第122話 契約と隷属の差 ~「トーヤ君ちゃんとご飯食べるんですよ」
はい21時を過ぎましたが本日も投稿完了です。
どうぞお読みください。
では第122話です。
「ギルドに所属してる精霊使いに依頼をかけて欲しい、早い方が良いだろう。」
知矢は鑑定結果から早急に依頼を出してもらおうと早朝から押しかけたのであった。
「無理だ」
ガインがひと言呟く。
「何故」
「・・・・居ない」
「居ない?精霊使いがこのギルドに所属していないのか。じゃあ他のギルドに依頼して」
「・・・トーヤさん。帝国には精霊使いとか精霊使役の技を持つ人はいないのよ」
「って事は・・・」
「そう、精霊の魂を開放できる奴がいないそのまんまだ。」
南の大国ルドマリッド人民共和国の情報員や破壊工作犯との戦いを制した知矢。
工作員捕縛の際に見つけた謎の石。鑑定魔法によって判明したその石は精霊の魂を封じることが出来る一種の魔道具の様な物であった。
精霊の本体を封じ込めると言うよりは魂のみを封じその本体はどこかこの世界に姿を隠しているのか見受ける事は出来ない。
そんな石であったがそのもの自体が破壊されたり封じた者の生命が潰えた場合石の中から精霊の魂が解放され精霊の力が現世に復活した場合怒りに狂う精霊が暴れ出す危険性を鑑定気結果は示していた。
しかし別の者でも精霊使いに寄り正規の手順で開放されれば精霊は静かにその住処、あるべき居場所へと帰る様だ。
だが冒険者ギルド長のガインやニーナによるとこの帝国にその精霊使いが存在しない事が告げられたのであった。
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「そもそもな精霊と言うのは俺たちが願ったからと言ってそうそうホイホイと現れて言う事を聞いてくれるような存在じゃなねえんだ。」
ガインが言うに確かにこの世界には精霊が存在し自然界のあらゆるところで水や大地、火や風、緑や嵐等を神から与えられた力を持って制御管理などを行う位置付けであった。
しかしその権は決して強くはなく限定的な力だと考えられ精霊がこの世界を自由に操る等の巨大な力までは有していないと過去の研究でそう理解されていた。
しかし人のその魔力で行使する超常、魔法等と異なり魔力やその者の身体能力に関わらず精霊に階位い(霊的な強さ・序列)・系統(水や火等)によってその自然の力を操れる能力が異なるが魔力などの有限なものでは無くほぼ無限の力を持っていた。
その力を自由に出来たら、力を貸してくれたらと言う願いから研究された能力が精霊召喚であり精霊封じであった。
しかしその自然の無限な力を手にするのは一種の契約や交友などでは無く使役に当たる。
魔物使いや獣使いは一種の強力な友好関係を結ぶためのものであり、獣や魔獣が相手を理解し気に入る事が大前提である。
よって一度主従ラインを結ぶことが出来れば互いが通じ合うことが出来従魔の力を命じる事で利用可能であった。
片や精霊使いは精霊封じの行使力で強制的に精霊を拘束し精霊送還で呼び出すことで強制的に使役する能力である。
よって封じてある精霊は言わば監獄に無理やり鎖でつながれていて様が在る時に精霊召喚で強制的に命令を効かざる得ない状態にされるものだ。
この研究が盛んで疑似的に行使力と特力としての精霊召喚を作り出したのが彼の”ルドマリッド人民共和国”である。
いわば精霊を無理やり強制労働に就かせる魔法のようなものであるが為、帝国ではその行為自体を違法とし利用を否定していたのだった。
この世界に於いて精霊は神の使徒または神の使いもしくは神に仕える奉仕者と考えられていた。
そんなん存在を相手(精霊)の意思に関わらず強制労働させるなど神への冒涜でもあると考えるのが一般的でもある。
そう言った理由で帝国には精霊使いが存在しないのだった。
「まあこの帝国でも精霊に関する研究はされてはいるが使役すること自体が禁じられているんでなどうにもならん。」
ガインは顔をしかめ両手を虚空に向け「手がねえよ」と諦め顔だ。
知矢の斜め後ろで話を聞いていたニーナも言葉が無い。
「じゃあどうなる。この石をどこか遠くに捨ててくれば工作員が死刑にされてもどこか遠くで怒りのやり場に困る精霊が出現するだけとかにはなんないのか」
「その件でしたら過去に事例があります。敵の精霊使いから取り上げた精霊魂石を遠い地に隠しその後精霊使いを討ったところ突如その場に精霊が現れ有無を言わさずその死んだ精霊使いと友のその周囲にいた者を攻撃対象にしたと言う例が」
ニーナは各地で来た事件や事例の報告書を詳細に目を通しており精霊に関する事案も記憶していたのだった。
「ますます手が無いと言う訳か。ガインの旦那とにかく騎士団へ急ぎ報告をして間違っても今すぐに死なせたりしないよう対処させるべきだろう。その後の事は今後検討だ。今すぐ何かを思いつくなんての都合の良い事は無さそうだしな」
知矢は残念そうに取りあえずの対処をギルド長へ依頼しその席を立ったのだった。
「それは良いがお前、どこへ行く」さっさと話しを切り上げて席を立つ知矢へガインが事を押し付けて行っちまうのかと声をかけた。
「何も無いかもしれないが奴らが、工作員たちがキャンプを張っていたという森の奥を見に言ってみる。何かヒントでもあればとな。本来なら騎士団の仕事かもしれないが今の様子だと騒ぎが静まり手を割くことが出来るようになるにはもう数日かかるだろう。だったら暇な俺が行ってくるかと思ったのさ。何かあればすぐ報告するよ。今度はな」
知矢は告げるだけ告げると振り返りもせず手をひらひらさせながらギルド長室を後にするのだった。
相変わらずごった返し喧騒のギルド1階に戻った知矢は辺りを見回し誰かを探していた。
「トーヤ!こっちニャ」目当ての人物が先に目ざとく知矢を見つけ声をかけた。
「ニャアラスここに居たのか。ボンタもご苦労さん」
呼ばれた方へ行くと冒険者ギルドの食堂でテーブルを囲み手を上げていたのはBランク冒険者の獣人族ニャアラスと知矢の配下Dランク冒険者のボンタであった。
「まあ先ずは腹こしらえと行こうニャ。知矢はどうせあちこち忙しくって何も食べてないんだろ」
とニャアラスが席をすすめ先に注文しておいた揚げ芋や魚の串焼き、焼き立てのパンなどを勧めてくれた。
ボンタはすぐに厨房に注文し暖かいスープを持ってきてくれた。
「おお、二人ともサンキュウ。そういや昨日の夕方からほとんど何も食べてなかったな、忘れてた」
と何でもない様に言う知矢は二人の厚意に甘え直ぐにパンへと手を伸ばした。
「そんニャに大変だったら昨日から声をかけてくれればすぐに駆けつけたニャ」
「そっすよ兄貴。あっしが知ったのも夜中にいきなりみんなが店の前で屋台を始めてからっすからね。」
「悪い悪い。実際手も足りてなかったからニャアラスに繋ぎを取ろうと考えてはいたんだがな自体が切迫していたから時間的に無理だった。お前がいたら100人力だったんだがな」
「兄貴兄貴、あっしは!あっしもいますよ!」兄貴と慕う知矢に忘れ去られては生きる術がないボンタはその存在を認めてもらおうと必死だった。
「そういやお前、昨日どこ行ってた。まあ確かに四六時中拘束するわけにいかんから自由な時間をどう使おうとお前の勝手だが」
「えっ・・・いやあっしはまあほれあれですよ、なんと言うか都市の内部を調査と言うか・・・・」
妙に歯切れの悪いボンタだった。
「いやまあお前のプライベートを探る気は無いから無理に言わなくても構わないが何か連絡が付く方法を考えよう。そうすればお前も自由な時間が取れるしな。」
知矢は配下としてボンタを利用してはいるが完全なる使用人として拘束する気も無かった。
ひょんな出来事から懐かれ付いて来たボンタであったが思いのほか有用な能力もあり色々今までも力を貸してくれたし役にも立っていたのも事実だ。
その点は感謝し十分評価の上少なくない報酬は十分払っているつもりであった。
そう言った関係のボンタであるから常に側へ控えていろとは言えないし言う気も無かった。
もしボンタが自立し冒険者やその他自活の道が有れば積極的に自分の下を離れて行く事を応援したいと考えてもいたのだから。
「ニャア、トーヤ。こいつはニャ東門の近くにある飲み屋の女の子にぞっこんでひまが有れば通い詰めてるニャ。どうせ昨日の晩も夜中まで店に居続けてたに決まってるニャ」
ニャアラスからの突然の暴露にボンタは
「旦那!!何言ってんすかそんな店知らないっすよ!」慌てる慌てるのだった。
「そうか、ボンタにも早々と春が来たのか」食事をしながら揶揄うに知矢
「いや兄貴、違うっすよ。あっしは兄貴一筋っすよ!」半泣きで全否定するボンタであった。
「まあまあまあ」と言いながらスープを飲み干し一息ついた知矢であった。
「さてじゃあエネルギーも蓄えた事だし、早速出発するか。詳細は歩きながら話そう」
そう言うと知矢はさっさと席を立ち食堂のおやじにチップを渡してギルドを後にする。
「よっしまたトーヤと面白い冒険が出来るニャ」と荷を背に手には短槍、腰には豪剣を携え知矢を追うニャアラス。
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ」まだ食事が残っていたボンタは慌てて残りをかき込むと残っていたパンをリュックに入れ短刀と単弓を抱えて二人を追った。
そして三人はそのまま南の門へと向かうのだが都市はまだまだ喧騒の最中。
市民も不安や好機に揺れながらも事態の推移を見守っている状態だ。
まだまだこの都市で起こった個人の店への誘惑から端を発し大事件へと発展した騒ぎは当分静まりそうにはなかった。




