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初めての異世界は他種族しかいない  作者: 神崎きよ
第一章 異世界に呼ばれた目的
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第2話 かけるの決心



 ヨウが来た辺りからこの街に住んでいるだろう妖怪が目の前の道を通り過ぎて行くのをかけるは目で追っていく。

 昔本で見た様な、一つ目の子供のような妖怪や見た目人間だろと思う女の人など多種多様に行き来しているのを目撃する。見慣れない者を見て恐怖したかけるは、はやく帰りたいと願いを込めてヨウに尋ねる。


「ところでヨウさん。此処の電車に乗れば元の世界に戻れるんですよね?」


 後ろにある駅を親指で指しながらヨウの答えを待つ。


「そうだな、帰れる。だが次に電車が動くのは2000年後だ」


「……は? に、2000ねぇええん!!?」


 返ってきた返答に驚き、思わず立ち上がり思いっきり叫ぶ。駅を通る妖怪達が一斉にこちらを見たので少し恥ずかしくなったのか、かけるは再び座る。

 これは、何かの間違いであって欲しい。そう願いながらヨウを見つめるも、ヨウはやれやれと手を振る。


「まぁ、直ぐに帰る方法も無くは無いかな~?」


「勿体ぶらずに! 教えてください!」


 かけるはその場で土下座をする。


(帰れるなら何としてでも帰らないと! 2000年とか帰る前に俺、死ぬ!)


 必死に懇願するかけるを見てヨウはニヤリと笑みを浮かべながら土下座をしているかけるに手を差し出す。


「この大陸、スペクターを救ったら帰れるぜ」


「…………え?」


「この電車は本来好きな時に動かせる。だが今は生憎戦争中でな~! 魔力がこっちに回せねえ。つまり、この大陸が平和になれば帰れるってこった」


 戦争と聞いたかけるの顔はだんだんと青ざめていく。他にも魔力という漫画やアニメの世界でしか聞かない言葉に反応したりとヨウから見ればまさにかけるの顔は百面相そのものだ。


「ははっ、安心しろ。戦う術は俺が教えてやる。俺は強いぞ~?」


「いや、そういう問題!? こっちは戦争もしたことない一般人で魔法も使えないし何より死にたくないデス」


 かけるにとって後者が最大の理由であった。生きるものなら誰しも簡単には死にたくないだろう。戦争と聞けば、命が掛かるのは当然であってかけるにはまだその覚悟は無い。


「Deathだけに?」


「…………」


「冗談だ」


「まぁ、魔法の扱い方も含め教えてやるから~! それとも断ってここにずっと居るか? 戦争に巻き込まれて死ぬぞ?」


 敢えてヨウがすべった事はスルーし、かけるは生きて帰る為に考える。


(まだ知り合って数分しか経ってないが、ヨウさんは今までの説明で嘘をついてる様には見えない。実際嘘を付いていたとしても、この世界に知り合いは居ないから、確かめる事は出来ない。それに俺一人で電車を動かせるか、と聞かれればNOだ)


 俯いて必死に考えているかけるのその姿を上から見続けるヨウ。かけるが見ていないのをいい事に、OKの返事を貰えると確信しているのか、ヨウは決めポーズの練習をする。


(ヨウさんが何もわからない俺に最低限の知識を与え、手を差し伸べてくれているのなら。大陸を救うなんて大それたこと出来ないにしろ、手助けくらいは出来るんじゃないか? 恐らく、戦争中で人手が足りなくて俺は誘われているんだろうし、期待に添えるか分からないがやれるだけの事は頑張ろう! 死なない程度に)


 かけるの中で答えが決まり、ヨウを見上げる。ヨウは待ってましたという顔で両掌を顔の横で開いてこちらに向けてる変なポーズでかけるを見る。


「(今の少し犬っぽい……)えっと、まず色々とありがとうございます。この世界の事をもっと知らないといけないし、死にたくないし、俺に出来ることなら死にたくないのでやります!」


「お? おー、とりあえず死にたくないのはわかった。安心しろ、慣れるまで俺が絶対お前を死なせねぇさ。さて、決まったならこれからお前が住む家に行くか~」


 かけるは考えた結論から、最もかっこよくセリフを言うつもりが、ただの臆病者みたいなセリフが出てきた事に少し落ち込む。

 だがヨウが絶対死なせないと言ってくれたその言葉に何故か物凄く安心出来た。――それはきっとその時のヨウの顔が出会ってから一番かっこよく決まっていたからだろう。


「あっ、そういえば俺の名前はかける。七種(ななくさ)かけるです」


 出会ってから自己紹介をしていないと気が付いたかけるは立ち上がり、名前を教える。これからお世話になりますという意味で、ヨウに握手を求めるとヨウはそれを快く合わせてくれた。


「これから長い付き合いになるんだし、敬語は使うなよ~、かける~」


「え、あ、はい……うん!」


「よーし、一件落着したしまず昼飯でも食いに行くか! その後に家に行こう、俺は腹減った」


 ヨウは頭の後ろに両手を当て食事処へ向かう。かけるはその後を追うも、ふと疑問が脳裏に走る。


(お昼ご飯? あれ、俺って確か学校帰りに電車に乗ってこっちに来てたはず……だよな。だからもうとっくに夜になってても可笑しく無いはずなのに、そういえばこっちに来てからめちゃくちゃ眩しかった!)


「昼? 夜? 時間差??」


 かけるは俯き考えながら進んでいて、考えている事が口に出てしまっていた。それに気付いたヨウは、足を止める。もちろんヨウの後ろをついていたかけるはヨウの背中にぶつかる。


「いたっ!」


「おいおい、下向きながら進むなよ。迷子になるぞ。恐らくお前が考えている事は俺には分かる。そして俺が答えてやろう。その通りだと!」


 かけるはぽかんとキメ顔をしているヨウを見る。横を通り過ぎる妖怪達も変なものを見る様な目でちらちらとヨウを見ている。見られている本人は、ふふんと耳をピンと立て尻尾をフリフリしてるから自慢げにしているのだろう。


「えっと……見られてるし行きましょうヨウさん。ヨウさんのお陰で解決出来たし、ありがとう」


 自信満々に言った事が当たり、更に喜んだのか前を歩くヨウは両手と尻尾を大きく降っている。まるで褒められた犬のようでかけるは少しほっこりしている。

 そんな一時を過ごしていたらヨウが急に止まる。


(やばい、可愛いって思ってたのバレたかな!?)


「ここが、俺が一番おすすめの食事処! その名も【金枝屋(かなえや)】だ!」


 ヨウが、立派とは言えないがそこそこ綺麗な和風のお店を指さしていた。看板には右から読むのか【屋枝金】と書いてある。少し読むのに時間かかるな、と思っていたかけるは既にお店に入っているヨウを見て慌てて追いかける。


「二名で~」


 店員と思われる見た目は人……だがこの世界にいるから妖怪なのだろう、その妖怪の店員と一言二言話して、座席へ案内される。


「やっぱりこういう所って俺たちの世界とか真似してるんですかね?」


「おー、そうだ。スペクターはほとんどそっちの世界の風景や建物を参考にしてる。だから、他の大陸行ったらお前住んでいけねぇぞ」


「参考にしている時代は大分前っぽいけどな……」


「まあまあ、固いこと言わずに食えよ」


「何があるんですか?まさか食べ物も同じ?」


「お前が知ってるモン頼め~、俺はもう頼んだ」


 メニューを見たかけるは、無難にうどんと漬物を頼んだ。【ぬめりにゃく】やら【死にものぐるい】に目が行くも、とても頼む気にはなれないので後でヨウに聞くだけ聞いてみる事にした。







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