゲーションのコナビへ指示すると


「”ピーン”了解しました。サーチします」と直ぐに知矢の視界へ周囲の状況が浮かび上がった。


「赤い印が全てトラップです。緑は穴や尖った木々などです。十分ご注意ください。」


「よし、ありがとう」知矢は周囲を見渡し特に赤く表示されるトラップを確認しながら近いものから順に近づいていった。



「思ったよりあるな。しかもドギツイ毒が仕込まれた物ばかりじゃないか」

知矢は一つ一つ丁寧に状態やどんな罠か解析しながら全てを撤去し無限倉庫へとしまうのだった。


「間違って取り出さない様にしないとな」ふと思いつき取り外した罠を収納する無限倉庫内をゾーニングしている箇所へ簡単に出さない様付箋を付けた。


これは無限倉庫のバージョンアップで可能になった事で、種類別希望別にタグを設定しておくと”剣”なら剣と設定しておけば剣を収納すると自動選別で剣のゾーンへ収納される。


飲み物、パン、弁当、その他入れる時にタグを設定しておけば一々自分で整理しなくても自動的に行ってくれる機能だった。

そのゾーニングしたエリアに付箋を付けるとその個所は安易に手が届かなく警告表示を出してくれる等も出来るようになっていた。


「レベルが上がるとホント色々便利さが増すな」

知矢は指定した付箋付きエリアにどんどん危ない罠を放り込むのだった。




かなりの時間をかけ周囲を念入りに検索して罠を取り除いた知矢だったがしかし今もって人に幻を見せる幻影と道を惑わせる回避の魔道具らしき反応が見つからない。


「うーん、仕方ない一度戻るか」

2時間以上森の中を捜索した知矢は二人の下へ一度戻り相談する事にした。



「あっ兄貴!」

いまだ横になり休んでいるボンタが目ざとく森から出て来た知矢を見つけ元気に手を振っていた。


「ニャア、遅かったから少しだけ心配したニャ。まあお前ならこいつみたいに下手を打つ事はニャイけどニャア」


未だ完全でないボンタを守る為周囲を警戒していたニャアラスは少し元気を取り戻したと見えるボンタを揶揄うのだった。


「旦那、もう勘弁してくださいっス」

助けられた事実があるので文句も言えないボンタは情けない顔をニャアラスに向けるだけであった。



「ああ、待たせて済まない。思いのほか周到に罠が仕掛けられていた。 しかしこれだけの罠を仕掛けるとなるとよっぽど見せたくない何かがあるとも考えるが・・・」

知矢は南の工作員がどんなことを考えてこのキャンプの周囲にこれほどの罠を仕掛けたのかを考えた。


「ニャアそれほど難しくないニャ。単にキャンプ地でゆっくり寝られる様にしかけていただけニャ」


ニャアラスの意見もあり得なくはなかったがどうも知矢には納得がいかなかった。


「だがな幻惑と回避の魔防具だけで十分に人を寄せ付け無くなっている。言に俺達はこれだけ探し回っても入口どころか魔道具のありかも発見できないんだ。

逆にこれほど罠を仕掛けていてはこの付近に何かがあると余計に目を引くんじゃないか?」



知矢の知識では場所を察知されている箇所に不用意に接近できなくするために罠を用いると考えている。

しかし場所や物、何もそこにありませんよという態で偽装しているのならそのまま静かに通り過ぎさせるべきなのではと。



考え込んだ知矢が椅子に座り込んでいるとピョーンと知矢の肩へ従魔が静かに飛び乗った。


従魔は知矢の頬をすりすりまるでいたわる様に前脚でさすりながら知矢に甘える。


「なんだピョンピョン。ああしばらくほおっておいたから寂しくなったのか。じゃあ一度昼にして考えてからまた捜索するか。」


知矢が提案すると従魔は喜びの波動を送りながらユーラユーラと知矢の肩で揺れている。



「ああトーヤ。お前が森の捜索中に魔獣を捕まえて捌いておいたからこいつを飯にしよう」とニャアラスは知矢に貰ったマジックバックから時間停止で捌いたままの新鮮なゲートボアを取り出した。


「おおゲートボアとは大物だったな。こいつは良いや、そうだな取りあえず昼は簡単に茹でて食べて夜はステーキとか焼肉にするか」

と早速下ごしらえを始めるのだった。



知矢は薄切りにしたゲートボアの肉を熱湯にくぐらせ火を通すと魔法で用意した氷水へと漬け込み水切りをする。


水気を取った肉を細かく刻んだ葉野菜や根菜に添え無限倉庫絵入れてあったパンを出し炭火であぶり並べた。

知矢のイメージでは豚しゃぶを作ったつもりだ。ゲートボアは比較的癖のない豚肉の様な美味しさだったので冷しゃぶにしても合うであろうととっさに思った。


しかし冬を迎えたこの時期に作る物でもないのかなと思ってもみたが知矢の少ないレパートリーと簡単に作れる思いついたメニューであった。


しかし使用人に作ってもらっていた各種ソースやドレッシングなどの壺も出し、ミネストローネの様な熱々のスープをよそると準備が過ぎに出来上がった。


無限倉庫と使用人のおかげで思った以上に温かみの出たお昼になった。



「このパンに切れ目を入れて広げたらそこに好きなだけ肉を挟んだり野菜を挟み好みのソースを掛ければ簡単サンドイッチの出来上がりだ。どんどん食べてくれ。

ああそうだスープはできたての熱々のまま持ってきたから火傷しないようにな。じゃあ頂きます!」


「「いただきます」」


三人は唱和しすぐに食事を始めた。



「このゴマの入った茶色いソースが肉と合うっすね」


「いやいやこの赤いソースの方が肉にも野菜にも合うニャ」


皆がそれぞれ思い思いの味付けで食べるそばでは従魔が知矢からゲートボアの内臓を分け与えられ夢中で食べていた。



「この辺りは街道に近いから頻繁にギルドへ周辺に出没する魔物や魔獣の討伐依頼が出てるニャ。だから獲物は少ない。今日はラッキーだったニャ」


主街道における交通の安全確保をの為街道を管理守護する貴族は定期的に自らの騎士団や兵士の訓練を兼ね大規模な魔獣掃討を行っている。

それに加え冒険者ギルドへも随時貴族から依頼が入る為、基本街道の周囲は安全レベルが高い。


全く魔獣に出くわさない訳では無いが絶対数が少ない分安全性が高いと言事になる。

もちろん街道を行き来する特に商人、商隊は自衛の為に必ず警護の者を連れるか冒険者を雇うのが一般的だ。

しかし個人や小さな商店、担ぎ商いの者は護衛を雇うと利益が出ない場合があるのでどうしてもためらう。

その上で安全を確保するためになるべく主街道を通るのだ。



「あっしがまだ冒険者になりたての頃よくこの辺で合同依頼を受けて魔獣狩りに来てましたよ。

もっともその頃はFランクの若い奴らで固まってE,Dランクの冒険者の後ろを付いて行くのが精一杯でしたが。特にまあご存知でしょうがあっしは殆ど荷物番か獲物をその場で捌く係ばかりやらされていましたっすけどね」


懐かしそうに話すボンタは半分恥ずかしそうにその頃の様子を語った。


「そう言う新人に経験を積ませる機会を作るのもギルドの役目だとか言ってたな」

知矢は以前ニーナから聞いた冒険者ギルドの創設時の話や役割について聞いたときの事を思い出した。


「ニャア、俺も新人の頃参加したニャ。もっとも俺は最初から先頭を走って槍を打ち込んでたニャ」

元々身体能力が高く幼いころから獣人の大人から基礎を仕込まれる慣例の獣人一族であるから初期登録時でも既にその能力は1ランク上の力は有していたのだろうと知矢は受け取った。



「ニャアラスの旦那は特別っすよ。人族の若いのはまあ殆どがあっしみたいな感じでしたからね。でもその後が皆どんどん成長っていうか上手く先輩冒険者に溶け込みながら依頼を重ねていく内にあっしはと差がついて・・・」



要領も悪く特出した身体能力を持つ訳では無いボンタは初期研修終了後にどんどん同期の者と差が広がっていったが同期の者達や先輩冒険者にグループに加わってもその要領の悪さと低い戦闘能力で次第に疎外され1人で細々とした依頼を受ける事が長く続いた苦い経験を持っていた。


そんな日本で言う処のボッチだったボンタを良いように使い走りにしていたのが札付き冒険者たちであったがそのお陰と自分でコツコツ細かいポイントを貯めやっとDランクにまでたどり着いたのであったがその札付きの冒険者たちと知矢への襲撃に加担した事で一度は冒険者資格をはく奪され路頭に迷いそうになった。


そんな時に得られた知矢とニャアラスが行く事になった指名依頼に加われそのお陰でこうして今は再び冒険者へ復帰しさらに知矢と言う強者つわものの先輩(実際はボンタの方が経験も歳も上であるが)の下へ置いてもらえるようになったことは人生最大の幸運であったと後に老後、孫たちへ若い頃の冒険譚を語った時にいつも言っていたそうだ。



「そういやさっきのFランク合同依頼の時にこの辺りで野営をしてやしたっけね。」

温かいスープをおかわりしながら少し元気を取り戻し始めたボンタがふと思い出した様に言う。


「あの時は途中で雨が結構強く降って最悪の野営でしたっすよ。でも誰かが森の脇で洞窟を見つけてからはそこへ野営地を移して難を逃れましたけど。あの時はこんな暖かい美味しい食事なんかなかったっすからもう冒険者なんかになるんじゃなかったって思った事もあったす」


ボンタの懐かしむ話を黙って聞いていた知矢はその話をふと気になった。


「おいボンタ。洞窟と言ったな。どんな洞窟だ。深いのか、広いのか。ただのくぼみのような穴なのか」


知矢が矢継ぎ早に問いただすとボンタは何か不味い事でも行ってしまったのかと少し焦るが重ねて問う知矢へ思い出しながら話した。


「いや、入り口はやっと立てる程度だったっすかねでも外へ向かって天井が上を向いていたんで火を起こしても煙は外に出て行って何とか暖を取りながら過ごしたっスから」


「奥はどうなんだ。行き止まりだったのか」

知矢は何かを考え真剣に問う。


「いやあ、皆恐るおそる奥を少し探検したっすけど何といってもFランクの若いのばっかりでしたっすから途中で怖くなって入り口だけしか使って無かったっす。でも今思うと奥から風が吹いていたんで煙が充満しなかったんすかね」


知矢の目が微かに開き目の奥が光ったように見えた。


「そいつを探してみよう!」


「何でニャ? こいつの話を聞いて探検したくなったニャ?」


「いや、よく考えてみろ。これだけ探して周囲に魔道具を設置する様子も気配も無いんだ。じゃあ入り口は?奴らが出入りするのに一々中から仲間が魔道具を停止して迎えるのか? ひょとしたら別に入り口があるんじゃないか。その洞窟を一度奥まで確認してみよう。何もないならまた他の所を探せばいい」


知矢はそうはいったがかなり高確率でそこが入り口になっているのではないかと考えている。



キャンプ地の周囲を惑わせ、罠まで張り巡らせ人を寄せ付けない。

逆に自分たちの通行も制限される。

ならばその罠も目標を惑わせるために使われていたのではないか。


そう考えた時ボンタの思い出した洞窟が怪しい。

もちろん全く的外れの事もあるが探索する価値はあると踏んだ。



食事を済ませた一行は知矢とニャアラスのみでボンタが思い出したように語った洞窟の捜索へと向かう。


ボンタは未だ万全とはいいがたい。本人は大丈夫っす自分も行くっスと訴えたが最後には重荷になって再び迷惑をかけるのならばと大人しくこの場に留まる事に同意した。


ボンタの傍らには知矢の従魔が控 『留守は私にお任せください!』と胸を張るように手を振るのだった。


かくして再び南の国の工作員が潜んでいたと思われるキャンプ地の捜索が再開された。


まだ罠やなにか困難や危険が待ち受けているかもしれないが知矢もニャアラスも今度は初心に帰りじっくりと捜索すると決め装備を整えボンタが思い出しながら語った洞窟へと脚を向けたのであった。




遠ざかる2人の背を見るボンタとピョンピョン。



「気を付けてください!」情けないと感じる自分の事を悔しがりながらもボンタは二人の姿が見えなくなるまで祈る様に見送るのだった。







関東の田舎に住む筆者は今朝の気温2度で少し安堵しました。

いやあ、天気予報が先週から脅すもので最低気温が-5℃とか言っていたからビビってました。

でも午後から風が吹き冷たい本格的な冬到来ですね。


中国ウイルスも猛を振るっています。

皆さまくれぐれもご自愛くださいませ。

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