5.盾
長らくお待たせしました…!!
「ジャジャーン! 俺らのパーティーに“前線進出許可”が出ましたー!」
自慢気な笑顔でシオンが許可証を三人に見せつける。
「やっと出たのか」
「遅かったわね」
テオもセレナもそうは言っているが、興味津々に許可証を覗きこみ、満更でもなさそうな顔をしている。
一方アリシアは、「やったね!」と賞賛し、内心では、これで堂々と魔王に会いに行ける!と他の三人同様に、この許可証を喜んでいた。
“前線進出許可”とは、貴方たちの実力なら魔王へ近づいてもまあ大丈夫でしょ、でも命の保証は出来ないゾ!と、ざっくり簡単に言えばこんなものである。
因みに許可が降りなくても前線へ出ることは可能だ。しかし依頼などで行くことは出来ない、行くとしたら全てにおいて自己責任が伴う。要は冒険者ギルドに実力を認められた証というわけだ、この許可証は。
「前の救援でかなり評価上がって、アリシア来てから色んな仕事出来るようになったからな。許可が出るのも時間の問題だったな。
で! 許可証貰ったから前線の依頼も紹介してもらってきた!」
シオンは何枚か依頼書を机の上に並べ、依頼の概要と報酬を簡潔に説明していく。
シオンの説明がとある一枚に移った時、アリシアに何かビビッときた。直感的に、何故かこの一枚にすべきだと感じた。
「この依頼はどうかな?難易度も私達のレベルと同じくらいだし、報酬も良いし」
アリシアが選んだのは、魔王の支配下にある土地の中でも、比較的町に近い砦___言い換えれば前線から程よく離れた砦___での魔兵討伐だった。町に近ければ補給もしやすいし、良い一枚を選んだなぁとアリシアは自分の直感に感謝した。
「良いじゃない! 私は賛成、二人は?」
「流石アリシア! 俺もそれ本命で選んできたし」
「俺も、それが無難だと思う」
「じゃあ決定ね!」
出発の日取りや、装備、消耗品、食糧などを確認し、準備を進め、一行は当日を迎えた。
□■□■□
「依頼は砦に入ってからじゃねえのかよ!」
「シオン! 口より手ぇ動かせ!」
前衛で戦うのはシオンとテオ。
テオが敵の注意を惹き付け、後衛のアリシアが魔法で止めをさす。シオンはテオが惹き付けてられない魔兵を一体ずつ倒し、たまにアリシアの牽制を受けている魔兵に剣をつきたてる。セレナは主にシオンの傷を治し、タイミングを見計らって回復魔法をかける。__セレナ曰く、テオは盾役なだけあって頑丈だから、シオンほど治癒魔法をかけなくていいのだとか__
現在交戦中の場所は砦から少し離れた林の中。移動手段である荷馬車を置き、馬も繋いでおくぞ__という時にいきなり魔兵が、アリシア達を砦に近付けさせないように、ズラァっと現れたのである。
一体一体は大したことがないうえに、数もそこまで多くはないが、太陽も照っている外でいきなり魔兵がこんなにも現れるものだろうか。砦の中なら闇の魔力が満ちているので、いきなり現れても何の不思議もないが。
「アリシアって前衛でも戦えるのよね?」
つい先程全体に回復魔法をかけ終えたセレナが、同じく後衛のアリシアに尋ねる。
「シオン達ほど強くはないけど、一応戦えるよ」
「じゃあテオの所に行ってくれない? アイツ、守りはいいけど、敵を倒すとなると時間がかかっちゃって、シオンと離れてるとすぐに敵に囲まれちゃうのよ。魔導師なら盾役とも相性いいでしょ?」
「え? それじゃあシオンのとこの牽制や、魔兵が後衛に出てきたら…」
「大丈夫、シオンは結構強いし、私だって戦えないわけじゃないんだし。ほら、現に今、アリシアはテオへの援護しかしてないでしょ?」
「確かに。寧ろ、シオンってば私の牽制がない方がのびのびと戦ってるような気が…」
アリシアは援護の魔法を撃つ手は止めずに、前衛の動きを確認する。テオは安定して一体を確実に仕留めているのに対し、シオンは自分に近い順で魔兵を切り伏せていっている。魔兵を蹴飛ばしたり、剣の柄で殴ったり、剣が競り合った相手には頭突きをしたり…。
「あれは本能で戦ってるとこあるから」
薄く笑うセレナには見慣れた光景なのだろう。アリシアにはまだ見慣れないが。
「じゃあテオさんの援護に行ってくる!」
「ええ、テオをお願いね」
アリシアは先程よりもテオに近付き、
「テオさん! 援護マシマシでいきますね!」
テオの近くにいる複数の魔兵へと、目眩ましに光の玉をぶち当てる。その隙にテオがザクザクッと魔兵を倒す。
「サンキュー、アリシア! このまま頼むわ!」
「任せてください!」
牽制の為の光魔法と、テオが惹き付けている魔兵への止めの魔法を準備している時だった。
ビュンと何かがアリシアへと飛んできた。アリシアは咄嗟に短剣へと持ち替え、弾いた。
地面に叩きつけたそれは__矢だった。
弓兵までいるのか…! 短剣に持ち替えたことだし、このままテオの元へ行き、前衛として戦おうか。敵を引き付けながら、後衛の私を守り矢を防ぐなんて大変だし、私が弓兵を引き受けよう。弓兵ならば接近戦には弱いだろう。
アリシアが弓兵へと走ろうとした矢先、魔兵から矢が次々と放たれる。矢の波は止まることを知らず、アリシアへと降りかかる。
___魔法で弾く?剣で弾く?ダメ、魔法じゃ間に合わない。
思考を弾くことで埋めていたアリシアに、影が覆い被さった。
影の正体はテオ、盾を構えてアリシアを背中に庇い守っていた。
「“盾”なんだ、女の子一人ぐらい守らせてくれよ」
振り向いてアリシアへ語りかけるテオの頬には、矢が頬を掠めたのだろう、赤い雫が伝っていた。頬だけではない、盾で庇いきれなかった足や腕の布は血で滲んでいた。
「すいませんっ! 今治癒魔法をかけますから!」
「いや、その必要はねえよ」
自分が早く弓兵へと動き、倒していれば…、魔法が使えたら矢を防ぐことも、弓兵へ攻撃することも出来ていたのに、あの時杖を持ってさえいれば…。そうすればテオは自分だけを守れ、余計な怪我をせずに済んだのでは…。自分の迂闊さに申し訳なくなり、治療だけでも…とアリシアは考えた。しかし、テオがその申し出を断った瞬間、テオは白い優しい光に包まれ、光が消えた後にはテオの傷はなくなっていた。セレナが治癒魔法を使ったのだろう。
「うちには優秀な僧侶がいるからな」
テオは自慢気に笑った。
「盾は守ってなんぼだ。仲間を守ってできた傷なら本望だし、アンタが気にすることじゃない。寧ろ後衛は大人しく守られてほしいもんだ。…で、杖じゃなくて剣持ってるってことは、一緒に前で戦ってくれるのか?」
「は、はい!」
「頼もしいこった。俺の背中はアンタに任せたぞ」
朗らかな笑みでテオは拳をつきだす。アリシアも短剣を握りしめた拳をぶつけ、背中合わせで戦いだした。少し遠くでは、シオンを怒鳴るセレナの声が聞こえた。きっとシオンが一人で突っ走ったりしたのだろう。
「シオンが強引にパーティーに入れたけどさ、俺はもうアンタのこと仲間だって思ってるし、それはセレナも一緒だ。信頼してるし、信頼してほしい。少しずつでいいからさ」
「はいっ!」
「背中預けるようなパーティーメンバーに敬語は必要か?」
「そうですね…そうだね。元ソロで守られ慣れてない私をちゃんと守ってね、テオ!」
「あぁ! 全部まとめて守るのが、俺の役目だからな!」
魔兵の殲滅に、そう時間はかからなかった。
ヒエェェェ…気付けばたくさんの方に読んでもらえて光栄です…!!(;∀; )
書き殴っている様な拙作ですが、ブックマークや評価などなど、本当にありがとうございます!!宜しければそのままお付き合いくださいませ!!m(_ _)m