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あなたはどのきょーかがすき?

あなたはどのきょーかがすき? 特別編 ~社会代表、名前の由来~

作者: ひなた

 ☆スター様から頂きました、リクエスト小説になります。

 拙作『あなたはどのきょーかがすき?』を読んで下さっていた皆様に、そしてリクエストをして下さった、たった一人のあなたのために、この話を送ります。

 どうしようもないような話ですが、久しぶりなこの雰囲気を、楽しんで頂けたなら幸いです。

「どもどもども、墾田永年私財法こと、松山有紗よ。あたしがどうしてこの名前を選んだのか、気になりやしないかしら?」


 最後の勝者までが決まり、もう全員で揃うことはないと思われていた。

 しかし九人が、それを望んだ。監視のもとではなく、ライバルとしてではなく、友達として九人で集まることを。


 最終結果が発表されたあの日から、十年が過ぎ去った。

 それぞれが会うことはあっても、九人が揃うのはそれ以来であった。


 二十歳を迎えてもなお、あの頃と変わらないような子供っぽさで、有紗は八人の前に立った。


 名前の由来。

 そこまで気にするようなことではなかったが、確かにどうしてそれを選んだのか、不思議な名前の人は数多くいた。

 墾田永年私財法というのも、その一人だろう。


「人名っぽさもないし、呼びやすくもないし、迷惑な名前だよね。むしろ逆に、呼びづらくするためとかじゃないの?」


 最も興味は示しているようだが、少し馬鹿にするように言うのは智也である。


「あたしはそんな性格悪くないよ。それに、長いのが迷惑だってんなら、あたしだけじゃなくて、もう一人いるじゃない」


 智也の言葉に、有紗が頬を膨らませそう言う。


 名前が長いのは明らかに二人だったので、もう一人の少女の方に視線が集まる。

 過酸化水素水こと雨宮優唯である。


 急に注目され彼女は困ったように微笑み、その微笑みの扱いに困り智也も困ったような表情を浮かべた。


「雨宮さんはほら、優しいから、そんなことしないに決まっているでしょ?」


「優しい、ですか……。ありがとうございます。長い名前、迷惑でしたかね」


「迷惑なんかじゃないから、大丈夫だよ」


 智也の対応が優しかったのは、彼が人見知りだからである。

 そこまで親しく接していなかった優唯とは、解散後に会うことはなかった。久しぶりだからこそ、毎日会っていた頃よりも、更に接しづらくなっていたのであった。


 しかし自分に対する言い方と、優唯に対する言い方の違いに、有紗はちょっとした嫉妬を覚えた。


 気を遣わずに、楽しそうに話している有紗の方が、智也にとってはずっと特別なのに。

 それを知っていても、珍しく智也が自分以外と会話をしている姿には、嫉妬せずにいられないのであった。


「まあとにかく! あたしは何も、嫌がらせであの名前を選んだんじゃないわ」


 嫉妬を振り払い、有紗は話題を戻す。


「まずあたしは、あたしが最終的に勝利することを知っていた。でもその勝利が、すぐに消えてしまうものだったら嫌でしょう?」


 いきなりで、ツッコミどころ満載なセリフである。


 勝利への想いを込めていたとかではなく、勝利することを前提に考えた結果での名前だったらしい。

 その絶対的な自信がなんだか有紗らしくて、智也はクスッと笑みを零してしまった。


 話の腰を折らない為に、慌てて口を手で抑えるけれど、もう手遅れであった。


「彼はばかにして笑ったのではありません。あなたならば、それくらい知っているでしょう? お話を続けて下さい」


 有紗がまた智也を怒り出そうとするので、黙って話を聞いていた徹が、いい加減にしろと優しく諭す。


 そして有紗に話を続けさせた。


 この話を最も楽しんでいるのは、きっと智也だろう。

 彼からしてみれば、有紗のことを知れるのなら、どんなことでも嬉しいのだから。


 しかし徹も、智也の次に彼女の話に興味を示している。


 意外ではあろうけれど、彼は有紗が楽しそうに話している姿を、楽しく見ていたのだ。

 有紗のことを知りたいとかではなく、彼は人の話を聞くのが単純に好きなだけではあるが。


「墾田永年私財法が使われる前までは、皆に口分田が与えられていたの。でもそれってさ、死んだら返さなくちゃならないものなのよ」


 徹に言われては何を言う訳にも行かず、有紗は話を続けた。


「だけど称号を、あたしがいなくなってからも残して欲しかった。もし今後また大会が開かれたとして、第三回くらいまでは、あたしの名前を残しておいて欲しいじゃない。そんなときにあたしは、墾田永年私財法に出会ったのよ」


 彼女の話はそれで終わりのようだった。


 名前の由来を聞かされても、なぜそうなったのかは、誰にも理解しがたかったことだろう。

 出会ったと言われても、困るだけである。


「思い付き?」


 沈黙が訪れてしまった部屋の中で、彩音は容赦なく有紗に問い掛けた。


 考えた末での結果がその名前であるかのように言っていたので、そこまではっきり思い付きと言われてしまえば、有紗だって傷付くというものだ。


「そうよ! 思い付きよ思い付き。名前を何にしようかって考えていたときに、ただその名前が目に入ったってだけ。意味がある風に話そうと思ってたのに、台無しじゃないのよ」


 ただ、バレてしまっては仕方がない。とでも言うように、彼女は正直に白状した。


「もう良いわ。これがあたしの、墾田永年私財法という名前の由来よ」

 前書きでも言いましたとおり、リクエストがありましたので、有紗ちゃんをメインに書かせて頂きました。

 私は他の人のメイン回を見たかった。私の推しキャラの出番がなかったんだけど! という方は、絶対執筆宣言の方に、リクエストボックスを用意してありますので、そちらまで宜しくお願い致します。

 それではまた、どこかで会える日まで。

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