第102話 強者のルールいや世界のルール ~「とっトーヤ・・・腰が抜けたニャ・・・」
昨日は更新できずに申し訳ありません。
では早速、第102話どうぞ
「ayugyugyugya!!(じーちゃん!)」水龍の幼体が糸でぶら下げられたまま声を出す。
「おおお前は! 貴様か! 貴様がこの子を攫ったのか!もはや許せん!!」
といきなり激高した古龍はその口先を大空気と向け大きく口を開いた。すると
「GRYUUUUUUUUUUUUUUUUUUUU!!!!!」
咆哮をあげるのだった。
古龍の激昂する様子を静かに見守っていた森の仲介者”キング・ゴールデン・デス・スパイダー”は
「フォッフォッフォー。相変わらず人の話を聞かん奴じゃ」と古龍の様子に警戒もせずのんびりとした様子でその場を動く気配もない。
古龍が咆哮を上げるとすぐさま湖の各所に変化が起きた。
広い湖面の各所が急激に波立ち泡を上げ水面を盛り上げ急激に慌ただしくなってくるのだった。
「ニャー!トーヤ!」
全身の毛を逆立て慌てるニャアラス。彼はその本能で湖面の変化が何を表しているかを感じ取り知矢へと退避をするよう腕を引く。
「ニャアラス落ち着け。もう少し様子を見よう」と友をなだめるが彼は気が気でない様子は変わらない。
そして知矢の後ろで青い顔をしていたノブユキは恐怖で既に膝に力が入らないのか地面へとへたり込んで呆然と湖面を見つめている。
すると波立湖面の各所から次々と水を噴き上げながら浮上する物体が出現し始めた。
ざっと見渡しその数約50、古龍の眷属たち、水龍の集団が古龍の咆哮にて呼ばれたのか姿を現した。
「「ギャアアーーーーー!!!!」」湖面の周囲一杯に姿を現した水龍の集団を見てニャアラスとノブユキは叫び声をあげ知矢の脚にすがり震え出した。
「おお、来たなわが眷属たちよ。
良いかよく聞け!
昨日より行方を絶っていた幼い眷属はほれアヤツの手の中じゃ!
仲間を攫われ黙って観ている我々ではない。!
仲間を取り戻した暁には今日こそこやつらの一族を根絶やしにし誰がこの森の王であるかを広く成さしめるのだ。
良いか者ども!我に続け!!」
古龍の大音量による眷属である水龍たちへの激に対し参集した水龍たちは
「「「「「「「Gyuuuuuuuuuuuuu!!!!!!!!!!!!」」」」」」」
と一斉に大空へ向け咆哮を上げる。
湖の中から現れた水龍の眷属たちを率いた古龍は目の前に幼い眷属を糸でぶら下げ立つ敵への攻撃へと水中から湖畔へ進撃を開始した。
古龍の巨体は推定15m以上。率いる水龍たちも古龍には及ばない物の10m前後の巨体である。それが50体以上が一斉に古龍に従い湖畔を目指す。
流石眷属の子龍が相手の手元に居ては全員で一斉にブレスを浴びせるなどは出来ない事はわかっている様で直接攻撃の肉弾戦を敢行するつもりのようだ。
対するキング・ゴールデン・デス・スパイダー側。一族のピョンピョンの言う処の家族たちは筆頭のキングは古龍に並び立つほどの巨体であるが周囲に展開する他のゴールデン・デス・スパイダーの大きさは大きい者でも1mにも満たないものが殆どで多くは600mm程であろうか。古龍の眷属と見比べてもとても戦いになりうるとは思えない戦力差であった。
ただし数だけで言えば知矢の感知レーダーによるカウントで700匹は周囲へ展開して龍の進撃に対していたのだが。
「数だけではあの龍たちに対するのは無理に見えるが」と知矢は心配を口にする。
しかし知矢から見て右手の先に佇むキングは堂々と古龍たちを見据えたまま動こうとしない。
戦いに勝つ余裕なのか、それとも子龍が手の内にある事での自身なのかはたまた何か策があるのか確実に接近してくる水龍の集団とキング達を交互に見て焦りを覚えた知矢は我慢しきれなくなり
「ピョンピョン!二人を頼む」と従魔へ知矢の足元で恐怖の為に膝から崩れ落ちて動けそうにない友ニャアラスと使用人のノブユキを託し湖畔の水際を走り数十メートル先に迫る古龍と湖畔の縁に佇むキングの間に走り出た。
「古龍よ!待ってくれ。俺の話を聞いて欲しい!」古龍に対しながら両手を大きく広げその身の存在を必死にアピールする様に大声で呼びかけた。
「・・うぬぬ!」怒り狂う古龍ではあったがその眼前に現れた矮小な生き物をふと視線の端に入れると一度進撃を止め少しかがむようにその小さな人族と思しきものを見るのだった。
「おお、貴方はトーヤ様では無いか!何ゆえそこに。申し訳ござらぬが今よりそこにおるわが眷属を攫った奴を成敗いたしますでな。少し離れて見物してて下され」
どうやら昨日出会った知矢を覚えていた様子、更にその口調から未だ知矢を神、最高神の加護を持つ者として敬意を持っていることは間違いなさそうだとその一点を持って知矢は古龍と話が出来るのではないかと考えた。
「いや、その事で水龍の頂点にいるあなたに話がある。聞いてくれるか」
いきなりその場に現れた人族、しかし最高神の眷属である知矢の言葉だ。古龍と言えどもそう無下には出来ない。
「うむむむ・・・そ奴の眷属を従魔にしているから味方をすると言う事ならいくらトーヤ様とて我も覚悟を決めますぞ。
最高神様には申し訳も無いがそれが一族、多くの眷属を率いる者の務めでもありますのでな。」
如何に最高神の加護を持ち最高神に近い人族と言ってもここで、多くの眷属が見守る中幼い眷属を見殺しにして引く事など古龍でなくても確かにできない相談であった。
しかし知矢は
「いやそう言う話では無い。これは人族の、俺の知っている常識が龍族であるあなた方の常識と大きく異なるのかを聞きたいだけだ。」
「常識ですと?一体何のお話しで」困惑する様に更に知矢へと頭を下げ近寄りながら話を聞くそぶりを見せる古龍。
知矢は話を耳を傾け、理解する高等な思考を持つこの古龍ならばきっとわかってくれると確信し話を始める。
「では尋ねたい。我ら人族は大事な食料を確保し明日以降も飢えずに生活するため大切に保管をする事が良くある。それは例えばこの様な入れ物に入れ蓋をする等だ。」
知矢は無限倉庫から大きな焼き物の甕を取り出して見せた。
怪訝な顔をする古龍は「ああ、まあそうであろうな・・」と何を言いたいのかわからない顔を見せる。
「それが解ってくれて先ずよかった。
ならばもしその食料を何者かが深夜、夜陰に紛れ勝手に食べたとしよう、その場合龍族の常識ではどうするのか教えてほしい。」
「何を言いたいのか解らんが、当然大事な食料だ。そのような不逞な輩は生かして置かん!八つ裂きにして食ってやるわ」
「なるほど。じゃあ次の話だ。
我々人族は互いに決めた領地や別の国同士の区切り、まあ縄張りと言い換えよう。それを互いに決め協定などを交わし互いの縄張りに入る事や侵すことを禁じそれを破れば争いになったり罰したりすることがある。
そんな事は龍族や魔物と呼ばれる者達の世界は無関係なのだろうか。それともきちんとしたルールがあるのだろうか。」
「ううん?何を言い出す。まあ良いトーヤ様の問だ答えよう。
我々の世界は人族と大きく異なる物は多かろうがその区割りとも言うか縄張りは存在する。我々龍族も近くに住する別の種族と何も意味なく争いたくはない。
今回のように眷属を攫われたりした場合は何を持っても相手に反撃する事はいとわないが」と言いながらわき目でじろりとキング・ゴールデン・デス・スパイダーを一度睨み視線を知矢へと戻した。
「じゃが普通ならばお互いの生存権は侵さず協定を結ぶことが当然じゃ。もちろんそれを破る物が居れば自らの眷属であれば折檻するなど厳しく対処する。まあわが眷属にその様な者はおらぬがなふっふっふ。
トーヤ様これで満足かな。ならばわしはアヤツをぶちのめさねばならぬが良いか」
「ああ、古龍よ。満足の行く回答が貰えて俺も安心した。
なら龍族とゴールデン・デス・スパイダーの一族が争う理由は無いとわかったからな。
いや森の仲裁者たるキングは古龍、貴方の言う協定を守るためにこうして森から姿を現してくれたのだ。」
「何を!我は協定など破ったりはせん、わが眷属もだ。」
カッと目に力が入ったように強い視線を知矢へ向ける古龍だったが知矢は臆することなく話を続ける。
「では話そう。昨日古龍の貴方が姿を現した俺たちのキャンプ地での事だ。」と知矢は明け方に何者かに食料を食べられた事を話した。
「うむ、それは許せんことであるな。だがそれと我らに何の関係が」
食料を奪われた事に同情するそぶりを見せた古龍に知矢は続けて。
「その同じ者があくる日、今日今さっきの事だが広大な沼地である縄張りに協定を破り侵入したとアリガッターヤと言う魔物が怒りをあらわにして怒っていた。そこに居合わせた俺が聞いた事によるとその侵入者は『そんな約束知らない。僕の勝手だろ』と言う物だからアリガッターヤは益々怒気を強めその侵入者に食いつくそぶりを見せたんだ。」
「ああ、それは当然じゃな。その侵入した者が悪い。食われて餌になってもその者の一族は文句は言えんのう」
「ああ、そうだな。だがなそこであなたも知っている俺の従魔が 『あの者を助けたい!森の仲裁者を呼んで助けて貰おう』 と言って”森の仲裁者”キング・ゴールデン・デス・スパイダーを呼び寄せてアリガッターヤとその者を仲裁してくれたのだ。」
「ああ、まあそうだな。アヤツはそう言った事も事をしとるからな・・・じゃがそれが」
「その森の仲裁者に対し助けられたはずの侵入者そして俺たちの食料を勝手に食べたやつはまたこういったんだ。
『お前なんか関係ないじゃんどこ行くのだって僕の自由さ、おじいちゃんだって関係ないもん』
とね。」
知矢の話をいったい何を言っているのかと最前訝しがっていた古龍は一つの可能性に気が付いた。
「・・・・・・・・・まさかトーヤ様」
「そうだ、残念だが貴方の想像通り。
昨夜俺たちの食料を食べてしまったのも、今日アリガッターヤの縄張りに侵入したのも、そして”森の仲裁者”に仲裁してもらったのにお前なんか関係ないと言い放ったのも、古龍よ、貴様の眷属である水龍の幼体。そこでキングに糸でがんじがらめにされているこいつの事だ!
さあ、この始末どうする!古龍よ!」
力を込めた目で一度は知矢を睨んでいた古龍はキングとキングにより捕縛されている眷属の幼体に目を向けたがその目は先ほどと全く異なり驚愕と愁いを滲ませたものであった。
「・・・・・・・わが眷属・・・・・・・・・・わが孫よ・・・・・・今の話は本当か」
何かにすがる様な弱弱しい声で水龍の幼体である孫へ優しくしかし震えるような声をかける古龍。
「なんだよじいちゃんいつも言ってるじゃないか
『強い者は誰にでも何をしてもどこへ行っても力で相手を制すれば勝だって。弱い奴が食料になるのがこの世界だ』
って言ってるじゃないか。だから僕は見つけた食べ物を食べただけだし、行きたいところに行っただけだし、それで文句を言ってきたこいつが僕をこんな目に遭わせたんだ。じいちゃん早くこいつをやっつけて助けてよ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
水龍の幼体による自供ともいえる言葉を聞き古龍は何も言葉を発せなくなっていたのであった。
明日は閑話が入るかもしれません。
果たしこの世界の掟を破った古龍とその一族の運命や如何に!!




