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第113話良い男と良い女 果たして  ~ 「良い男!」「コレットさんよだれ・・・」

こんばんは

今朝は少し暖かい朝を迎えられましたね。(まあ地方によってですが)でも庭のもみじが赤々と色づくのを見るとやはり冬は確実に近づいてます。どうかご自愛ください。


では第113話どうぞ





「ねえ、そこの人」

声のする方へライトの灯りを向けた知矢。


すると

「キャッ、眩しい!」

驚いた声に思わずライトの魔法の行使をやめると辺りは暗闇に包まれた。


その瞬間、急に知矢の腕が掴まれ

「もう眩しいじゃないの」

という声が耳元に直ぐ傍で響いた。



ハッとした知矢はするりとその声の主に掴まれた腕を体さばきで脱出し距離を取り再びライトをつけるのだった。


気が付かない内に腕を取られるところまで接近されたことに驚き一気に警戒を強めるの知矢。



すると若干弱く調整した光に映し出されたのは1人の若い女だ。


女は再び照らされた灯りに今度は抗議の声をあげなかったがやはり少し眩しいのか掌をかざしながらこちらを見ていた。



「すまない、急に声をかけられたものだから驚いた」


知矢はその事よりも自分が全く気が付かない内に耳元で声をかけられ息遣いが感じる程に接近された事に驚いていたのだが。



「あら、それはこちらこそごめんなさいね」

とあまり悪びれた風もなく謝る女。


歳の頃は10代後半から20代全般か、真っ赤な布地にライトに反射するキラキラしたラメの付いたワンピースを着ており一見して一般人には見えずおそらくは夜の商売をしている女だろうと推測できた。


「で、こんな暗闇で俺に何か俺に用かい?」


先程知らぬ内に接近された事で警戒を強めた知矢はレーダーでその女をポイントしながら声をかけた。



「あら何だかつれない言い方ね。こんな時間にこんな場所で声をかけたら1つしか無いじゃない」


ふふふと何かからかう様に微笑む女はライトの灯りに目が慣れたのかかざしていた掌を下げ胸の前で腕を組む仕草を魅せそのたっぷりとした胸元は知矢を挑発する様にみえた。


顔がやっと確認出来る様になったがもちろん知矢は知らぬ女だ。


少しだけ張った顎のラインがその顔つきをよりシャープに際立たせ大きな目とその中心からスッと延びた鼻筋がその女を引き立てている。


要は良い女だった。


知矢は若き日の‘ダイアン・レイン’を思い出させるすこぶる付きの良い女に一瞬だけドキリとしたがもちろん平静を装っていた。


「せっかく声をかけて貰って済まないが生憎間に合っててね。悪いが他をあたってくれ」


知矢の心中は少しこの女に惹かれる物を感じていたが同時に先程接近された事で警戒アラートもなっていた。


「あらそう、残念ね。じゃあ次に会った時は優しくしてよ。

や・く・そ・く」


そう言い残すとふふふふっと流し目を残し優雅にまるでステップを切る様に踵を返し暗い路地へと溶け込んでいった。

あっさり引き下がった女を逆に余計訝しむ様に見つめる知矢。



(何者だ?)後をつけたい衝動に駆られたが未だ知矢の心の中ではあの女への警戒アラートは鳴り響いている気がして女の気配が消えたのを確認すると自分も足早にその場を後にし大通りへと出て家路を急ぐのだった。



少し閑散とし始めた大通りを歩くといつの間にかに力が入っていた体の緊張を解いて人の流れに合わせて歩きながら女の事を考えていた。



この世界へ転移する前でも武道で培った知矢の感性は人の気配に敏感であったが転移後はさらに気配感知とレーダーの魔法が加わり今まで感知できなかったのはアンコール伯爵の配下で謎の黒衣の者だけであった。


(やつらと同類?しかしなぜあそこで声をかけしかもあっさり引き下がったのか)

知矢は何か言われぬもやっとしたものを感じるが簡単に答えは出ない。


「おい、ぴょんぴょん。さっき暗闇で出くわした女性、何か感じなかったか。俺は少し危険な感じがしたが。」


黙って静かに知矢の肩へ乗ったままの従魔へ声をかけた。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(私が手を振ってたのに全然こっちを見てくれなっかたですね。)」


とそれ以外何も感じなかったようだ。



情報量も少ない現状では考えても仕方がないと割り切った知矢はあの女にアラート設定だけしてもう考えるのを止めた。





魔道具商店の裏口から帰宅した知矢。

店は既に閉店作業を終え夕食の支度や各自自由にするのんびりとした時間だった。



「「「「「お帰りなさいませご主人様」」」」」

手の空いていて気が付いた者たちが知矢を迎えてくれた。



「おう、ただいま。今日もみんなご苦労様。特に何かあったかな?」

知矢の外套を受け取ってくれたイーシャへ声をかける。



「はい、本日お店の方は特筆問題は無かったかと思います。今日から新人さんたちが各所へ試験配置につきましたがそれも今のところ問題ございません。夕食は彼女たちが中心に只今調理中です。」


どうぞ今のうちにゆっくりお風呂にでもと促され知矢は一度自室へ戻りバックなどを置いてから風呂へと向かった。



風呂は先に入っていいる者達がいた。


「これはご主人様お帰りなさいませ」

浴槽につかりながら軽く頭を下げるのは警備担当のサンドスとイエヒコであった。


「ああ先ほどな。」と挨拶を交わしながら知矢は頭からお湯を被り頭と体を洗った後湯船へと浸かった。


「ふーっ。風呂の気持ちのいい季節になって来たな」目を閉じてお湯の温かみが体に染み渡るのを感じながら思わず呟くのであった。


「はい、私も風呂がこれほど気持ちがいいとは以前なら考えられませんでした。」

サンドスも同意する様に気持ちよさそうに呟く。



この世界にも昔から風呂はあった。

しかしやはり水くみや温める労力の問題と手ごろ感から桶の水を魔法で温め体を流し汚れを落とす程度にとどまるのが市民では一般的であった。



一部の貴族や大商会などのいわゆる金持ちは専用の風呂を持ち入る事もあるがゆっくり湯船につかり疲れをいやすと言う慣習はない。あくまでも汚れや汗を落とすものと言う位置づけだ。



日本からの転移者である知矢は元々特に風呂好きであった為余計に風呂への欲求を満たすために試行錯誤したと言っても過言ではない。



お湯の出る魔道具や排水を浄化する浄化槽。そして今試験運用中のスライム浄化。全ての始まりは勿論知矢の欲求からである。



内心考えているのはどこかに温泉は湧いていないか、そうだ今度温泉を探しに行くか。等も頭にあったがサーヤからの諫言もありしばらく使用人たちの状態を見極めて余裕があれば次を考えようと思っていた。



「サンドス、最近店や周囲は静かになったか」と警備主任へ訪ねると


「はい、以前の様な大騒ぎもなくなり客も落ち着いてきましたし店へちょっかいをかける者は最近めっきりいなくなりました。これもご主人様がAランク冒険者だと知れ渡った事が幸いしていると思いますが」

知矢の思惑とは反対に知れ渡る事で敵対する者が鳴りを潜めたのかと聞き少々複雑ではあったが返ってその方がのんびり老後にはいいかなと思うのであった。


「しかしご主人様。良からぬ輩はいなくなりましたが昨今変な様子の奴が店を覗いたり他の使用人に声を掛けたりと言った事がたまにあるのです。」

二人の話を静かに聴いていたイエヒコが言い出した。


「変な様子とは」


「ああ、その件か。いえご主人様にご報告するほどの事はまだ何も起きていないので様子見をしていましたが。」サンドスはイエヒコをちらりと見て(余計なご心配をかけるな)と言外に言っているようだ。


「ああ構わない。些細な事でも気になる事が有れば積極的に耳に入れさせてくれ。それがほんのつまらない話でも構わない。情報は多い方が多角的な視野と思考を生むからな。」


知矢はあるじに気を遣う上司と率直に報告しようとする部下の両方を立てたつもりであった。


「はい、ありがとうございます、では。家本当に大した話ではないのですが男の使用人には女が。女の使用人には男がよく何を聞くでも無く近づいて声をかけることが最近ありまして。


最初は店に興味を持つ何者かの手が探りでもお入れているのかと思いきや少し世間話をしたりする程度でしたが最近は所謂なんですか異性に声をかけて興味を引くと言う感じになってきまして。」



サンドスとイエヒコの話を整理するとたまに通りながら声をかけて来た異性が日に日に親し気に話しかけてくる。


話しかける使用人はおおよそ男女とも若手の者が多い。


男は俗にいういい男

女も良い女。


異性を使って使用人を誑かそうとしているのか店に入り込もうとしているのかまでの動きはない。


使用人へ話を聞きまとめるとたまにお使いに出た折にも顔を合せたり、休みの日に外出した時も偶然を装い顔を見せる等最近頻繁な気配を感じて全員へ注意を喚起したところだ。

と言う事であった。


未だ実害も何も無い為様子を見ているのだと話すサンドスであった。


「と言う事はサンドス、お前にはその良い女は声をかけてこなかったという事だな」話を聞きながら茶化す知矢


「ええ、まあその様で」と少し渋い顔をするがサンドスももう若者とは言えない歳だから仕方がない。


「でもアンドウ達も声を掛けられていない様なんです」とイエヒコ。


「と言う事はイエヒコ、お前は声を掛けられたのか。どんな女だ」


「ハイ何度か。ひと言で言えば美人でした。田舎にはいないような都市美人って言うんですかね。目が大きくて鼻筋の通るとにかく美人でした。」と思い出す様に話すイエヒコはまた会いたそうな顔をしている。


「うん?」風呂につかりながら何か訝しそうな顔をする知矢にサンドスが気づいた。


「どうかいたしましたか」


「・・・さっき夕闇が深くなりライトが無ければなにも見えなさそうな裏通りで俺に声をかけてきた女がそんな感じの美人だったな・・・」


知矢は何か嫌な感じを覚えた。


「ご主人様にも・・・」イエヒコはにやけていた顔を急に引き締める。


「トーヤ様いよいよもってこれは何かありますな」サンドスも険しい顔をし始めた。


「ああ、嫌な感じがビンビンするな。男の方はどうなんだ。良い男だが強そうなのか」


「いいえ、マクさんによると所謂優男のようだと言ってました。マクさんは『気持ち悪い男』と。でもコレットさんは『可愛い男』ってよだれを出してました。」

素直な情報をイエヒコは告げる。


「・・・・ボンタには言ってあるのか」知矢がサンドスへ確認する。


「いえ、今のところ。現れるのが二人でしかも場所を限定していませんでしたから。ですが彼は店に近寄るあらゆるものを気にかけていますから何か気が付いているかもしれません。」


「俺と出くわした時、その女の接近を全く感知できずに懐に入り込まれたんだ・・・」

少し思い出し悔しそうに告げる知矢。

思い出すと余計に悔しさが増す。


「ご主人様の懐へですか・・・それはやはり普通ではありませんな。今夜皆に伝えて警戒を厳に致しましょう。」


「ああ、それと今度から出かける者は必ず2人以上を必ず守らせろ。出かけるなとは言わないが不要不急の外出はなるべく避け必ず複数だ。良いな」


「「はい」」

知矢の言葉に直頷く二人だった。


少しのぼせそうになりながら風呂を堪能した知矢であったがやはり嫌な話を聞くとその効用も半減したかに感じたが貴重な話を聞けて良かったとも思う。



(何が起こっているのか。誰が・・・)


そう考えながら窓の外へある符号を示した棒を一本窓のつっかえ棒の代わりに刺した。


これはボンタが見ればすぐ気配を殺し密かに知矢の元へ来るようにと言う合図である。


他人が見ればただのつっかえ棒である。




ものの数分で知矢のレーダーにボンタが表示され戸が微かに”トントン”と叩かれると知矢は窓を閉じてから部屋の戸を開けるとそこには神妙な顔をしながらも呼ばれてうれしそうなボンタがひっそりと待っていた。

ボンタを部屋へ入れると外に声が漏れない囁くような話声がしばらく続いていた。



その後、遅くまで知矢の部屋からは微かな明かりが漏れていたがいつのまにかその光も消え気が付くと部屋から一切の人の気配も消えていたのだった。







中国ウイルスの日本での感染拡大がさらに深刻さを増しております。

最近ウイルス慣れしてきた感がありますがもう一度気を引き締めなおして中国に負けないように生き抜きましょう!( `ー´)ノ

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