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ラエル

ラエル:『魔力操作』指導の第一人者として、王都からグラムナードに教師として招かれた。


2017/2/4 加筆修正を行いました。

 リエラとアスタールは今、新任教師として採用する事になったラエルの前で小さくなっている。

二人は彼からの質問に、何一つとしてまともに答える事が出来なかったのだから、小さくなるのも当然の事だろう。

そしてそれによって、新たな弟子候補が来るまでの間、2人は彼の教え子になる事が決まったのだ。


「基礎を教えて行くのは、リエラ・アスタールの二人だけでいいの?」

「去年はセリスも一緒に教えていたのだが…。」

「ああ…。彼女か。」


 そう言いながらラエルは、顎に指を当て目を閉じる。

小人族の男性で、身長は130で小柄なリエラよりもさらに小さい。

淡いふわふわの金髪に、サファイアの様な濃い青の瞳は大きめで小人族特有の子供っぽい容姿も相まって、まるで動く等身大の人形の様に可愛らしい。

ただ、その可愛らしい容姿も、老成した皮肉っぽさを感じさせる表情で魅力が半減している様にも見えた。魔力が多いと言う小人族の彼は、この見た目で既に100歳を超えているらしく、リエラには詐欺だとしか思えなかった。


「彼女には、別途時間を作って貰うしかないね。確か、工房での仕事は家政と調薬だったかな?」


 チラリとアスタールに視線を走らせた彼は、肯定を確認するとリエラに視線を移した。


「暫くの間、調薬は君だけでやってくれれば無理なく時間を作れるね。」


 そう言って微笑む。

リエラは思わず出そうになった抗議の声を呑みこむ。

顔は間違いなく笑顔を形作っているのに、その目は一切笑っていなかったのだ。


(この先生、見た目はにゃんこみたいなのに怖い…。)


 それがリエラの感想だった。




 リエラには苦手意識が生じたものの、ラエルは『魔力操作』に関しての研究分野の第一人者だというだけの事はあり、魔力の扱いを教える事に掛けてはなかなかに優秀で、その教えを受ける事により、より滑らかに無駄なく魔力を操る事が出来るようになって行った。


「そもそも。このグラムナードみたいに、誰も彼もが普通に魔法を使っているという環境が稀有なものなんだ。」

「ああ、そうですよねー。リエラもここに来た時にビックリしました。」

「…その一人称。何度も言っているけど早く止めた方がいいよ。子供っぽすぎる。」

「ああ…。直そうと思って入るんですが中々…。」


 ラエルに一人称について、また指摘されリエラは眉尻を下げた。

この事に関しては何度も言われており、直そうと本人なりに努力はしているもののなかなか成果が出ていなかったのだ。


「折角の能力が低く見られるのは損だ。」

「はい…。」


 きつめのその言葉が、本当の意味で自分を心配しての事だと分かる為、何とかその気持ちに応えたいと思う物の、成果が出ていない事が悔しくてリエラはこっそりと唇を噛んだ。


「そんな顔をする必要はないよ。」


 そう言いながら、リエラの頭に手を載せた手はひどく優しくて、彼女の目から思わずポロリと涙がこぼれた。

その肩を抱き寄せて優しく宥めるその姿を見ながら、アスタールは頬を緩める。


「まるで、仲の良い祖父と孫の様だな。」

「実際、それ以上の年の差があるからね。」


 何でもない事の様に言いながら、ラエルのその頬は微かに朱に染まっていた。


「それは置いておくとして、グラムナードの環境が特殊すぎると言うのは確かだな。」

「…元々、グラムナードがなければ発達しない技術だったかもしれないからね。」


 ラエルの言葉にアスタールはチラリと視線を走らせる。


「ふふ…。そんな怖い顔をしなくても、境界線は弁えているつもりだよ。」


 そんなアスタールを見ながら、ラエルは楽しげに眼を細めるとリエラに向かってそっと囁くように言葉を紡ぐ。


「リエラ、これだけは覚えておいで?

魔法、と言うのはまだ新参の技術でね。

イニティ王国は、ここに追いつく為に必死に研究している、と言うのが現状なんだよ。」


 ラエルのその言葉を捉えたアスタールは抗議する様に耳を揺らしたが、それは見ないふりをされた。

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