第124話 森と獣と・・時折、罠 ~「あっしの冒険者としての力を見せるっす!」
21時を回ってしまいました。
こんばんは。何とか週明け月曜日投稿できましたのでどうぞお読みください。
では第124話です。
知矢の使用人達を誘拐し更に店への襲撃の為ラグーンへ潜入した工作員たちを捕縛した時に工作員の1人が大事に携帯していた”石” 精霊魂石に封じてある精霊を静かに開放する手はないかを探すためラグーンを立ち工作員のキャンプ地であった森を目指す1行。
知矢にニャアラス、そしてボンタは街道の分岐点を過ぎたところで休憩を兼ね昼食を食したのだった。
「さてお腹もいっぱいだニャ。少し運動が出来るといいニャ」
全身筋肉でありながらスラリとした体躯で俊敏さを誇る猫族獣人のニャアラスは軽く体を解す様に屈伸や伸びをし準備に余念がない。
「っそっすよね。もう力が有り余ってますから敵が現れたらもうこいつで息ねのを止めてやるっス」
食事の後かたずけを終えたボンタも短弓を背負いなおし腰の短刀を確かめる様に腰を揺すり落ちつける。
「二人とも力が有り余っているだろうが今回は先ず調査と何かの魔道具とかの捜索だからな。勢い余って突撃して肝心の物を壊したりするなよ」
知矢も愛用する日本刀を腰に据えリュックを背に、肩には従魔のピョンピョンを従え準備万端だ。
「よしとにかくあの森に接近しながら周囲の様子をレーダーで探っていくぞ」
知矢を先頭にニャアラスが短槍を肩に担ぎボンタも周囲をきょろきょろしながら後ろから付いて行く。
街道を外れたため周囲はポツリポツリと木々が増え始め足元は獣道なのかそれとも地元の猟師の足跡かはたまた南の工作員が移動した跡なのか草木の切れ目が細い道のようになっている場所を辿る様に進む。
遠くに見えていた森が近づくにつれ木の密集具合も濃くなりいよいよ森へと入り込んだようだ。
「ニャアラス、この道は人が通った物か、それとも獣道だろうか」
知矢は足元を観察しながらニャアラスへと教えを乞う。
「ニャア、両方だニャ。獣道を人が通って広げたんだニャ。そこに牙鹿の糞があるニャでも広く踏み固められてるニャ。獣がだいぶ前に通った跡を人が何度も往復してるニャ。」
ニャアラスの言葉に立ち止まってしゃがみ込み地面の様子を見る知矢。
本格的な魔獣や魔物の生態を学んだことも無い冒険者としては本当に駆けだしの知識しかない知矢は真剣にその状態を観察するのだった。
知矢がAランク冒険者になったのは単に冒険者ギルドのランキングポイントを一気に稼ぎ出す大きな功績を一度上げただけである。
普通はFランクでは殆ど見習い状態の為、薬草・鉱石の採取や届け物、他の冒険者に帯同して荷物持ち等を経験しやっとEランクに上がると初級冒険者として低ランク冒険者同士とチームを組んだり上位ランクの者に付いて手軽な魔物・魔獣を狩る等しながら何年もかけて徐々にランクを上げる。
ギルド登録したばかりの初心者がFランクから一気にAランクとなった経緯の詳細は以前にも語ったが確かに知矢はそれだけの多大な功績をあげしかも武力も所持していると認められたため堂々とAランクを名乗る事に問題はないがやはりこうした獣や魔獣たちの生態、人の行き来した形跡などを判別する力は実際ボンタにも劣るのだった。
しかし知矢は良い機会だとおごることなく素直に教えを受けるのだった。
「確かに獣の糞が潰されて広がり固く踏みしめられてるな。なるほどそういう事か」
「それにこれだけ人の足跡があると敏感な魔獣はもうこの道を通らないニャ。だからこの足跡の感じだと昨日大勢反対方向へ歩いてるニャ。」
「っていう事はこの足跡は南の奴らの物って事っすね」ボンタも地面を観察しながら同意する。
「おみゃあは解ってない癖に言うな。」
「そりゃあないっすよニャアラスの旦那。あっしも一応Dランクの経験豊かな冒険者っすよ」
半泣きの様に縋りながら訴えるボンタ。
「うっとおしい、何が経験豊かニャ。じゃあこの糞は何のだか解るニャ。Fランクでも教わる基本だから解らない訳ないニャ」とニヤッと広角を上げボンタに問うニャアラス。
その横で新たに示されたまだ荒らされていない形状を保った糞を知矢もボンタと一緒に観察し考える。
(大きさは羊か兎の糞程度、そして形状もうさぎのように見えるしやはり大きさは腸の長さが短い小型種だ。しかしうさぎのように草食では無く恐らく肉食のそれだ・・・とすると)
知矢は未だ足りない知識と経験の中から一応の答えを見出した。
「こんなの簡単っすよ。こいつは突撃シープっす」と自信満々に答えたボンタ。
”突撃シープ”
:広い草原に集団で住む温和な魔獣。主に草を主食とし木々の少ない広い場所を移動しながら低い草を食べる。
温和だが敵に狙われたりするとその敵めがけて集団で突撃を繰り返し頭部の短い角で攻撃するのが特徴。
攻撃力は低めだが集団で生活するので狩るのは至難の業。
群れからはぐれたり誘い込んで単独にしてから狩る。
F~Eランクの冒険者が良く相手にする魔獣。
肉は食用に向き臭みが少なくあっさりして鉄板焼肉向き。
その体毛は非常に多く刈り取られ糸に加工できるため毛も買い取り対象。
「・・・トーヤは解るニャ?」
「一突きウサギだろう」
一突きウサギ
:鋭い角をもつ小型の魔物。素早い突進に併せ獲物に近づくと後ろ足のジャンプ力をいかんなく発揮し鋭い角を相手に打ち込む攻撃力が恐れれれている。
ただし小型なので冒険者には美味しい獲物として夕食の材料として喜ばれる。
「正解は ・・・トーヤだニャ! お前はダメな奴ニャ」
「えーっほんとっすか! いやでも」
ボンタは間違いを言い渡され慌てる
「ホントお前Dランクニャ。Fの駆け出しでも知ってるニャ。トーヤこいつに説明してやるニャ」
ニャアラスは何か嬉しそうに知矢へ説明を求める。
「えっと、そうだな。ボンタまずはその獣、魔獣の特性や生態環境を知る事だ。
突撃シープは確かにこんな大きさ、形状の糞をするがまずこんな林の奥へは入ってこない。自分の毛が絡むような場所だからな。それはわかるな」
知矢の説明を黙って頷くぼんた。
「そして肝心のこの糞だ。よく観察してみろ臭いがきついし色も濃い。これは肉食獣の特融だ。突撃シープは草しか食べない、だから糞もどちらかと言うと発酵した青臭い繊維が混じった様なものになる。
確かに両者の糞は一見似ているが大きさは突撃シープの方が大きい糞だ。これは臭いや色と共に比較対象になる。こんな所でどうだ、ニャアラス」
「大正解だニャ。まさにトーヤの言う通りだニャ。お前ももっと勉強するニャじゃないと・・・」
ボンタをニヤリと見るニャアラス
「じゃないと?」
「死ぬニャ! 間違いなく死ぬニャ。一突きウサギが草むらから突然飛び出してお前の腹を一突きにゃ!」
脅すようにボンタへ迫るニャアラス。
「うわーっ!っや止めてくださいっスよ、死なないっす、覚えるっす!」
半泣きで反省するボンタであった。
「おいボンタ。俺も実際の所あまり魔獣の生態などは詳しくはない。互いにこれから一杯勉強だな。」
知矢は自身に語り掛けるようにボンタへと声をかける。
「はい!兄貴、あっしも頑張るっス!」
ニャアラス先生の魔獣講座を終えた一行は先へと進む。
益々木々や草木が多い茂り森が深くなってきたときそれは怒った。
「”ピーン” この先に魔法結界を感知。 種類は幻影と回避です」
知矢のサポートナビゲーションコナビが通知を出した。
「おいちょっと待ってくれ。」
2人へ声をかけ停止を促すと知矢はレーダーで周囲を確認した。
標示には前方に赤く彩られた区域が映し出されていた。
その範囲が魔法の結界が張られているところの様だ。
「この先は魔法結界が張られている」
「いよいよ場所へ到達したニャ」
「だが貼られている結界が”幻影”と”回避”らしい。幻影は幻だが回避は・・・」知矢がコナビに説明を求めようとすると
「回避の結界は近づく者の感覚を惑わせて違う方向へと誘導するっス。まっすぐ歩いているつもりでも幻影と併せる事で方向を狂わせて指定場所に近づけなくしまうっす」
と意外な事にボンタが即答で説明してくれた。
「おミャアがそんな事をよく知ってるニャ」ニャアラスも以外過ぎて困惑している。
「いやあ、あっし位になると色々修羅場も経験してるっスから」と少し照れながら何か自慢げな様子だ。
それがカチンとしたのかニャアラスは
「何が色々修羅場だニャ。どうせお前がくっ付いてた小悪党たちが悪さするために色々手に入れてたのを聞きかじったニャ」
「そうなのかボンタ」知矢は純粋に何故そんな事を知っているのかを聞いてみた。
「・・・っはあ、その通りっス。
・・・奴らが悪い事をしでかすときにソメッソがどっからか仕入れて来た魔道具を使う事が有ったっス。でも安物やまがい物を掴まされることが多くてあまり役に立ってなかったみたいでその度に怒りまくって裏の売人の奴を匿名で騎士団へ投書してそれを正義の仕返しだと言ってたっす。」
「なんだかだニャ。裏の売人にしたってきちんと金を出せばそれに見合った商品を出すニャ。小悪党が金をけちるとそうなるニャ。まあでも多分トーヤにとっちめられなくっても遅かれ早かれ闇の売人たちに始末されてたニャ。奴らはそれほど甘くニャイ」
どの世界にも裏の住人や闇の商売を生業にする者はいるものだ。
この異世界でもそれは変わりないんだなと知矢は思った。
知矢がいた地球、日本もそういった闇のものがいた。
俗にいうヤクザなどはどちらかと言うと裏家業。
表だって堂々と生きる事が苦手な者の集まりで非合法な事に手を出す者達である。
この者はどちらかと言うとまだ良い方だ。決して許される事ではないが証拠さえあれば警察に逮捕され裁判の後罰を受ける。
しかし闇に生きる者達はその存在からして決して表の人々に知られる事なく活動し自分たちの利益のために行動する。時に政治的な力で、時に暴力的な力で、時に経済的な力で。
闇から政治家や官僚を操る強力な伝手を使い。力と金で自らは決して表に出ず人を操す集団。
それが闇に生きるのも達であった。
と知矢は日本での経験や知識を少し思い出しただけであったが。
「さてそれはともかく幻惑されてウロウロさせられるのは嫌だな。さっさと結界を破壊したいところだが・・・さて」
知矢はそう言うと周囲に何か魔道具が隠されていないか目視とレーダーで観察する。
「コナビ。近くに結界をはる魔道具は確認できないか」
「”ピーン”現在捜索中。それらしいものは反応有りません。」
ニャアラスとボンタも周囲をウロウロとしながら異変や変わった物が無いか全員で捜索している。
しばらく辺りを探していると突然
「ぎゃあああアアあ!!痛いっす!!」ボンタの叫び声が響き渡った。
「どうした!」知矢とニャアラスが駆け寄ると草むらで脚を抱えて転げまわるボンタの姿が。
「なんだ、蛇にでも噛まれたか」二人でボンタを落ち着かせ何が起きたのか確認する。
「何かが脚に刺さったっス、痛いっす痛いっす!!」泣き叫ぶボンタ。
ニャアラスは脚を無理やり掴んで状態を観ると
「罠だニャ」
「トラップだと!」知矢が見るとニャアラスの革で作られた冒険者御用達のブーツの甲の部分から鋭く太い針が3本上へ貫通していた。
「痛いっす痛いっす!!!」
痛みに暴れるボンタ
「動くニャ、静かにするニャ」ニャアラスはわきの下へボンタの足を挟むように固定し足の裏側を観察して何か掴むと一気に引き抜いた。
「うぎゃあああ!!」引き抜かれた痛みでまたも叫ぶボンタ。
そんなこのを構わずニャアラスはボンタのブーツの紐をほどいて脱がせ傷口を確認する。
「ッチ! 知矢トラップにはご丁寧に毒がにってあるニャ。もうすぐこいつは死ぬニャ」
と渋い顔で知矢へボンタの死を宣告するのだった。
ボンタの足の甲には3カ所貫通生地があったが血が流れ出るその傷口は茶色くそして紫色に変色し爛れていた。
「痛ててて・・・えっあっしが死ぬんすか!!」
それを聞いたボンタは瞬間痛みを忘れ真顔でニャアラスと知矢の顔を見る。
「嫌だな旦那、ねえ兄貴。嘘っすよね!死なないっすよね! すぐ直るっすよね!!!」
2人に訴える様にすがるボンタ。
毒の罠にはまったボンタ・・・・・・・・残念であった。




