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第111話 家と人と嫁  ~トーヤ様結婚大作戦ですわ!(リラレット) いや止めとけ(サーヤ)

更新できないと言いながら更新いたします。

申し訳ございません。


では第111話どうぞ



「うーん、流石に貴族の別宅だっただけあって作りも豪華だが部屋数の多さと言ったら、一体何部屋あるんだ。」


知矢はその屋敷を見上げながら外からうかがえる部屋の多さを想像し住む前から既に面倒になっていた。



ここは知矢の功績を称えるために受けた報奨の一つ、庭付き一戸建てと言う次元を遥かに超えた敷地面積と延べ床面積を誇る豪華な住宅であった。


先日サーヤから受けた話ですっかり失念していた知矢の屋敷を改めて見に来たのである。

知矢は基本的に華美な事を好まず質素と言訳では無いが日本に住まいしていた頃も建てた家は部屋の数は必要最低限。不要な和室や客間さえも設けなかった。


自宅を掃除してくれる妻への気遣いでもあったが使わない部屋はいらないと夫婦親子で話し合った結果である。




その屋敷は周囲を石の積み上げられた塀で囲まれ正門には鉄城門があり一歩中へ踏み込むと数十メートル先に見える屋敷へ進む石畳の馬魔車道が一方通行の様で左右にぐるりと円を描く様に敷き詰められている。


正面玄関の魔馬車寄せの上には大きな屋根もあり降雨でも濡れずに馬魔車へ乗り降りが出来る。


玄関へ入る前に振り返り左右を見渡すと離れ屋があるのも見受けられる。

1つは使用人の専用住居と思われ屋根付きの渡り廊下が屋敷に続いているようだ。


もう一つは庭師用の住居と倉庫を兼ねているのであろうかその隣には馬魔房もある。


そこだけ見ても知矢は何かうんざりしていた。


「おいリラレット。この屋敷を管理運営するのはどれだけの使用人が必要なんだ。」


同行する総支配人のリラレットへ聞いてみた。

元々貴族のメイド長を務めていた彼女ならば詳しいであろうと考えたからだ。



「はい知矢さま。先ず内向きやご主人様の身の回りのお世話で6名から10名。調理人とその補助で3名。庭師1名厩役で1名これは一般的に兼任で2名で結構かと。それと警備担当が6名から10名、そして全てを統括する執事又は家令役で1名計 18名から26名程かと。」


流石リラレットである。知矢の問によどみなくその人数さえも即答であった。


「そんなにか・・・しかし人を雇うのも簡単ではないしな。リラレット、お前に家令を任せたいがどうだ。」


「そのような重責を賜れること望外の想いでございます。ですがご主人様魔道具商店の方はいかがいたしますか。」


頬を高揚させ喜びながら頭を下げたリラレットであったが店の人員配置が気になるようだ。


リラレットを筆頭にここまで店を立あげてきたのだからそれ相応の想いはこもった店である。今後の運営も気になるのは当然だった。


「サーヤはどうだ。奴は頭も回るし礼儀も弁えている。」


「確かにそう言った意味ではサーヤさんは非常に優秀な方です。しかし店を取り仕切るにはいささか、彼女はトップより補佐や奥から周囲に目を光らせるタイプかと」

リラレットもサーヤの力は十分に認めてはいたが言葉を発するときどうしてもぼそりと喋る癖があり多くの者を率いて行くにはいささか不に相であった。


「そうすると他に誰かいるか」


「知矢さま、不遜とは存じますが1つお聞きしたいことが。」

リラレットは恐縮しながら知矢に問うてきた。


「そういうの構わないから聞こう」


「はいでは失礼して。

冒険者ギルドのスコワールド様をお召しになるつもりはございますでしょうか。もしそのお気持ちがございましたらこの屋敷にお住まいになり商店へとお通いあそばせれば店をお任せするに十分な資質もお持ちかと愚考いたしますが」


「ちょっと待て。お前の言うお召しにとかこの屋敷に一緒に住むと言うのは俺がニーナさんと結婚するって事か」


リラレットからの問は知矢を慌てさせるに十分であった。


そんな知矢を見ながらリラレットは真剣な面持ちで

「当然のことと存じます。彼女にはギルドで鍛えた経験で資質が十分に備わっていると思われますしご主人様の奥様としても申し分ないお方かと。」



「いやいや彼女の想いは別にして俺の方は誰とも結婚する気などこれポッチも無い。」

知矢としては当然の考えだ。


大学を出て就職、そして結婚、子供をもうけその子供も結婚し孫が出来た。そして仕事を60歳で引退しのんびり老後を過ごす。この思いで生きていたのだから当然であった。


しかしこの世界に最高神により転移した知矢の姿と年齢はその力で16歳に若返っていたのだから周りは当然今後結婚し子供を設けるであろうと考えていた。


そして知矢に仕える使用人達にも漠然と将来結婚するであろうとの認識があったのは間違ってはいない。


その知矢の考えと周囲の想いの差を埋めることは知矢が最高神により別世界から転移してしかも若返った姿の中身は60歳を超えている。その事を理解してもらわねばならない。

しかし話して理解できることでもないそして話した事で聞いた物が如何思うのかも怖かった。元々知矢は転移者であることを口外するつもりも予定も無かったのだし。



しかし他者を説得する他の言い訳など考えてもいない。


「しかしご主人様。こうして徐々にお立場も出来てきました。そしてこういっては何ですが資産もお持ちでしかもお若いのですから周りもほっときはしないと思います。ですからそうなる前にご主人様とスコワールド様にそのお気持ちがあるのであればと・・・」


リラレットは言いにくそうではあったがこれまで考えていた事を率直に知矢へと告げた。


「お前たちの気持ちはよく解った。しかし今はその気は無い。だからニーナの事を考慮しない方向で考えてくれ。」


少し機嫌を損ねた感に見えた主に対してリラレットは「ご無礼致しました。」と頭を下げ一度この話を引き取るのだった。


「ともかく今はこの屋敷と商店の同時差配になるかもしれないがリラレット、当分はこの体制で頼む。不足する人員はどんなものをどれくらい必要か報告してくれれば早急に手配するつもりだ。」


わかりましたと再び頭を下げたリラレットである。



その後足早に屋敷の内外を見て回り必要な家具や物品なども検討しながら今日の所は下見を終えた。


リラレットを店へ帰した知矢は1人その脚で去る場所へと赴くのであった。




「これはこれはトーヤ様。ようこそおいで下さいましてありがとうございます。」

知矢の目の前にはうやうやしく頭を下げる人物。奴隷取引商会、会頭ザイード・ギムベルグであった。


知矢の率いる使用人達は全てこのザイードを介して購入した奴隷である。その過程ですっかり知矢の鑑識眼に惚れ込んでいた。


「ザイードさん先日はわざわざお祝いなどを頂き恐縮です。ありがとうございました。」

ザイードは知矢が管理貴族から受けた帝国報奨に対するお祝いの品々を送ってよこしたのだった。


「いえいえ、トーヤ様の偉業をたたえる祝いにしては粗末な物をお送りしてしまったやに心配しておりました。」



型通りの挨拶を済ませた二人はソファーで紅茶を飲みながら商談へと入るのであった。


「先日三度目のご購入からまだ日も立っておりませんが如何なさいましたでしょうか。」


そう知矢は既に3度この商会から奴隷を購入している。しかもわずか数カ月の間にであった。


「ああ、そうだなしかし色々俺の周りが忙しくなったと言うか俺が考え無しに手を広げてしまったせいでどうもあらゆる人手が足りなくなった。

そこで相談に来たわけだ。」


「はい、その様な場合にこそ私共がお力になるべくして存在しております。ですが正直申しまして昨今この都市では急激な経済発展と人の出入りの増加に伴い好景気に沸いておりまして以前より経済奴隷の数があまり揃わないのが現状です。」


知矢の魔鉱石発見に伴い爆発的に人口流入が起きありとあらゆる仕事に人手が不足し始めていた。


魔鉱石採掘に関わる者は帝国政府の管理下で工業ギルドが人を差配している。その多くは犯罪奴隷であった。

しかし採掘後の精錬・加工、出荷等の人員は新たに移り住んだ物が多くそれに伴い生活環境の整備で商人の多くもこのラグーンと新衛星都市の周囲へ続々集まってきている。


人が集まれば社会世活を営むために住居、飲食、購買すべての分野で金と人が動くのは当然だ。


公称6万人と言われていたラグーンとその周囲の人口は既に10万をこへ更に不確定に出入りする物を併せると15万人はいるのではないかとも推測されている。


倍以上の人が生活する様になれば全てが倍以上必要になるのは必然だ。


商売や流通が盛んになれば人も必要になる。


しかも景気が良くなれば借金奴隷になる者も減る等今奴隷商会は商品の数がめっきり少なくなっていたのだった。


「そう言った訳ですぐにトーヤ様へ紹介できそうな質の良い奴隷は生憎数が揃いません。」

申し訳なさそうに話すザイードであった。


知矢も思いもよらない話に方針を考えあぐねていた。

知古の少ない知矢がすぐに人材をそろえられる奴隷商会を非常に頼りにしていたのだった。


「今いる奴隷の素性はどうなんだ」ともかく何人かでもそろえられればと試しに聞いてみるが。


「はい、今は殆どが違法離農犯罪奴隷ばかりでして」と心苦しそうに答えるザイードあった。


帝国政府は食料生産者に対して破格の厚遇をもってその立場を守っている。

税金の優遇、取引購買品の免税、土地の新規開拓に対する免税などその他多岐にわたり食料生産の確保を図る厚遇政策をとっていた。


そのかわり農民に産まれた者は必ずその職務に付かなければならない決まりも設けていたがもっともこれだけの厚遇を受けている農民は他の職に転職したいなどと言い出すものは皆無だったが中には農作業を嫌い莫大な資産を捨ててでも他の職業に就きたい、他の都市で暮らしたいと言い出すものも少なからずいた。


しかし産まれた時から他の帝国民よりはるかな優遇の中で育った者が許可無く離農する事は重罪として罰せられるのだった。


奴隷として売られた彼らだが現実問題離農者を購入する者が少なく商品として商会としては困る商品でもあった。産まれて厚遇されていた者が無許可で我儘に離農する、そう言った者には性格的な問題も多くしかも他の職業適性や他者との協調性も欠くなど好まれないのであった。



「そうか流石に俺も農民はなあ・・・」

そう残念がる知矢であったが仕方が無くザイードに出物が有ったら連絡が欲しいと言い残し奴隷取引照会を後にするのだった。



当てが外れた知矢は仕方がないと言ったん商店へと戻る事にした。


商会にいる間知矢の言う事を聞いて大人しくバックに隠れていたピョンピョンはスルスルっと知矢の肩へ這いあがり知矢の頬をスルスルしながら落胆しているような主を慰めるのだった。


「はは、ありがとうよ。でも本当に何か考えないとな」と肩に乗った従魔に話しかけながら思考を巡らせるのであった。



「アッ待てよ!もう一軒あるじゃないか。おいピョンピョン帰るのは未だだ、もう一軒寄って行くぞ!」

との声に

「・・・・・・(了解お供します)」と答えた従魔。


二人は踵を返すと新たな目的地に思いを馳せながら人ごみの中を歩きだすのだった。




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