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初めての異世界は他種族しかいない  作者: 神崎きよ
第一章 異世界に呼ばれた目的
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第3話 エンプティー・ドリー



「お待たせしましたー、おうどんの漬物合わせと小豆の油揚げです。ごゆっくりどうぞ~」


 さっき注文を受けた店員とはまた別の姿の妖怪が表れ、頼んだ品をテーブルに置いてくれた。かけるとヨウは向かい合ったまま手を合わせ、頂きますと告げると食べ始める。


「まず、お前に最低限教えなきゃならんことが三つある。」


 ヨウは小豆の油揚げという見た目は油揚げの中に小豆が沢山詰まってるものを口にし、飲み込んだ後話し始める。


「一つ目はこの世界…各大陸の事だ。二つ目は戦い方。三つ目が一番大事だ。この世界での生き方」


「生き方?」


「そうだ、まさか何もせずに金が入り暮らしていけるとでも?」


 かけるは急に現実的な話を切り出され不安になる。そうだ、今はヨウが奢ってくれているからこうしてご飯を食べているし、家も貸してくれると言ったから安心していたがその後はどうだろうか。前いた世界とほぼ同じで暮らしていくにはお金やら色々必要となってくるだろう。


「とりあえず順を追ってだな。そう不安そうな顔するなよかける~!」


 曇った顔でうどんをすするかけるの頭をわしわしとヨウが撫でる。その撫で方が少し乱暴で咳き込むも、その後水を飲んで落ち着きを取り戻す。ヨウに話してもいいよと目で合図し漬物を口に入れ咀嚼する。


「お前が来たこの世界は《エンプティードリー》って言うんだ。かけるの世界で置き換えると地球ってのと同じ感じ。で、この世界には四つの大陸がある。」


 ヨウは袖の中からもぞもぞと巻物を取り出した。それを広げていくと地図のような物が現れた。地図は右側の上下に細長い島、真ん中に瓢箪(ひょうたん)の形の様な大きな島があり、左側にはほかと比べたら少し小さい島があった。比率で表すと左2の真ん中6の右2くらいだろうか、それ程までに真ん中の島がでかい。


「これは簡単な世界地図な、大陸地図もあるがそれは後。今俺達がいるのはここ、右側の大陸スペクターな? 対になってる左のここは獣人族が暮らす大陸セリアン、真ん中のドでけぇ大陸はかつて分かれていたんだが今は繋がって仲良しな天使と悪魔の大陸だ。上が天使の大陸アッパリジョン、下は悪魔共の大陸パンデモニウムここまではいいな?」


 ヨウは一つ一つ大陸を指で指して教えてくれたのでかけるも簡単に頭に入っていく。一つ聞いていて疑問があったので区切りが良い所で、はい、と手が上がる。


「何、分かんない所?」


「いや、天使と悪魔って仲良しなんですか?」


「皮肉だばーか」


 きっと両者ともに何かあったのだろうと、同情して何も言わずに漬物に再び手を付け口に入れる。


「まぁお前は暫くはここに居るんだし、地図だけ頭に入っとけば大丈夫だろ。さて、お次は戦い方だ」


 食べる事よりもかけるに説明していた時間の方が長かったヨウは、食べきれてない小豆の油揚げを一気に口に放り込み、水を飲み干して一息つく。かけるがうどんを食べ終わったと確認したあと会計を済ませ外に出る。


「ご馳走様でした、ありがとう」


「おー、ちょっと着いてこい」


「どこ行くの?」


「いいから」


(このあと俺が住める家に案内してくれるんじゃなかったのか……? でも戦い方を教えるって言ってたしそれに関係ある場所なのか)


 かけるは不安になりながらもヨウに着いていく。建物を次々と通り過ぎ着いたそこは、少しばかり木々が立っている見晴らしがいい草原だった。


「おーい、ぱるち~」


「ぱるち?」


「へい! お呼びでしょうか御館様っ」


 ヨウが大声で叫んだあと、どこからともなく黄色い狐が飛び出してくる。くるくると回転しながら近くの木から降りてきて、四本足で華麗に着地する元気の良い狐だ。


「紹介する、こいつは俺のペッ…しも…相棒のぱるちだ。こっちはかける、俺の見込んだ人間だ」


(ヨウさん……今相棒をペットとか下僕(しもべ)とか言いかけてたよな?)


「ほほう! 貴方様が御館様に見初められた方ですな、あっしはぱるちでございます。どうぞよろしくお願いします、かける殿」


「殿!? あ……よ、よろしく」


 ぱるちは右足を浮かせて握手のようなポーズを取るも、かけるには伝わらずそっと右足を戻した。かけるは言われ慣れてない言葉に反応するも既にヨウとぱるちは何やらコソコソと話していた。


「なるほど、わかりやした~! かける殿、今からあっしをよーく見ててくだせえ」


 ぱるちは自分の前足にはーっと息を吹きかけぱんぱんっと叩く。これはこの狐なりの気合いの入れ方なのだろう、今まで緩っとしていた顔が引き締まり、当たりの雰囲気もピリッと変わった。


雷の衝撃(サンダーショック)! ……へへ、どうでしたか?」


 ぱるちが呪文を唱えた後、かけるの目の前にひとすじの雷が落ちた。威力にしてそれほど高くは無さそうだが、人間に当たれば間違いなく致命傷レベルだろう。それに何よりかけるにとって、初めて生で見た魔法に興奮を隠せなかった。


「う、うわぁぁああ!! すげえ! 魔法だ! ぱるち君キミは凄いよ! ってかもふもふ~」


「ちょ、かける殿!? あああっしはぬいぐるみじゃありやせんぜ~」


 感動のあまりぱるちを持ち上げて頭をぐりぐりと撫で回したあと、頬擦りをしたら想像以上にぱるちの毛並みが良く、かけるは頬擦りが止まらなくなった。ぱるちも初めての反応で、どうしていいか分からず困ったような顔のまま放心状態だ。


「おーい、かける~? とりあえずそいつ離してやれー」


「……はっ! ついつい、ごめんぱるち君」


「へ、へー。大丈夫でっせ」


 正気に戻ったかけるはぱるちを離し、地面に下ろしてあげる。一通りの流れを見ていたヨウはため息をつく。


「魔法について、話していいか?」


「はい、ごめんなさい」


「すいやせん、御館様……」


 かけるとぱるちが頭を下げて謝る姿を確認し、黙ったところで話を続ける。


「今見てもらった通り、この世界では魔法がある。大陸によって得意な魔法は違うが、大抵の奴らはすべての魔法を使えるんだ。」


「全ての魔法!?」


「そう、例えば俺やぱるち、ここスペクターの奴らは炎と霧の魔法を得意とする。だから仮に俺がここでちょっとした炎を出したつもりでも、それはとんでもない威力で爆炎となってここら一面焼け野原だ……ふは、笑えるだろ」


「いや笑えねえよ」


 どこにツボに入ったのかヨウはくふっと笑いを我慢したように静かに笑っている。かけるはヨウの言葉を想像して身震いをする。


(ちょっと火を出したつもりで大災害とかヤバいじゃん。……というか、あれ?)


「ヨウさん、霧の魔法って何?」


 火や水、風などはかけるがいた世界でも漫画等で見た事があるため、簡単に想像がつく。だが霧の魔法と聞いてもピンとこず、未だ少し笑っているヨウに質問してみる。


「それはあっしが説明しやす! 御館様まだ笑ってるし……。ごほん、霧の魔法とは我ら妖怪の大陸(スペクター)の住人がもっとも得意とし、使い方次第では最強と言われる魔法です! 毒霧を出せば敵を即死させる事もでき、霧を使って身を隠す事や幻覚を見せることも出来るとても強い魔法でっせ!」


「最強!?」


 ぱるちが小さい前足で身振り手振り教えてくれる。自分の大陸の魔法の説明だからかとても誇らしげに話している。


「いんやー、最強とも限らねえよ。だってほら、霧って分かったら普通風で飛ばすだろ?」


「た、確かに……」


「魔法に最強なんてねぇよ。ぱるち、俺いつも言ってるだろ~? 魔法は使い方次第で強くも弱くもなる。一つの種が絶対的な力とは限らねえってよ」


「す、すいやせん……。でも、御館様の霧の魔法は――」


「まぁ、とりあえず、だ! かける! 魔法使うには魔力が必要なんだがお前にはまだそれが無いだろ? だから魔力を体の中に馴染ませるぞ」


 ぱるちの言葉を遮る様にヨウはかけるの背中を強めに叩く。


「いたっ!? 何するんだよ!」


「とりあえず、お前の中に眠ってるはずの魔力を引き出すから服を脱げ~」


「え? 魔力って俺にもあるの!?」


「どの生命体にもあるぜ? お前の場合向こうの世界では必要のないものだから眠っていただけであって、必要となれば引き出して使える。安心しろー、俺前に生命体から魔力を引き出すやり方教わったから! ……やった事はねえけど」


「ちょっと最後、ぼそっと聞こえたんですけど!?」


 ヨウはヘラヘラしながらかけるを見つめる。その視線に耐えかね、かけるは覚悟を決めて服を脱ぐ。いつの間にかぱるちが魔法陣のようなものを描いていた。


「何か赤いし、怖いんだけどこの魔法陣……」



 何で描かれていたかは不明だが、真っ赤な液体であたりの草を濡らし、かけるが見ても綺麗な魔法陣と思えるものが、そこに描かれている。ぱるちは支度が終わったのかヨウの側で座って待機してる。


「ちょっとチクッとするぞ~、あと目は閉じとけ。意識だけはちゃんと保てよ? 血の巡りを想像して、どこから力が出てくるか、その力を何処に放つかを想像するんだ」


 ヨウの言葉に耳を傾けながら言われた通り想像をする。背中に多少の違和感を感じるも、それが痛みだと気付かない程には既に集中していた。


(不思議な感覚だな……。血の流れが力の流れに変換されて全身に力がみなぎってる感じ。どこから力が出てくるか? そりゃ、心だろ。何処に放つか? 全身だ、全身を使ってこの力を放つ。……まずは、手のひら。手のひらに力を集中させる)


「お、御館様……!」


「おー、こいつはとんでもない原石を見つけちまったな」


 ヨウとぱるちはかけるの体中から溢れる様な異常な魔力の量に驚く。手のひらの上に大きな魔力の塊を出したかけるを見て、ニヤリと笑う。


「かける殿のこの力を借りれば……」


「俺たちの予想以上の結果が期待できるぜ、ぱるち」


「はい!」


 ヨウとぱるちの会話はかけるには聞こえていない。かなり集中しているのか、かけるの額には汗が吹き出ていて、手のひらの魔力の塊はかなりの大きさまでに膨らんでいた。






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