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第125話 聖者降臨   ~『・・・・・・・(私は出番がありませんね)』

取り急ぎ更新を致しましたのでどうぞご覧ください。

第125話です。





「チッ! トーヤ、トラップにはご丁寧に毒がにってあるニャ。もうすぐこいつは死ぬニャ」


「痛ててて・・・えっあっしが死ぬんすか!!

嫌だな旦那。ねえ兄貴、嘘っすよね!死なないっすよね! すぐ直るっすよね!!!」


敵が仕掛けたと思われる踏み込むことで足の裏へ針が刺さる単純なトラップに引っかかってしまったボンタ。

傷自体は細やかな物で魔法治癒師がいれば”ヒール”の一言ですぐ癒える程度であった。

しかしこの針には猛毒が塗布されていた為その傷口は焦げ茶色に変色し周囲は毒に侵され紫色へと染まっていた。




「ニャアラス、俺は生活魔法の”回復(小)” ”状態異常回復(小)”を行使できるがそれで治るか」

知矢はボンタの傷から毒を絞り出すように手で明日の甲を必死に掴むニャアラスへ聞いた。


「ダメニャ、回復だと毒が入ったまま傷が治るニャ、状態異常回復は毒には無関係ニャ。光魔法の”癒しの光”とか毒を消し去る”聖光”ならどんな毒でも効くニャ」


そんな魔法をつかえる者はこの場にいない。このままだと毒が回り心臓や内臓へ到達する若しくは脳内へ達すると神経系が侵され生体信号が途絶えてどのみち死しかない。


「取り急ぎ毒が他へ廻るのを少しでも抑えよう」

知矢は腰の日本刀に結んであったさげ緒を解きボンタの足の付け根辺りをきつく縛り血流を止める事にした。


しかしそれも時間とともにじわりじわりめぐってしまうし血流を長く止めると足の細胞に血液が廻らなくなるため今度は脚自体が壊死する可能性もあった。


痛みのせいかそれとも毒の影響かボンタは地面にあおむけに倒れ歯を食いしばる様に苦しんでいる。


「薬草は無いか、毒消し草とか!」知矢は焦りながらも何か手はないか必死に考える。


「・・・ダメニャ。その辺に生えていたとしても傷の中、体の中に毒が入ったら毒消し草から作った毒消し薬じゃないと効かないニャ・・・薬師や教会の司祭でないと作れないニャ」



このままではボンタの命はそう持たない。最悪毒が廻る前に足を切断するしかないのか等と悩んでいた知矢。


「コナビ!毒を消し去る魔法は作れないか」

サポートナビゲーションコナビへ聞く


「”ピーン”光魔法のレベルが足りません。現状では不可能です。」


「じゃあ代わりに内々の毒を消し去ったり中和する方法はこの場に何かないか」


「”ピーン”周囲に生えている毒消しの効果を持つ草を10リットルの鍋いっぱいに煮詰め濃縮したエキスを皮下注射それに合わせて傷口をエキスに付け込む事で毒性を弱める事は出来る物もあります。ただし毒の種類によっては無効な場合もあります。」


「時間稼ぎでも何でもするさ。コナビ周辺にある毒消し効果のある草を示せ」


「”ピーン”表示します」


コナビのアナウンスに知矢の視界にはマップが表示され赤く発光する箇所が浮かび上がる。


示された草をとにかくかき集め知矢は無限倉庫へ仕舞ってあった料理用の寸胴へどんどん草を押し込む。



毒消し効果のある草が鍋いっぱいになった所で少量の水を注ぎ蓋をすると周囲で集めた枯れ木や枝を石積みの簡易かまどへ放り込み「ファイヤー」魔法で着火した。

焦りながらどんどん薪を追加しファイヤーの魔法を重ね掛けするとすぐに鍋はぐつぐつ沸騰し始めた。



蒸気を逃がさぬよう蓋の隙間に粘土状の泥を塗り固め一種の簡易圧力鍋状態にする。

もちろん蒸気は完全密閉されている訳では無いので蓋の隙間から少しは逃げるのだがそれで爆発はしないだろうと考えながら早くエキスが抽出されるよう祈るばかりだ。


「コナビ、鍋の中を観察して焦げ付かないかを監視できるか」

「”ピーン”了解しました」



鍋をコナビに預けボンタを診ているニャアラスの元へ戻ると日頃は陽気で饒舌な彼も真剣な顔で必死に傷口の周囲を絞る様に毒の排除を試みている。


「どうだ」


「・・・わからニャイ」


ひと言返すがその手は必死にボンタの傷口を絞る。

既にボンタは意識を失っているのか痛みに声を上げなくなっていたそれが毒のせいなのかもと考えるが今は手の施しようが無かった。



時折僅かに脚の付け根を縛る下げ緒を緩め僅かな血行を開通させるが直ぐにまたきつく縛るそれの繰り返しだ。




そして暫し後

「”ピーン”エキスの濃縮が一定状態へ達しました。利用が可能です」


コナビのアナウンスに知矢はすぐかまどから鍋を下ろしボンタの側へと運ぶ。


蓋を開けた鍋からは厚い蒸気が立ち上がり一緒にひどく苦そうで濃いにおいも立ち込め嗅覚が人族の何倍も鋭い猫人族のニャアラスは顔をしかめるが何も言わずエキスの入った鍋へボンタの足を漬けようとするが


「おい!ちょっと待て、このままだと傷が火傷になってしまう。今冷ますから少し待て」

「あっそうだニャ」慌てるニャアラスを押し止め知矢は鍋の周囲に生活魔法の”アイス”を唱える。


何度かアイスを重ね掛けし人肌ほどになった状態を確認した知矢は無限倉庫からコップを取り出しエキスを少し分け出すとニャアラスへ

「よし傷口を漬けてみよう」と声をかけ二人で抑えながらボンタの足を鍋へと浸す。



(皮下注射とか言ったが針どころかシリンジも無いし・・・)知矢は何かで工夫できないか思案しながらボンタの様子を観察する。


ニャアラスは傷口をエキスで洗う様にさするがボンタに今のところ変化はない。


黙り込む二人であったがその心中は焦りに満ちていた。


冒険者として一応Dランクの最下層へ名前を刻むボンタ。

そのランクもほとんどが自ら得たポイントでは無く誰かに寄生しながら分け与えられた僅かなポイントの積み重ねと自分で失敗を重ねてやっと得たポイントを併せやっとたどり着いたランク。

そんな冒険者としてはダメダメなボンタであったが襲撃者側であったはずのボンタがひょんなことから知矢へ心惹かれ嫌がるのも構わず「兄貴、兄貴」と付いて来ただけであった。

同行するニャアラスからも「お前なんかいらんニャ」などと罵声を浴びせられるのも数知れず。

知矢に捨てられたらもうどこにも居場所が無いと必死に知矢を慕ってその役に立とうと拙い努力をしてきたボンタ。


当初ボンタの持つ特殊な能力を使って知矢へ手を貸す事で給金代わりに金銭を支払い最低限の生活が出来る様にしその内自立させようと考えていたのだがいつの間にか使用人と同様知矢の家族のように仲間に溶け込みいつもそばにいて知矢の指示を受けたり暇なときは店の奥仕事などを手伝う殆ど使用人になっていた。


そんなボンタを知矢は自分でもいつの間にか受け入れていた事を不思議に思ったが黙ってそのまま傍に置いていたのだった。


確かに冒険者としての能力は高い方では無い。しかし我慢強さがその能力の基幹にあるが故どんな仕事も我慢強くこなす事で実は最近はどんどん力をつけてきていた。


知矢から直に剣技の指導を受けている訳では無かったが知矢が騎士団の者へ指導するのを陰から見て見よう見まねで実直にその訓練を積み重ねた成果は如実に成果として現れていた。


そんなボンタを当然のように今回同行させたのだったが知矢は怪我を負わせしかも毒に侵させてしまった事を悔やんでいた。



(ボンタ、お前の能力は我慢強い事だろう!頑張れ!)心の中で祈るように叫ぶ知矢だったがその甲斐も無くボンタはどんどん生気を失っていくように見える。



ボンタの顔はどんどん生気を失うどころか少しづつ顔色が土色を帯びてきた。

このままだともういくらも持たず命を失うのは明白だ。


知矢とニャアラスはそれでも必死で何とか毒に効くかもしれないエキスを擦りこみ生を願った。







その思いが通じたのであろうか・・・





「あのう・・・こんな所でどうかなさいましたか?」


必死にボンタに手を尽くしていた二人は背後から近づく気配に全く気が付いていなかった。


聴こえた女性の声に振り向くとそこには大きなつばの帽子をかぶった逆光で顔は見えないが小柄な女性が知矢達の様子を窺がっていたのだった。






「誰でも良い!!毒消し薬を持っていないか!持ってたら欲しい、どんな対価でも払う頼む!」


知矢はその人物が誰かという事より薬を持っていないかを問う。



「まあ、毒に侵されている人がいるのですね、私に見せてください」

被っていた帽子を脱ぎ去り放ったその女性は倒れているボンタへと知矢とニャアラスを押し退ける様に近づき顔色傷の具合網膜の様子をてきぱきと観察すると「これはいけない!」と呟くとすぐに




『数多の星の下に集いし救い人達よ、このか弱き者に聖なる光を集め清め救いを届けよ・・・』




その女性が呪文を唱えるとボンタへかざされた手が青白く発光し徐々に光を増していった。





『・・・忌まわしきものを ・ 聖なる力で ・ 癒し ・ 生を呼び起こせ!!』

    (ポイズン       ホーリー   キュア   リバイブ )




最後に力強く発した呪文と共にボンタの全身が青白い光に包まれる



「「おおおお!!」」知矢とニャアラスは奇しくも同時にその輝きを見つめながら(これは奇跡の光だ)と感嘆の声を上げた。





目の前で今にも朽ち果てそうな土色だったボンタは全身を聖光に包まれたかの如く輝いている。




果たして魔法が奇跡を呼ぶのか




そしてボンタは・・・・・・・






この女性は・・・・・・・・誰なのか





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