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(4)-悪夢-

本編の第四話です。

一月一七日 百貨店 一四時一五分

「うわ~、人が多いな……」

 一人、百貨店内の人の数に圧倒される私。今日は綾子への誕生日プレゼントを買いに、部活帰りに隣町の百貨店に来た。隣町までは電車で片道三〇分にあり、百貨店はその駅前にある。

「にしては私、浮いているな……」

それもそのはず、周囲を見ると、カップルや女子高生の集団など複数人で来ているが、私は一人で来た。

「気にしたら負けだな……。さっさと買って帰るか。さて、何を買ったら良いかな」

 私は百貨店にある店を巡った。洋服、キーホルダー、パワーストーン、ブレスレット、スイーツなどお洒落な店がある。他にも女子高生なら憧れる宝石やアクセサリーを扱う大人の店もある。途中、歩いている時に周囲から視線が痛いように見えた。

(まぁ、私みたく一人で来るところではないし……。友達と逸れた女子高生と見てくれたら良いな……)

 周囲の視線を気にしながら、何件か店を回り、プレゼント候補としてキーホルダーとエプロンに絞った。

キーホルダーは猫が看板を持っているデザインで看板の部分に文字を彫れる仕様となっている。エプロンは猫が描かれたものとなっている。前者は一〇〇〇円、後者は二五〇〇円する。どちらも形に残るもので、キーホルダーを選べば二個セットなのでお揃いとしてプレゼントできる。エプロンは綾子の趣味が製菓なので、これもまた喜んでもらえそう。加えて、大きさが綾子のサイズに合っている。しかし、エプロンはキーホルダーと比べて値段が高い。

(どうしたらいいだろう......。小遣いの関係もあるからギリギリ一五〇〇円までにしておきたいな......)

 一人、悩んでいた時、遠くから女性の大声が聞こえた。それは候補のエプロンを扱う店の女性スタッフの声だった。

「よろしければ、どうぞ。クジを配布しています―!めくって当たりが出れば、出た色の分だけお安くしまーす! 詳細はこちらのポスターの通りとなります」

 私は店員からクジを受け取り、ポスターを見た。そこには当たりの色で割引額が違うようで、「赤は一〇〇〇円」、「黄色は五〇〇円」、「緑は三百円」という三種類の当たりがある。

(もし、当たりが出れば、あのエプロンを買える……)

 私はこのクジでプレゼントを決めることにし、クジをめくった。クジには「赤の当たり」が書いており、私は嬉しく、飛び跳ねてしまった。周囲から変な人のように注目され、恥ずかしさのあまり冷静になり、私は例のエプロンを買う事にした。

 こんな奇跡が起きるなんて、私の運が良いのか、それとも綾子の運が良いのか分からない。私はすぐに例のエプロンを手に取って、プレゼント用に包装してもらう事とクジのことを店員に伝え、レジで会計を済ませた。

 店員から包装されたエプロンの包みを受け取り、店を出た。スマホを確認すると時間が十六時を過ぎていることに気づいた。

「あぁ、急いで帰らないと」

 家に着くのは十八時前だろうと予想して、私は駅へと足を進めた。その瞬間、私は以前、昇降口で感じた視線を感じ反射的に後ろを振り向いた。しかし、そこに居たのはカップル三組だった。

(さすがにここは無いよね……)

 私は落ち着こうと、ここが安全な場所だと自身に言い聞かせた。しかし、それは無意味になった。

(ねぇ、気づいてよ)

どこからか聞こえる声。その声は私に囁くように話す。

(ねぇ、いつになったら気づいてくれるの。ねぇ、早く……)

 私は冷や汗を掻いてしまい、息を荒げた。

(怖い…怖い…。私を見ているのは誰なの…。私が何をしたと言うの。私に何の恨みがあるの。ねぇ、出てきて……お願いだから)

 私の心はついさっきまでの嬉しさがかき消され、恐怖でいっぱいになった。聞こえる声が幻聴と考えれば、逆に恐怖が増すし、気のせいと考えれば落ち着く。しかし、今の私はかなり動揺しているため落ち着くことは難しい。周囲の人は私の様子が変だと気づき、後ろにいたカップルの女性が私に「あなた、大丈夫?」、と声を掛けてきた。彼女から声を掛けられても、「大丈夫です」としか私は言うことができなかった。見えない視線に怯える自分が恥ずかしく、いつまでこの恐怖に耐えたらいいのか、とこの時思った。

読んでいただき、ありがとうございます。

次回の投稿は6月16日になります。

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