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この、手にできぬものを私は掴みたい  作者: やいよるこい
14/25

遠野雪菜 小後

短いです!

 小学校へ通って早6年目、私は最近モヤモヤすることが日常となっていた。


  「宝城様、発表会にぜひ、お姫様役を」

  「ふふ、何度も断っているのに折れませんね。」

  「絶対にお姫様にするまで諦めませんよ!!」


 夏姫ちゃんの人気が高すぎて最近あまり会話が出来ていなかった。

 

 今は夏姫ちゃんをお姫様役にしようとなん人ものクラスメイトから男女問わず声をかけられ、私は話しかけるタイミングをいつものがしていた。


  そんな私の感情を知ってか知らないか夏姫ちゃんが言った。


  「姫役じゃないといけない?私は王子役をしたいのだけど?それで、姫役は雪菜がいいわね!家でも遊ぶことがあるし、練習もできる。この妥協案なら私は王子役でうけてもいいけど?あれでしょ、私の家宝城家の御令嬢には脇役はさせるなとか担任に言われたのでは?」


「えっと、それなら受けてくれるの?」


「ええ、私が王子で雪菜がお姫様ならね?」


「わかりました!!では、それでお願いします!」


  えっ?えええ!?どうして私が主役に!?まわりもそれていいって感じの空気に!私の意志は?いや、嬉しい夏姫ちゃんの王子姿が見れるのはね。でも、相手が私だなんて聞いてないよぉ夏姫ちゃん。そそそれに、キスシーン(フリ)があるのに恥ずかしくて耐えられそうにない!!

 

「よろしくね!私のお姫様」


 あわあわ、していた私の耳元で近づいてきていた夏姫ちゃんが色っぽい声音でささわく。

 何だかぞくぞくしてくすぐったくてすぐさま顔を離し耳を押さえる。


 その日から、発表会でする劇、白雪姫の練習が始まった。放課後に練習をし休みの日には夏姫ちゃんの家にお邪魔しての劇の練習を。

 この、小学校高学年あと少しで中学生になる私は夏姫ちゃんが本来私とは一生関わりがないぐらいお金持ちのお嬢様だと理解していた。

 けれど夏姫ちゃんは、私といるときは気さくでいつも優しい瞳を向けてくれた。すこし、怖いと思うのはお嬢様モードの夏姫ちゃんだ。私にたいしてお嬢様モードはないけれど、私以外の人に対してたまにお嬢様モードになる。かっこよくもある、けれど突き放したような瞳に声音に、もしそれが私に来ると思うと怖かった。きたことはなかったけれど……


「いやー白雪姫グリモアとかじゃなくてよかったよ……いや、不通はグリモアの方はしないか……」


 そう、いいながら台本に目を通している。夏姫ちゃんを視線のはしで見つつ私も台本を読む。


 セリフがたくさんあり覚えれるか心配だったけれどなんとか覚え動きなどをつけ練習をみっちり行う。


 夏姫ちゃんも、真剣な表情で動きをつけながらセリフを言う。そんな姿を見て私の心臓の鼓動がはやくなりドキドキする。


 一番の鼓動がはねあがり心臓がバクバクしたのは、最後のキスシーンでフリなので、私と夏姫ちゃんの唇があと数センチでとどくか届かないかの距離まで顔が近づいた時だった。

 綺麗でかっこよさもある夏姫ちゃんの顔が薄目をあけこっそり見たとき目が合い顔が一気に熱をおび、そんな私を見て微笑みながら。


  「いけない子だ」


 と囁いた。


 ううう、夏姫ちゃん私をどうしたいの!?恥ずかしいでも、どんな男の子よりかっこいいよぉ


 ついに本番がきた。かなり、練習をしたため私も夏姫ちゃんもそれぞれの役を演じることができた。

 

 そして、最後の毒リンゴを食べ眠ってしまった白雪姫の元に王子さまが現れる。

 セリフをいい終え目をつむり寝かされている私に影が射しチュッ


「えっ」


 私は唇に触れた柔らかな感触に声が漏れ瞳を開く。

 セリフがとんびぼーとしていた私はただ、夏姫ちゃんのアドリブに動きをリードされ、劇は幕をおろした。


 なにも考えれず家に帰ったあと私はあのときの感触を思いだし、身体中がカァートあつなり、枕に顔を埋め悶えた。

 

翌日、夏姫ちゃんはいつも通りだった。



 




まだまだつづく雪菜回ですが次回もよろしくお願いいたします!

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