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第108話 おいらの活躍見るっすよ!  ~具にちくわの磯辺揚げも加えたいな

こんばんは

第108話を投稿いたします。

どうぞご覧ください。



男はボンタへと近づきそしていきなり後ろ手に持っていた大ぶりのナイフを突き出し「じゃあ有り金全部出してもらおうか」と暗闇で魔道具の明かりに半分照らされた醜悪な影が有る顔をニヤリとさせボンタをおどすのだった。


戦いのからっきしなボンタ。

冒険者として全く役に立たないボンタ

知矢がいなければ立ち行かなかったボンタ


死を予感させる暗闇に光る静まり返った通りでたった一人刃物を持った男に対して危機一髪。



しかし



「セイッ!」

僅かに口から洩れた気合の呼吸、暗闇の中一瞬光った何かが男の前を通り過ぎる。



カラ~ン


地面に何かが落ちた金属音。男は軽くなった己の手元を見るとボンタを脅すために構えていた大ぶりのナイフ、その刃先は無く手にしているのはグリップだけ。


「は?」男は己の手先と音のした地面を交互に視線を行ったり来たり。何が起こったのか瞬時に理解できなかったがやっと自分のナイフの先が落ちた音だと気が付いた。


「えっ?何が?」しかし未だ状況がつかめていないその男へ


「いやあ、兄さん物騒な物を出さないで下さいよ。思わず体が反応しちまったっす。」


男の目の前には平静に呟くボンタが。そしてその手には腰の後ろへ携帯していた短刀をいつの間にか手にしていた。



「ばばっ馬鹿な・・・」やっと状況がつかめてきた男は屋台の若造を脅し金を奪おうと差し出した己のナイフがグリップの根本から斬りおとされていることにやっと気が付いた。



「さて兄さんみたいなやつがウロチョロしてたら売れないうどんが余計に売れねえっす。んじゃあ大人しく騎士団詰め所まで来てもらうっすかね」



何でもない様に言いながら僅かに震えながら後ずさりを始めた男へ再度腕を振ると今度は隠し持っていた細縄がヒュンと一瞬うなりを上げ即座に男に巻き付いた。


「なっ何しやがんだこの」


「おいおいナイフで善良なうどん売りを脅しといて何しやがんだは無いっすよね。さてさっさと来るっス」



ボンタは屋台を通りの脇へ寄せると魔道具の明かりを消し、足元に落ちたナイフの刃先はボロ布に巻き取り腰の脇に差し込んで手にしていた紐の先にくくられた男を引きずる様に騎士団詰め所へと向かうのだった。


「ちくしょう、騙したなこの野郎」


「何言ってんすか。何も騙しちゃいねえっすよ。まったくこの都市も最近色々な奴が入り込んで物騒になりやがったなっすね」

と呟きながら男の声を聞き流し抵抗する男を無理やり引いていくのだった。







その様子を離れた家の屋根から見下ろす二つの影。




「えーっ?どうして?何で?」

黒ずくめの衣装に身を包み屋根の上で隠れるように屋台の様子を窺がっていたのは知矢の使用人で若き警備担当の女、アカネであった。



「だから問題ないと言っていただろ。」

その脇にいる男が何の事は無いと答える。



「でもご主人様、ボンタさんてダメダメの冒険者でEランクの魔物の相手も出来ない程弱いって聞いてましたよ。それなのにあんな短刀の一閃で大ぶりなナイフを切り落とししかも瞬時に縄で相手を拘束できるなんて!」



アカネは日頃からボンタの様子を見聞きしていたがその評価は低く知矢の指示で探索や情報収集しかできない冒険者とは名ばかりの男だと思っていた。もちろんアカネだけでは無く仲間内でも事、戦闘に関しては全く期待していない者ばかりだったので目の前で起きた一瞬の出来事が信じられないのだ。



「ああ、確かにアイツは単独でEランクの魔物や魔獣に対しては討伐は難しいだろうな。

しかしアカネ、よく考えてみろ。


あの強盗の男は単なるチンピラで何の凄みも殺気も感じなかっただろう。あれじゃFランクの魔物より弱いさ。

つまりボンタも一端いっぱしの冒険者として最低限の力と能力は持っていると言う事だ。

理解できたか。」


そうアカネに説明するもう一人の男は魔道具商店の主でありA級冒険者の知矢であった。




知矢は先日より突如うどんの屋台を出すと言い出した時、「実際に売り子なる人物には危険が伴うのでは」と言う警備担当のサンドスの言葉に


「俺に良い人材の当てがある」


と言っていたがそれがボンタであると知らされた使用人一同。特に元冒険者で構成されている知矢配下の警備担当者などは皆



「ボンタさんじゃ結局危険では」

「あやつに出来るのかのう」

「強盗に出くわしたら逃げれば良いのでは」

「とっさに斬りつけられたりしたらどうするのか」

「身体強化の魔法も使えないわよね」



などと知矢の決定には反意を示す事は出来ないが皆と顔を寄せあいながら心配をしていた。


その様子を知った知矢は「それじゃ今晩、影供でもしてみるか。まあ大丈夫だと思うが。」


自分たちと違い奴隷ではないが既に知矢の配下の一員となっているボンタは頼りない仲間の印象が強いため心配するのは無論の事であった。


「じゃあ今夜手の空いている者で1人誰か俺と一緒に様子を見守ろう」


との知矢の言葉で立候補したアカネを連れボンタの気配探知範囲外の暗闇に潜みながら店を出てから様子を窺がっていたのであった。



「しかし問題はそこじゃなかったな・・・」

知矢が難しい顔をしながらチンピラを引きずりながら歩くボンタを見送る。



「えっボンタさんで問題がないのでしたら何が?」知矢の言葉に首をひねるアカネ。


「いや、まさかこんなにもうどんが売れないとはな。俺の計算外だった。」



「・・・・」そっちですかと思ったアカネだったが口にはしない。


しかし使用人たちの間でも『夜の屋台何て誰が食べるのかな。』と声は上がっていたが主の考えに皆が口をつぐんだ結果であった。




「よし、やはり先ずは昼間からやりなおそう。

アカネ、ボンタが戻ったら一緒に店へ戻ってくれ。

あっそうそう待っている間寒かろうから屋台で勝手にうどんを作って食べてても良いぞ。じゃあな」


と言い残しアカネを残したまま暗闇に音も無く姿を消した知矢であった。




暗闇に頭を下げながら主を見送ったアカネは「やっぱり昼間ですよね~」と呟きながら今度はボンタが置いて言った屋台の留守番でもしようかと屋根から音も無く降りて黒装束を脱ぎ去る。



その下に着込んでいた平時の服装で屋台の光の魔道具を煌々と照らしながら未だ一食も売れていなかったうどんを食べようと火の魔道具に魔力を送り湯を沸かし始めるのだった。



ぐつぐつお湯の湧く音がし始めるとアカネは屋台のテーブルをセットしその上に器を準備。


湯の沸騰を確認すると棚に仕舞ってある生のうどん麺を一玉出して湯へと放り込む。



木製の柄の長いフォークで少しかき回しながらゆで上がるのを待つ間今度は出汁が仕込んである汁を土瓶どびんに入れ茹でている麺とは別の鉄鍋に沸かしてある湯に浸して土瓶ごと汁を温めた。



うどんの茹で加減を確認すると竹の様な植物で作られた”ざる”と言う道具で湯切りをし器に移すと温まっている汁をたっぷり器に注いで完成だ。



主に言わせると「薬味にねぎとか揚げカス、油揚げが用意が間に合わなかったがあれが有ればもっと美味しいんだが」


と残念がり代用品を探すと言っていた事を思い出しながらアカネは主の言う処の”素うどん”を湯気が立ち上る器に口を寄せ香りをかぎ「う~ん何か懐かしい香りだよね」と故郷の味付けに何か似ている物を感じながら汁を一口、口にしその後これも知矢が皆が使いやすいようにと作った木製のフォークで麺を持ち上げ「ふーふ―」と少し冷ますとつるりん、と食べ始めた。



「う~んやっぱり何度食べてもおいしい。単純なのに美味しいんだから不思議よね」と1人呟きながら麺を次から次へと啜り込む。



と、そこへ



「おい!こんな遅くにお前そこで何をしている!」


麺を口にしながらアカネは

「ふふぇっ?」声のする方に器を持ったまま顔を向けると数人の兵士がアカネと屋台を取り囲んでいた。



「なんだ、娘か。こんな時間に若い娘がなぜこんな所で煌々と明かりをつけて何を食べているんだ。しかもこの光、あの魔道具の明かりじゃないか。こんな高級品をおい答えろ」



アカネを取り囲んでいたのはこの都市の治安維持を担うアンコール家の騎士団配下の兵士たちであった。



「いや・・私はただ寒いからうどんを食べていただけで」



「うん?うどんだ、なんだそれは」と訝し気にアカネを胡乱な物なのかと上から下へ舐める様に観察するその目は厳しいまなざしであった。


だがその時同行の1人の兵士が


「あっ班長。この子はあの魔道具商店の従業員です。見た覚えがあります。」

アカネの事を思い出したように配下の兵士は上官へと伝える。


「なに、おい君本当か」魔道具商店の関係者と聞きその兵士は慌ててアカネに確認する。



度重なる騎士団と魔道具商店主に知矢とのトラブルにより管理伯爵のアンコールの命で騎士団配下の兵士は毎日のように商店の警備として派遣されている。


伯爵と知矢との間で話されたことの詳細は明らかにされはいないがただの冒険者兼商人と伯爵の関係とは思えず配下の兵士は店の者達へ配慮をしながら毎日警備に通っていたのだった。




「あ、ハイ私は魔道具商店のアカネと言います」うどんを慌ててのみ込み器を置くと立ち上がり軽く頭を下げながら名を名乗った。



「そうか、まあなんだ・・オホン。

あの店の関係者なら身分は確かだし胡乱な者ではないし問題なかろう。

だがしかしこんな夜更けに何をしている、危ないであろうわか女一人で」と逆に今度は心配をしてくれているようだ。



アカネも一端の冒険者、ボンタの様にそこいらのチンピラなど相手になるはずもない腕を持っているがそんな事は知らぬ兵士だし仕方が無かった。



「いえ、仲間が一人、今。

あっそうそう先ほど仲間が暴漢に襲われて逆に捕まえたので今騎士団詰め所へ引っ立てて言っている最中です。」


と先ほどの出来事を話して自分がこの場にいることの正当性を作り上げた。


「なに、それは危なかったな。しかし捕縛して連行までしてくれるとは大助かりだ。

だがしかし何だこの箱は小屋か?そうそうこんな夜更けに一体ここで何を。」


最初の問答に戻ったようだ。


「ああ、これは今度うちの店で食事処を始めるんですけど先に屋台で売って様子を見る事になったので。そうそうみなさん寒い中ご苦労様です。


この”うどん”はそんな寒い中小腹が空いたときにとてもおいしくて温まる料理なんですよ。


しかもすごくシンプルなのにとっても美味しいんです。いま直ぐに作りますから皆さん一杯召し上がってください。

ああ、お代は結構です今試験販売中なので兵士の皆さんにはサービスしておきます。」


と説明しながらアカネは素早く人数分の麺を湯に入れ器や汁の準備を始めた。


「いやしかし」と一瞬戸惑っていた兵士だがアカネの勢いと寒さで美味しく小腹を満たすと聞いて興味を持ち成り行きを見守っていた。



ちゃっちゃと手早くうどんを作るアカネ。すぐに熱々のうどんが器に盛られたっぷりの湯気を上げる汁が注ぎ込まれると辺りには良い出汁の香りと醤油由来の汁の香りが漂う。


「ごくっ」


その匂いに思わず喉を鳴らす兵士。


「はいおまちどう様です。このフォークですくってすすりながら食べてみてくださいね。あと熱いのでお気をつけて」


次から次へと出来たうどんを渡される兵士は少し顔を見合わせ躊躇したが班長の「うむ、せっかくだし頂いてみるか」と許可が下り皆は熱々の汁をすすり麺を頬張るのだった。



「おっなかなかいい味だ」

「おお、食べたことのない味だが嫌な感じじゃないな逆に美味いぞこれ」

「熱々だが本当にこりゃあ寒い夜に温まるな」

「特に具も入っておらんが十分満足できるぞこのうどんとやらは」


兵士たちは最初おっかなびっくり口を付けたがすぐに良い香りとうどんの触感そして暖かい汁のとりこになった様であっという間に食べつくしてしまった。



「ふーっ美味かったぞ。こりゃあ本当に寒い夜小腹を満たすのには最高の料理だな。

今日はお言葉に甘えて頂くが次からはきちんと料金を払い食べさせてくれ。これはいくらなんだ」


満足顔で器を返しながら班長が尋ねてきた。


「あれ、確か。そうそう一杯小銀貨1枚になります」と慌てて思い出す様にこたえる。


「おお、これで小銀貨一枚は安いな、うんこりゃあ毎晩食べてもいいくらいだ。よし、おいお前たち隊長や他の班長には伝えておくから夜の巡視中この店に立ち寄る事を許す。ただしきちんと料金は払えよ良いか!」


班長の言葉に兵士たちは「ハイ」と答え口々に「こりゃあ巡視中の楽しみが出来たな」と喜び合った。



多くの兵士に囲まれたにぎやかな声や笑いが起こる屋台を騎士団詰め所から戻って来たボンタは


「一体何が起こった?!」


と驚きながら屋台へと戻るのであった。






翌日からボンタ、アカネを始め使用人たちは2人1組になり交代で夜な夜なうどんの屋台を出すことになった。



そしていつの間にか噂が噂を呼び都市の夜を徘徊するうどん屋を探しす者があちこちに出没する騒ぎとなり騒乱や事件を恐れた騎士団から順回路を公開して客を徘徊させないでほしいと要望が出された。


そしてそれに合わせて騎士団の詰め所の付近もそのコースに入れてほしいと頼まれたのは屋台を出し始めてしばらく経ったある日の事であった。





2話連続にてボンタ主役のお話しでした。

最後はアカネの話になりましたが。



さて気が付きましたらアクセス数が125,000を超えておりました。

皆様ありがとうございます。


良かったら感想と共にご指摘なども頂ければ幸いです。


では次の投稿で。

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― 新着の感想 ―
[一言] 屋台を求めてさまよう町民(笑) 「ぅぅうぅ、何処だぁ・・うどんは何処だぁ。」 ゾンビっぽい
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