第110話 イベント整理 ~「・・・・・(わーい新しいおうちですね)」
こんばんは
本日より新たな話がスタートします。
閑話を挟みながらのんびり進めたいと思いますのでどうぞよろしく。
今日は会話がメインです。
では第110話どうぞ。
知矢は困っていた。
いや訂正しよう。
正確には本人は困ってはいない。
本当に困っているのは知矢の思い付きであれこれ新たな事を初めてはまた別の事を始める主に対してそれを言いつけられる使用人達だ。
勿論使用人たちは主の命に背く事は無かったがやる事や考えることが多すぎるのは事実だ。
しかし主が常々言っている
「休みの日はしっかり休んで余暇に何かしたいことをやったり、体を休めるのも重要だ。よって休みの者は絶対働かない事。」
と言われているが如何せん日曜日や祭日、有給等の概念も無いこの世界。そして一般の人々は食べるためには常に働かないといけない、という習慣が身についているのだからなおのこと困惑もする。
さて話を戻すが、知矢は大量の仕事は押し付けているつもりはなかった。
しかし新たに思いついた事を考察し即座に実行、継続や運営が可能ならそれを使用人へ任せて自らは何か新たな事を考えだす。
その繰り返しであった。
先ずは
魔道具を生産し販売する商店を立ち上げた。
それに前後して店の清掃から店自体を作り出す事。使用人の教育運営方法の検討。そして何より自分たちの生活環境の整備等を行いながら店を立あげた。
次は商売上のトラブルを解決すべく敵を一網打尽にするべく旅に出ながら相手の出方を待って殲滅捕縛に成功。
それに関しては事前に店の休業を告知したり新商品の案内などをで客に混乱が生じその対応に忙殺されながら明日より旅立つ支度も行ったりした。
そのご新たな食材を手に入れ喜ぶ主の為に調理方法や保存方法、調理器具の工夫、バリエーション開発などを行っていた。
次は貴族とのもめごとだ。しかしこれの殆どは主が自ら対応し事なきを得たがその後自出が濁されている過激な娘の教育を任されてんやわんやになったり。
と思えば今度は従魔を連れて帰還。
一時は騒然とし泣き出す者や卒倒しかける者(これはリラレット1人だが)がでるなどの大騒ぎ。
結果として今では従魔を主のペットか何かのように平静に世話を出来るようになったがそれまでの苦労は筆舌に尽くし難い(匿名希望の使用人談)。
次は排水浄化のために裏庭へ築造した装置。
確かに排水は綺麗になり匂いも無い透明な水へと浄化できるようになったがそれまでの数日間は発酵して何倍にも膨れ上がった悪臭に頭を痛め風の魔道具をフル稼働させ拡散希釈を試みたりそして近隣からの激しい苦情にも対応するなど大わらわだった。
そしてその浄化作戦をさらに進歩させスライム捕獲作戦を実行。
使用人を引き連れ出かけた主。残された物は手薄になった商店の対応と新たに雇い入れていた奴隷の使用人としての教育も重なり猫の手も借りたい騒ぎであった。
そしてスライム捕獲作戦を終え帰還した主一行。
捕獲したスライムの用途を検証するため引き続き裏庭での実験が継続されている。
そして屋台の営業開始。
夜に限った営業の為勤務時間と交代要員の調整に苦慮ししかも身の危険を考慮し戦闘の出来る物と併せしかもそのペアが上手く調理や客対応を出来る様に組み合わせる等これも苦慮していた。
更には屋台の営業開始前から計画が進んでいた料理屋の開店準備も未だ継続中である。
さてこの状況でのんびりできているのは誰だろうか。
それはもちろん主の知矢だ。
しかしそれは当然の事で何も後ろめたい思いをする必要はないのだ。
ただ購入した奴隷の分際でそれに疑義を訴える者はいないのがこの世界の常だ。だが知矢は物面や金銭面、そして精神面で奴隷の主としては破格の待遇で皆を遇していた。
それには皆誰もが感謝はするが異を唱える者など心の奥底から誰もいないのも事実だ。
それはそうだ。
奴隷として売られ買われた先によっては食事も最低限、水浴びさえもさせず屋根が有ればましな小屋で横になり昼夜言われたことをやらなければならない。それが一般的な奴隷だ。
一応は帝国の法律で奴隷の待遇保護は示されており罰則はあるもののやはり殺されなければ司直もそう動く事など無いのが現状だ。
ただし契約金額と契約日数を違えれば即罰が下るのでそれは守られてはいたがその対価に対する労働の過酷さはやはり奴隷のそれである。
その点に関しては知矢は神の如くの存在であると皆は思っている。だから何も文句を言わず黙々と積極的に事を成すのであったのだが。
その中で1人異質の存在で唯一と言って良い、知矢に諫言できる存在。それがサーヤである。
サーヤは元貴族令嬢の奴隷だが生まれる前は知矢と同じ時代を生きた日本人の転生者であった。
その為時に知矢と昔話の様に日本や地球の話をする事が有った為誰もいないその時を狙いサーヤは知矢へと状況を話し改善を促すのだった。
勿論サーヤは奴隷の身分である事と自分の立場を超えることなど考えてもいなかったので己の欲望や甘えの為に知矢へ何かを吹き込むような真似は決してしなかった。
それ故知矢もサーヤの言葉に耳を傾けるのだ。
「そっか、うううん。少しプロジェクトの進行を見直しクリティカスパスを示した方が良いか・・・」
「?何それ」知矢の言葉に首をかしげるサーヤ。
「あれ?サーヤは昔研究者として工程表を作ってなかったか?研究の進め具合を表す日程や行程と関わる人員の量を示しアクティビティーやイベントの動きを表にして明示するんだ。」
「それみたいなものは有った。けど私はしたい研究をしたいだけやってたから。一緒に研究していた研究員は私の研究室を”ブラック”呼ばわりして皆転籍していった。」
「あははは。基本お前はのめり込むと昼夜休みも関係ない資質だからな。しかしそれが他の使用人たちの事を考えて俺に”改善”を要求するとは変わったな。まあ良い傾向何だろう。」
「もう研究者では無い。今は貴方の奴隷で使用人。主の為になるなら何でもやるけどそれについていけない者がいるのを伝えられるのは私だけ。」
「そっか。そうだなありがとう。だけどどうするか、また奴隷を増やすか。」
「知矢のその思い付きでどんどん増やすのを先ずやめる。一度全てを見直すべき。今ならまだできる。」
「アハハハはぁ、気を付ける。だが具体的にどうする。」
「まず魔道具商店の営業時間を短縮で業務を縮小する。」
「客が混乱しないか」
「当初の様に客が押しかける事は無くなった。大丈夫」
「じゃあ夜鳴きうどんも止めるか」
「それはダメ。」
「なぜだ、時間的な問題も併せて麺を作る等負担が大きいだろう。」
「あれは今、都市でうわさが広がり大人気。待ってる人が大勢いる。騎士団の兵士の皆も。」
「そうかでも人気が出れば仕込みも大変なのでは」
「今製麺機を試作中。もうすぐ稼働し始める。あれなら今の労力の10%で作れる。」
「つまり10倍作成可能と言う訳か。いつの間にそんなものを。お前寝てるか」
「・・・大丈夫」
「怪しいな。寝ろ、命令だ。」
「・・わかった。」
「じゃあ料理屋の開店を一時凍結しよう。まだ試作段階と新しい使用人の教育期間中だ。開店を伸ばせば余裕が生まれるだろう。」
「それには半分同意。」
「残り半分は」
「新たな使用人の中で料理特化の者を夜鳴きうどんに回す。」
「ああなるほどな。そうすれば先に入った使用人の負担も減るし良いな。」
「さらに夜鳴きそばの屋台を2台にする。そうすれば人員の余裕と客のニーズに対応出来て実際現場での負担軽減になる。」
「なるほど逆に客が一軒に殺到したりしない分客足来の負担が軽減するか了解。その案でいこう。
よしサーヤのおかげで少し人員の動きに余裕が出来そうだ。スライムは観察だけだからそれ程でもないしな。」
「・・・・・」
「うん?なんだサーヤまだ何かあったか」
「多分知矢はすっかり忘れている事が有る・・・」
「えっ!何だ、ええと何だったかな。最近妙な依頼も受けてないし。騎士団の訓練は週一回だけだしあ、あれは俺一人だから関係ないか・・おいサーヤ教えろ何だっけ!」
「・・・ハァ」
「そのダメな子を見る様な目でため息つくのや・め・て・く・れ」
「屋敷の引っ越し」
「引っ越し?誰の」
「知矢の」
「・・・・・・・あっ!そうだ。だが別に困っているわけでもないしその内でいいだろ」
知矢は多大なる功績を上げた報奨に莫大な金銭の受領の他、土地と屋敷を手に入れていた。
その屋敷は新築ではないものの非常にきれいな状態ですぐに住める状態であった。ただしがらんどうなので家財は一から用意したり生活環境を整える手間は有ったのだが。
「ダメ、もう限界」
「何が」
「皇帝陛下の命で賜った物を放置する。これ駄目。あれからずいぶん時間がたっている。そろそろ引っ越さないと皇帝の顔に泥を塗る気かと批判が起こる。」
「まじかよ。せっかく人員に余裕を作って皆の苦労を軽減しようと思ったのに。」
サーヤとの協議で上手く事を修正できそうだと喜んだのもつかの間。更なる負担を使用人へ強いる様な出来事が待っていたのだった。
そもそもサーヤはその事を伝えるため使用人たちの仕事の整理や知矢の思い付きでの行動を一時止めようと話を持ってきたのだった。
さて今後どういう展開になるのでしょうか。
頭を抱える知矢をしり目に言い切った感で優雅に紅茶を飲むサーヤであった。
「・・・むにゃむにゃ・・・・神様、知さんへバイクを届けてあげてください・・・むにゃむにゃ・・・」




