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第105話 閑話 若き古龍とゴールデン・デス・スパイダーの友情物語 ~「わーい怪獣大決戦だ!」

本日は閑話でございます。


では第105話 どうぞ



古龍が知矢と別れを告げ肩に孫龍を乗せて湖へと帰って行った頃の事である。



その様子を遥か遠くから観ていた者がいた事は知矢や古龍、キング・ゴールデン・デス・スパイダーはおろか使用人を始め人族や魔物、魔獣に至るすべての者は誰一人気が付いてはいなかった。




「うむうむ、無事に事を納めたのう。

畏怖や恐怖の対象ともいえる龍族、しかも古龍を相手に剣や魔法では無く言葉により騒ぎを沈め筋を通すとはアヤツ想像以上であったわい。」



眼前に浮かぶ巨大なモニターを前にそうつぶやく老人は先ほどよりその騒ぎの行く末をじっと観察し見事に収めた人族の青年(転移者・若返りし者)を見つめながら感心しきりな様子であった。



その傍らで一緒にそのモニターを見ていたもう一人の中年の男は

「最高神様がわざわざ気に掛ける人族がいると聞き驚いておりましたが確かに並の人族ではありませんな。」

老人へ追従する男も心底知矢の行動に感心している様子だ。





ここは知矢達が生活する場所とは全く別の世界。

神々がおわす神域の一画。

人族どころか全ての生きとし生けるのもがその場所はおろか存在さえも認知できない聖域である。



全ての世界を作りし創造神より命じられ多くの神々が管轄に分れ与えられた世界を担当する神の1人、その中でも最上級の位に位置する多くの最高神の中の1人がこの老人である。



地球もこの最高神の管轄の内の一つであったがその最高神の配下にいる神に命じた事をきっかけに予定外の死亡事故に発展した責任を取り知矢を過疎の最高神が管轄する別の世界、異世界へと転移させたのがこの老人であった。


傍に控える中年の男はこの最高神の腹心とも言われる勿論神の1人でもあった。


「しかしこの水龍は意外でしたな。100年ほど前まではもっと威厳に満ち他の龍族でさえも遠慮する程の力と立場に君臨していたはずですが。まさかこうも”孫”という存在が古龍とも呼ばれるアヤツをここまで変えるとは思いませんでした。」


「じゃがそれも逆に良い方向への変化だとは思わんか。」


「良い方向ですか。しかしこう見るといささか威厳が衰え一族、他の水龍や他の龍族への抑えが効かなくなることも考えられませんか。」

中年の神はこの世界の安寧に憂いが生じるのではないかと心配していた。



「確かにのう。そういう側面も考えられるがじゃが思い出してもみい、500年以上前の奴の事を」


「そうでした。それから考えるとこれぐらいが平和でいいのかもしれませんね。」





かの古龍がまだ若かりし頃の事である。


その水龍は目につく強者が居れば端から全てなぎ倒さねば気が済まない暴龍であった事を中年の男は思い出した。

種族に関係なくとにかく強い相手とみれば即喧嘩を売りその結果は常勝であったことが更なる強者を求めるエネルギーになっていた。


しかしその行いの結果が森の破壊、湖や河川、沼地の崩壊それにより影響を受ける植生の変化や壊滅により魔物や獣の食料不足それに伴い食料を求め移動を繰り返す生き物たち。


それらは魔物たちの憩いの住処であった大森林から漏れ出し人族や他の生物世界への越境などこの世界を混乱に陥れた原因の一つにもなった。

一時期は神界からの直接干渉も検討される程この世界が荒れ始めたのであった。



そこに現れたのがあのゴールデン・デス・スパイダーであった。


ゴールデン・デス・スパイダーは当初若き頃の古龍と話し合いを持ちなだめ諭すことに腐心したが当時の古龍は今よりももっと短気で浅慮であったし、しかも若き血潮に溢れた強靭な肉体と今まで何者にも負けた事の無い自信が対話を阻害していた。



その結果若き古龍はゴールデン・デス・スパイダーへと「話す事は無い」と掴み掛りその脚を引きちぎろうとしたり巨大で凶暴な口を大きく開き噛み千切ろうとしたのだった。


が、つかみかかろうとした腕はゴールデン・デス・スパイダーの4本の前脚に掴まれ身動きが取れず、噛み付こうとした口と牙は一瞬の内にゴールデン・デス・スパイダーの口先から発せられた糸に絡み取られ開ける事は違わずそのうち全身を糸に絡みつかれそうになるのを必死にもがき辛くもその4本の手から脱出、距離を置きにらみ合う事数時間。


我慢しきれなくなった若き古龍は再度の突撃を敢行。全体重を全力で相手にぶつけ様と肩口から突っ込んでいった。


しかし難なくその突撃をひらりと躱したゴールデン・デス・スパイダー。

躱された若き古龍はそのまま勢いで突進。背後の木々をなぎ倒しながら森を数百メートル転がりやっと停止した。


不覚を取った若き古龍は更に頭に血を登らせ一族でも禁忌に近いとされ幼いころからなるべく使用はするなと明言されていたはずの最強攻撃”ブレス攻撃”を決断。



水龍のブレス攻撃は水属性であり発するのは水のブレスだ。

しかし水と言っても地球での例を上げると橋やビルの解体などでも使われる超超超高圧縮の水撃はコンクリートなども切断する力を持っている。



それに近い超超超圧力でしかも直径数メートルの範囲を一気に切断薙ぎ払いを可能とする最終兵器であるのだから周囲への影響を心配した一族の先祖たちが禁忌と呼ぶにふさわしいほどの恐ろしい攻撃だと認知されていた。



その昔、火の属性を持つ火竜と相対した水龍が放った水のブレスは火竜の放った超超超高温で全てを溶かし灰にすると言われる炎のブレスを両断しそのブレス割り開きさらに火竜を両断したと言われていたほどの伝説が口伝されている程である。


そのせいかは解らないが暴れん坊で有名であった火竜の一族が鳴りを潜め今では深慮で英知な龍族と呼ばれる程変わったとも言われている。


そして変わって暴れん坊の称号を得たのが水の龍族。その中でも水龍の歴史上最強と呼ばれ始めていたのが若き頃の古龍であった。






相対するゴールデン・デス・スパイダーに向け狙いを定めた若き古龍はその体内に魔力を充足させた後フルパワーで相手に向かいその最強兵器”水のブレス(最大)”を一気に放ったのだった。



真っ正面から水のブレスを放たれたゴールデン・デス・スパイダー。

その姿は何も動じることが無く不動を貫き唯一動かしたのは口元と前脚だけであった。



超超超圧縮で最強の水撃”水のブレス”はその速度も超最速で一直線にゴールデン・デス・スパイダーと迫る。



直撃を受けたゴールデン・デス・スパイダーはそのままその身が両断粉砕かに思えた、だがその”水のブレス”はゴールデン・デス・スパイダーに直撃するかの直前で急激にその角度を垂直方向上空に向け進路を変えた。



水撃は遥か遥か彼方の上空へと打ち上げられた後その勢いを完全に失い重力に引かれ自由落下と空気抵抗により水撃が広範囲の土砂降りへと変わってしまった。


数十秒であろうか降りそそいだ攻撃にも何もならない土砂降りはそれを作り出した若き古龍とゴールデン・デス・スパイダーへと爆撃のように降り注いだ。



その土砂降りが静まり若き古龍が何が起こったのかわからず攻撃先の相手、ゴールデン・デス・スパイダーをその目で確認したのだった。がそこに見えたのは巨大な多角結晶とも呼べる白い壁であった。


絹のように光り輝く糸で織られた多角結晶体。それはゴールデン・デス・スパイダーが体内で魔力を練り上げて吐き出した糸で編まれた障壁。

”マジックウオール”であった。


”聖”の魔法属性を持つゴールデン・デス・スパイダーが魔力を練り上げて最強の糸と共に編みあげた魔法の壁は全ての攻撃を跳ね返す最強の盾であったのだ。


渾身の魔力を練り上げて放った水のブレスを封じられた若き水龍は魔力が枯渇しかけ精根尽き果てかけていたがその体力はかろうじて残っていた。


今まで経験をしたことのない言いようのない感情を湧き上がらせた若き古龍はそれが初めて経験する”恐怖”だと知ったのは後の事であったがその場はとにかく本能がかろうじて呼びかけたのに反応しとにかく自らの世界、水の中へと一心にその巨体を走らせたのだった。


しかし若き古龍が水辺に逃げ込むまで待つ相手では無かった。


ゴールデン・デス・スパイダーは追撃ともいえる多量の糸をその口から若き古龍へと放った。


必死の本能のおかげか脚に絡みつくはずの糸の束は今一歩届かず、代わりにその長い尾を掴むこととなった。


しかし尾を掴まれた古龍は一気にバランスを崩され前のめりに転倒。即座にぐいぐいと後方へ引き戻され始めた。


必死に地面へ爪を立てて抵抗するのも虚しく更に引きずられる古龍ではついにゴールデン・デス・スパイダーの下へと連れ戻されたのである。


「水龍よ私と友にならんか。そしてこの森や山々、水辺、湖そしして遥か彼方の大森林を愛でながら皆と平和に暮らそうではないか。」


優しい言葉を投げかけるゴールデン・デス・スパイダー。しかし若い古龍は未だその自尊心を失ってはおらず

「何が友だ笑わせるな。貴様などこの俺様の下僕にしてやるわ!」


言い放つは脇古龍ではあったがその姿は顔を地に伏せられ尾を縛られる一見情けない姿ではあったがあくまでも強気の龍である。


「のう友よ。分ってはもらえぬか。互いに皆が認め合い生きる地を融通し合えば何も争う必要もないのだ。」


「くどい!」と言い放ちながら最後の魔力を振り絞り顔をゴールデン・デス・スパイダーへ向けた若き古龍は先ほどとは比べ物にならないほどの弱弱しい水のブレスをゴールデン・デス・スパイダーへと放ったのだった。


”ビシャ”とただその巨大な体躯のほんの一部顔の付近を少し濡らしただけの攻撃にもならないブレスを受けたゴールデン・デス・スパイダーは「そうかまだ分かってもらえないか」と寂しそうに呟くとその4本の腕で保持していた自らが生み出した糸を引き回し始め超巨体であるはずの若き古龍の体をビュンビュンと振り回し始めた。


そしていきなりそれを地面へと叩き付ける。



どすーん!



そして再び糸を振り回しビュンビュン振り廻しまた地面に叩き付け、ドスーン、再び振り廻しドスーン!!


ドスーン、ビュンビュン、ドスーン、ビュンビュン、ドスーン、ビュンビュン、ドスーン、ビュンビュン、ドスーン、ビュンビュン、ドスーン、ビュンビュン、ドスーン、ビュンビュン、ドスーン、ビュンビュン、ドスーン、ビュンビュン・・・・・・



何度も何度も繰り返されたのち糸が千切れたのかそれとも切り離したのか突如若き古龍を戒めて居た糸が空中で解き放たれそのまま数百メートル離れた湖岸へと放り投げられた。


どしゃっ、ごろごろごろ


湖岸の地面に叩き付けられそのままの勢いで転がされた若き古龍。やっと水際で止まったその姿は強靭な鎧をまとっているはずの龍の鱗がぼろぼろになり全身から血がにじむ大けがを負っていた。


辛うじて意識を保っていた若き古龍が必死の思いで立ち上がった時ゴールデン・デス・スパイダーはゆっくりとゆっくりとした歩みで接近していた。



そして歩みながら「のう友よ。争いは何も生まないであろう。互いに平和に暮らそうではないか」と再び優しく語りかえるのであった。


その姿をじっとこらえる様に見る若き古龍は「ふっ」と鼻息だけ勇ましく噴き出すと大けがを負っているような姿を見せず堂々と胸を張りながら振り返りゆっくりと湖の方へ歩き出した。


徐々に水に没していく若き古龍。

すると胸程まで水につかった頃その身を停止させ顔だけ振り返りゴールデン・デス・スパイダーに視線を向けると


「また会おう。次は負けん」とだけ言い放ちそのまま再び水中へと歩みを続け没していった。



湖面に残されたのは波と波紋。


静かに吹き抜ける湖畔の風であった。




こうして若い頃の古龍はしばらくの間鳴りを潜め湖の奥底で、おそらくは傷を癒していたのであろう。数十年その姿を見た者は一族以外いなかったそうだ。



数十年の時を経てしばらくぶりに地上へと姿を見せた若き古龍はその己がいない間に地上には区分けとルールが出来たことを知り一気に頭に血をたぎらせたのだったが久しぶりに姿を現した若き古龍を歓迎し迎える様に姿を見せたゴールデン・デス・スパイダーが湖畔にいたのを見つけ暫し無言の会話をしていたように見えたが若き古龍が「フッ」と鼻息を吹き出した後再び湖へと没していった。


その後は度々姿を現すようになった若き古龍であったがそれ以降は以前の暴龍は鳴りを潜め己より若い水龍たちを引き連れては獣を狩る程度であった。


しかしたまに出くわす若い古龍の昔を知らない魔物などが若き古龍や若い水龍たちへと立ち向かうと一撃をもって相手をなぎ倒すのであった。


ひょっとしたら弱くなったのか?と思っていた一族や周囲の魔物たちはやはりその力は健在だったのだと思い知らされたが暴龍では無くなったのだとも感じ安心をしていた。


なにせその向ってきた相手は数あれど以前のように引き裂かれて打ち捨てられることも無くなり大けがなどは負っても命を失う者は誰一人いなかったのであるから。





「では引き続き見守る事に使用かのう」

最高神は優しい目でモニターに映る古龍の姿を見送るのであった。





「さてそろそろアヤツに頼まれた手紙を届ける時期かのう」


そうつぶやく最高神であった。


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