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21.圧倒的な力

 ギレンは眉間に皺を寄せ、こっちを値踏みをするように一瞥する。

 興味をそそられなかったのか、鼻を鳴らして静かに首を横に振った。


 「なんだ【出来損ない】じゃねぇか。くだらねぇ、相手見て喧嘩売れよ」


 本当につまらなさそうに、言葉を吐き捨てた。

 出来損ない?

 騎士見習いの事をそう呼んでるのか。

 それとも、見た目の強さで判断してそう呼んだのか、定かではない。


 一つ言えるのは、黙って見逃していれば、『僕らは』無事だったと言う事だ。

 それを呼び止めたイアンさん。

 だからと言って、僕もエミリもその行動を咎めたりはしない。


 言うまでもない。

 考えるまでもない。


 立場が逆なら、自分でもそうしてしまうはずだ。

 確定ではないが、自分の故郷が潰される可能性があるなら、それの不安は取り除いておくべきだ。


 「すまない……」


 イアンさんは、ギレンの方を向いたまま、苦い顔をして小さく僕らに謝る。

 僕らもまた、ギレンを警戒しつつ、イアンさんの謝罪を心に留める。


 「うぜぇな。お前が声掛けたんだったな? んじゃ『ガストショット』」


 ギレンは右の掌をイアンさんへと翳し、魔法を詠唱する。

 凄まじい速さの突風の弾丸が、イアンさんに迫るも反応出来ない。


 イアンさんを押し退け、僕がガストショットをもろに受けるとそのまま後方へと吹き飛ばされた。


 デカイ弾の割には、先端が研ぎすませれていて、刺さるような痛みと鈍器で殴られたような痛みの両方を感じる。


 そして、何より地形が悪かった。


 本来なら、木にぶつかって勢いは殺されるだろうけど、竹という性質はしなる。

 オマケに滑るときたもんだ。


 二十メートルは吹き飛ばされたか。

 ギレンとあの二人を戦わせるのはマズイ、下手したら一発でも殺され兼ねない。


 二人は僕の名前を叫んで心配をしてくれてるが、そんな事をしてる場合じゃないんだ!

 逃げてくれ!


 ギレンは、僕の行動に驚きはしたが、直ぐ様に二人の間まで割って入る。

 僕に一瞬気を取られた二人は、ギレンが間に入ってきた事に驚き硬直してしまう。


 そこへ、イアンさんの顔へ回し蹴り、その回った勢いを保ったままエミリの腹を蹴る。


 ぶっ飛んで倒れる二人に人差し指を一本立てて、指先を向けた。


 「『ガストブレット』」


 ガストショットと同じ程の魔力を更に凝縮した風の弾丸が二人を襲う。

 僕の距離からでは、二人を助けに行く事は出来ない。


 「『フリーズホーン』」


 僕は魔法を詠唱した。

 二人の前に円錐形の氷を作り出して、ギレンの魔法を防いだ。

 ギレンは驚くように目を見開きながら、こっちに顔を向けた。


 当然だ。本気でないとはいえ、ギレンの魔法は本来なら氷くらい貫くのだろう。

 だけど、僕の魔法は遥かにその想像を凌いでいる。


 セルシウスには、極力隠すように言われていたけど、そんな事は関係ない。


 精霊だろうが、神様だろうが、今この二人を目の前で殺すような約束を守れというなら、僕はそれに逆らってでも、二人を救う。


 今この瞬間、僕は自分の生きている価値を見出だせた。

 僕は二人を……友達を救いたい。

 そして、友の大切にしている故郷。守ってあげたい。


 産まれて初めてかもしれない。

 身体の内側が、焦げそうな程な熱く僕を昂っているのが分かる。


 「つまらねぇ真似するじゃねぇか? あっさり殺られてれば良いのによぉ。俺はキレやすいんだ。覚悟は出来てるんだろうな?」


 凄味を効かせて圧力を掛けてくる。

 僕はそんな事構わず、ギレンへと距離を縮めていく。


 「奇遇だね。僕も沸点は低い方なんだよね」


 僕が嘯き、ギレンの表情は一層怒りに歪む。

 

 「氷使いが図に乗るなよ」


 氷魔法、それは他の属性に比べると破壊力は圧倒的に低い。

 基本は氷の塊をどうこうする物であるから、場合によれば武器でも充分に代用が利くのである。


 だから、サポートと守りとしての性能が殆どで、セルシウスも基本的には体術メインとして氷魔法を使用する戦法を僕に叩き込んでいた。

 無論、セルシウス本人の魔力ならギレン相手でも氷魔法一発かませば終わりだろう。



 「リック……」


 イアンさんとエミリは、心配というより、不思議そうに僕の事を見ていた。

 そりゃそうだ。

 今まで騙していたんだからね。

 この戦いが終わったら、どんな顔をして二人を見れば良いんだろうか……。


 「悪いけど、お前の主観はどうでも良い。本気を出すって決めた以上、お前じゃ僕には勝てないよ」


 僕は一直線に駆けた。

 ギレンも僕の言葉に額に青筋を立てて迎撃に向かう。


 その刹那、ギレンは足を止めて、前のめりになる。


 僕はそこへ右の拳を振りかざして、殴り掛かりながら、三回りくらい大きめの氷を拳から腕に掛けて纏う。


 その特大の氷の拳でギレンは竹を折りながらぶっ飛んでいく。

 それだけで、僕がぶっ飛んだ時の勢いを遥かに凌いでいるのが理解出来る。


 質量と重量が増えれば、単純な破壊力は上がる。

 ただ、スピードは絶対的に遅くなるが、振って加速している刹那に作り出してしまえば、問題ない。


 僕には無詠唱で、それが出来る。

 その無詠唱を使って、ギレンの足の裏部分を凍らせて隙を作らせたのも、無論僕の仕業に他ならない。


 端から僕には魔法を詠唱しなくても自在に作る事が出来る。


 拳の氷を解除して、すぐにギレンを追撃する。


 「くっそがぁー!」


 怒声を上げながら起き上がろうとするが、動けない。

 腕と背中を凍らせているからだ。


 次は顔面に氷を纏った蹴りをお見舞いする。

 今度はそれほど大きくない氷だ。

 蹴りの威力だけでも充分過ぎるくらいだけど、硬さと凹凸を加える事で痛みはより鋭利にえぐみを増す。


 ギレンはそのまま気絶してしまった。


 さて……終わった。


 問題なのはここからだ。

お待たせ致しました。

無駄に短編を書いてしまって、ちょっと時間が掛かってしまいましたm(_ _)m


短編はコメディです。

https://ncode.syosetu.com/n0203gh/

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