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第123話 森を前に  ~「精霊の皆!おいらに元気をくれ ニャ」 「それ違うアニメだろ」

こんばんは

最近投稿が不定期になりつつあります事をお詫び申し上げます。

なにせ師走なもので・・・いや別に学校の先生ではありませんが毎日走り回ってます。はい。


では第123話どうぞ



1人1人に詳細な検問を行っているここ商業中核都市ラグーンの南門に知矢、ニャアラスそしてボンタの三人はじっと並んでいた。


身分確認はおろか持ち物は全てバックの底まで衣服は生地の裏側まで確認され少しでも異常や不審な点があると推測された者は全て臨時に設けられた検問所の中へ連れていかれ尋問されている。


そんな厳戒態勢の不要不急に中都市外へ出る者は居ないはずだが検問は混雑を極めていた。



都市内の全域で不審者の捜索やあぶり出しが行われそれを避けるために急ぎ都市外へ出ようとした者も多い様で先ほどから何人もの不審者が臨時検問所へ強制的に連れ込まれていた。




中には「貴様、わしはオイゲン準男爵家ゆかりの者だぞ。こんなことをしてただで済むと思うな!」

と怒りをあらわにし兵へ詰め寄っていたが



「どのような身分の方でも身分証、通行証の無い者は決して通すなと管理伯爵より通知が出ています。苦情はどうぞアンコール伯爵へ直接どうぞ。」

とにべも無かった。



そしてその男は一見貴族の関係者と見えなくもないが何かちぐはぐな印象を受ける。

まるで3流役者が着慣れぬ服を着て役を演じるような。



すると1人の騎士が喚く男のそばへ寄ると


「これはこれは準男爵家の方でしたか。失礼いたしました。身分証が無いと言う事ですが私の力で身分を保証させて頂いてもよろしいでしょうか」

と言い出した。



喚く男はこれ幸いと「おお、その方名を何と申す。準男爵様へお伝えし今後何かと覚え目出度く扱ってやろう」



「それはそれは有りがたき幸せ、では。 

『鑑定』・・・はい身分の確認が出来ました。 おい、こいつは牢へ直行だ。南の商人の肩書を持つただの潜入者だ」


「貴様騙したな!」


「何を訳の分からい事を。『私の力で身分を保証させて頂いても』 と言ったら喜んだのは貴様だろう。だから俺の力”鑑定”を使ってやったんだ、おいっさっさと連れていけ!」


喚き暴れる男を拘束し兵士が臨時検問所では無く直接牢屋へと引きずられて行った。





しばらくそんな騒ぎを見物しながら並んでいると知矢達の順番が回ってきた。


「冒険者ギルドAランク冒険者のトーヤとBランクのニャアラスそしてDランクのボンタだ」

と検問する兵士へ三人して身分証を提示した。



「おお、これはトーヤ様でしたか。長くお待たせし申し訳ありません。アンコール伯爵からも『トーヤ殿の通行は迅速に便宜を計れ』 と通達が出ております。どうぞこのままお進みください。お戻りの節はそく兵士へ身分証を提示して頂ければすぐに通れますので」

と伯爵からの命があった事を教えてくれた。



おそらくレーダで一々確認していなかったが伯爵の影の者から知矢の行動は報告がされていたのであろうと考えたが別に探られて困る事も無いと気にしない知矢だった。


「ありがとうございます。ではしばらく出てきます。お役目ご苦労様です」


と兵士に礼を述べ門を通過し街道を南方向へと進んでいった。




「トーヤはすっかり伯爵様に好かれたみたいだニャ。一緒にいると便利だ」

ニャアラスは気楽そうに言ってのけるが


「おいおいやめてくれよ。貴族のごたごたに巻き込まれるこっちの身になってくれ。面倒で仕方がない。」


「ニャはは」


「でも兄貴は凄いっすよね。伯爵と言えば高位貴族っすよ。あっしなんかじゃ一生顔を観る事も無いんすから」



そんな事を言い合いながら三人は急ぎ足と言う程でもない進み方で街道を進んでいた。




前後にはほとんど人、往来する旅人や商人の姿は見受けられない街道。

いつもだとラグーンを出て目的地へ急ぐ馬魔車の隊列や冒険者の集団が行き交う光景を目にする時間帯であるが今日は都市方向から街道をゆく者は後方に点の様に見える集団が1つ。

あとは前方からラグーンを目指していると思われる1団が遠くに見えるのみだ。



「にゃあトーヤ、南の奴らが隠れていたっていうキャンプはどれくらいニャ」

のんびりとした口調でニャアラスはまるでハイキングにでも行くような気軽さで聞く。


「この街道を南下して2時間ほどか、枝道が交差する辺りから東に街道を逸れてそこから数キロ森の中を進むとあるらしい。ただ魔道具で視覚偽装されているって話だから逆に俺の解析レーダーで周囲を解析できない場所が有ればそこだろ。」



「兄貴、居残りのやつらはいるんですかい!」

ボンタは何か期待する様に背中の弓をさするようにして聞く。


「残念ながら今回は戦闘は無さそうだボンタ。奴らの白状した情報を信じればだけどな」


嘘つきだと良いななどと物騒な事を呟くボンタ。


「何を言うかオミャアは付いて来たって役に立たないニャ。周囲の警戒はトーヤ、戦闘は俺。お前は荷物持ち・・・マジックバックがあるからやっぱりいらないニャ」


「ニャアラスの旦那、そりゃあないっすよ!あっしも最近力をつけて来たって評判っすよ! 」


そんな他愛も無い話をしながら進む一行であった。




**********


ところ変わってこちらは中核商業都市ラグーンの中心地。

管理伯爵のおわす通称ラグーン城。


「そうかトーヤ殿がやはり動いてくれたか。やはり頼りになるお方だ。」


ひっそりとした執務室で1人呟くここの主、管理伯爵のアンコールであった。



『しかし伯爵様、いくらトーヤ様でも精霊の件はどうにもならないと思いますが。いっそ帝都にお伺いを立て捕虜にしている精霊使いの奴隷化をご許可頂きそして命じ精霊を開放させるのはいかがかと愚考いたしますが。』



「うむ、わしも同じことを考えてな。実は大魔導士のモンゴミリア先生にも聞いてみたんじゃ。だが『奴隷化した精霊使いを精霊はおそらく認めないでしょう。逆にその場で制御を外れ暴れ出す恐れが』 と言っておった。」

残念そうに1人呟くアンコール。


『私如きが余計な事を申しまして失礼いたしました。』


「いや構わん。なんどきでも多くの知恵は必要だ。何か思いついたらいつでも言うが良い。それにしても次から次へとあの国は・・・。

採掘場の警備は問題ないか? 昨夜の内に兵士を増員してあったはずじゃが。」



『手の者からの報告では順調に洗い出しと捕縛が進んでいるとの事でございます』


「ならば良い。今後も連絡を密に頼むぞ、下がってよい」

虚空に手を振るアンコール。すると黙ってその部屋から目に見えぬ者の気配も消えたようだ。



「ルドマリッドめ! わしはともかく娘に手を出すとは。此度は許さん!」

誰もいない執務室で怒りで拳に力を込めるアンコール。


そして「トーヤ殿、頼むぞ・・・」虚空を見上げて呟くのだった。





**********



そろそろ街道の枝道が交差するポイントにたどり着いた知矢一行。


「ここから東ニャ。」


「っつうと兄貴、あの遠くに見える森っすかね」


「恐らくそうだろう。まだ俺の探知範囲外だから何も反応はないが近くに寄れば何か反応があるだろう。じゃあ進もう」

知矢は手にした簡易的な地図と太陽の方角を見ながら方向を確認していた。



「ニャア、知矢。森に入る前に腹ごしらえをしようぜ。何かあってからじゃまた飯を食いそこなうニャ」とニャアラスはまだ森を遠くに見て今後の展開如何では昼飯どころではないだろうと先に食事を済ませることを提案してきた。

知矢としても同意だ。

そしてニャアラスの提案をありがたく思うのだった。



知矢は悪い癖が昔からあった。

自信が手掛けた仕事が一区切りつくまで昼食はおろか途中休憩など目もくれず集中してしまう所だ。


自分一人ならそれでもかまわないであろう。

しかし日本にいた頃は必ずと言って良いほど部下、他の社員も一緒に仕事をこなす場面が多々あったそんな時は『俺に気を遣わず休憩も昼食もしてくれ』と言っていたがやはり上司が集中して仕事をこなしているのに部下が勝手に休み難いのか知矢が手を止めるまで同様に仕事に集中する事が多かった。


そんな社員たちを他の社員は 『おっ、社長の奴隷買いにつかまったな』などと揶揄われていたようであったが。

しかし不思議な事にそんな待遇であっても拒否したり逃げ出す社員がいなかったのは遣り甲斐のある仕事と知矢への忠誠心であったのだが同じ会社で取締役をしていた知矢の妻は 『貴方は何日ご飯食べなくても構いませんけど、若い子たちにはちゃんとご飯を食べさせなさい!』など苦言をていしていたのは知矢にとってもはや懐かしい話だった。


そんな事を思い出しながら無限倉庫から椅子やテーブルを出し食事の準備をする知矢だった。


「兄貴!実はあっしは店からうどんのセットを貰って来といたんですよ。温めて食べましょうぜ!今日はトッピングにボア肉の薄切りを厨房で見つけたんで一緒に貰ってきやした。こんな寒い陽気に暖かいうどん最高っすよ!」


と言いながらボンタは自分が背負ってきたリュックから生のうどん麺と皮袋に栓をしたうどんスープを取り出すのだった。


「お前にしちゃ気が利いてるニャ。暖かいうどんは美味いからニャ」とニャアラスもうれしそうだ。


そしてボンタがトッピングを入れた容器を出そうとすると

「あれ・・?軽い・・」訝しく思いながら容器を出し木の蓋を開けると


「・・・・・・・・・・(ご馳走様でした)」中身の肉はからっぽで代わりにピョンピョンが満足そうにいた。


「「「ピョンピョン!」」」


行先でどうなるかわからなかったので今回知矢は店に従魔のピョンピョンを置いてきたはずだった。

それがいつの間にかボンタのリュックに入り込み肉を食べていたとは思いもよらなかった。


「くうううっ!! ピョンピョンさんそりゃないっすよ。あっしがせっかく持ってきた肉を!」

とボンタは知矢の従魔へ訴える。


知矢も己の従魔の不始末と思いピョンピョンに詰問するのだった。


「おいピョンピョン。俺は店へ残れと言っていたはずだぞ。それに勝手に食べ物を食べるのは禁じていたはずだ。」

と珍しく従魔を叱る知矢だった。


ゴールデン・デス・スパイダーのピョンピョンと従魔契約を結んだ後約束していた。

『決して勝手に人の物を食べてはダメだ』と。その事を叱っているのだ。




『ご主人様、このお肉は私のですよ。ちゃんとマレルさんが「ピョンピョン様こちらに用意しておきますからもしお腹が減ったらどうぞ」ってみんなが寝る前に用意してくれたので。私、少しお腹が空いたので容器の中でご飯食べてたら突然蓋が閉められて、でも気配がボンタさんだったからそのまま食べながら中でお昼寝してたんです。』



最近また主従ラインが強化された様で知矢と従魔は殆ど普通に会話を出来るようになっていた。従魔の方も流暢に話すことが出来意思の疎通は全く問題ない。


事情を聞いた知矢は

「おい!ボンタ。お前が悪い。ピョンピョン叱って済まなかったな。もしまだ食べたいならあるぞ」と従魔に詫びながら無限倉庫から以前しまっておいた魔獣の肉を皿に出すのだった。



「えっあっしっすか?」知矢と従魔の会話が解らないボンタは不満を訴える。



「お前厨房から貰って来たって言ったよな。他の使用人に断らずに無断で持ってきたろう。そしてお前の持ってきた肉はピョンピョンの食事用に用意してあった物を食べてる最中に蓋をされとピョンピョンが訴えてるぞ。」


「ありゃあ・・・すみませんでした」事情を知ったボンタは言葉も無い。


「まったくおみゃあはろくなことをしないニャ」


「・・・・」ニャアラスの口撃にも反論できないボンタであった。


「まあ仕方がない。今度からは勝手に持ち出すな。店の都合もあるんだしな」

気を効かせたはずが失敗したボンタは知矢の言葉に救われたが

「兄貴!すいやせん。あっ料理はあっしが」と汚名返上とばかりに知矢が用意しようとしていた水や火の魔道具と共に鍋や料理道具を引き継ぎ準備を始めた。




ボンタに昼食の準備を任せた知矢とニャアラスは遠くに見えるおそらく南の大国から潜入した工作員のキャンプが有ると思われる森を眺めて話し合っていた。



「精霊を開放するヒントがあれば良いんだがな」


「何か目当ての物でもあるニャ?」


「いや全くだ。だが精霊を封じて使役するのは難しいらしいから何か精霊と意思を交わせる魔道具でもないかと思ってな。お前は精霊に関して何か知ってるか」


「ニャ、あんまり知らないニャ。でも精霊を使役か、前に旅して戦った風の精霊は結構な強さだったニャ。でもあれくらいなら俺とトーヤで戦えば勝てるニャ」



以前この3人で知矢が強制的に受けさせられた街道で商人を襲う者の探索と捕縛の強制依頼では結果的に犯人はルドマリッド人民共和国の偽装商人の工作員でその工作員が使役していたのがノームと言われる風の精霊だった。


運よくそれほど強くはなかったため打ち破ることが出来たがあの時捕まえた工作員の能力、ステータスには ”精霊拘束魔法LV30” とあった。



そして今回都市へ潜入し知矢の店を襲撃した者のステータスは ”精霊使い” ”精霊の山の一族” ”精霊召喚LV12” ”精霊封じLV24” とあった。



精霊を使役するであろう能力が種々存在する事も疑問だったがそれ以上に知矢が注目したのは ”精霊の山の一族” というステータスだ。



”精霊の山の一族” 言葉だけだと精霊が多く住まう山に住んでいる一族、だがそれから推測するに産まれた時から精霊を近く感じ一族はその長い歴史の積み重ねで精霊を使う、使役するなどの方法を多く知った一族なのであろう。



故に前回捕縛した工作員より強い精霊を使役していたり封じているのではないか。専門の一族であったなら何かしら専用の魔道具も持っているのではと想像しともかくキャンプ地を荒らされる前に情報を集めたく急ぎラグーンを発して来たのだった。



「でもニャ、だいたい精霊ってのはにゃ使役するとかじゃニャク、その言葉に耳を傾けて話を聞く相手ニャ」



ニャアラスが意外な事を言いだした。


「おいニャアラス。お前精霊と話をしたことがあるのか」



「ニャア、風の精霊が『北から強風が吹く』 船を北に向けるニャ。 地の精霊が『良い季節』 と言ったら畑に種をまくニャ 」

驚く知矢へ何でもないような顔をし答える。



ニャアラスが言うにはどこにでも精霊は居てその声に耳を傾ける者には手を貸してくれるそんな”親切”な存在だと言う。


何かの魔力とか魔法、魔道具は関係なく魔法陣や呪文も不要だと。要は自然に耳を澄ましていると段々色々な場面でその場にいる精霊が声をかけてくれると言うのだった。



「今もこの周りには精霊がいっぱいいるニャ」見えないし今は声も聞こえないと言うが。



知矢はそもそもの認識が間違っていた、いや何も知りはしないで行動を起こしたことを反省する。そして友が広く深い知識と経験を持っていた事に感謝するのだった。


暫くニャアラスから精霊にまつわる経験談を聞いて学んでいた知矢である。




すると


「兄貴、昼飯の準備が出来やした」とボンタから声がかかった。


テーブルには火の魔道具を利用し熱々に湯気の出ている鍋がうどんのいいい匂いを出し食欲をそそる。


各自器へよそって「頂きます」とすっかりなじみになった知矢の習慣に併せて食事を始める。


「フーフーッ、ズルズル・・・おみゃああが作ったにしては美味いニャ」ニャアラスは猫舌は関係ないのか熱い汁と熱々のうどんをすすりながら珍しくボンタを褒める。


「いやあ、まあ正直言って店の使用人の方達が作った物を茹でたり温めたり具を足したりしただけっすからね」


「じゃあやっぱりおみゃあはいらないニャ。俺でも作れる」うどんをかき込みながら評価を訂正するニャアラスだった。


「そりゃないっすよ旦那」



そんな会話をしながら冷たい南風が少しだけ吹くこの地で体を大いに温める3人であった。



ちなみにピョンピョンは 『お肉は生の方が美味しいです』と1人与えられた魔獣の肉を静かに頬張るのだった。





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[一言] ニャアラスに精霊使いの素質が?
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