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都での滞在ーその26-

続きです^-^

「誰かと思えば、貧乏貴族のアルギュロス男爵ではないか。窮乏のせいで子息の躾も出来ぬようだな」


 醜く太った体を揺らしながら、ゴテゴテに着飾った服を着て、ジャラジャラと装飾品をはめ、威張り散らす様に歩んできた。控えの間まで許される帯剣も宝石の嵌った様な派手な物を、目立つように腰に下げている。その男を見つつ、このような者もこの国の貴族なのか? 頭が痛くなりそうですね。などと考えながら見ていると、父上が、


「侯爵様、私の様な下々の者に何か御用でしょうか?」


 目の前の男にそう声を掛けると、


「いや、なに、不敬にもほどがある声がさっきから聞こえてきたのでな。幼いとはいえ貴族なら立場を弁えさせんと、と思ってな。それと、そこに居るのは、儂が贔屓にしてやっている魔道具屋のエルガリオではないか、なぜこんなとこに居る。庶民はさっさと戻らぬか」


 怒鳴る様にそう告げて来る男に、エルガリオが恐縮しつつ青ざめて、戻ろうとしたので、


「我が貴族の集まる席に招待しました。なんでも家宝について考え違いをしているうえ、金に任せて目利きも出来ぬ貴族が品物を買い占めるので困っているとの事だったので、陛下にでも相談しようかと・・・・」


 我がそう話していると、途中で真っ赤になりつつ、剣に手を掛け、我の話を遮る様に、


「目利きが出来ぬと申したな、ならばその身で確かめてみるがよい」


 騒ぎに他の貴族が集まってきている中、子供に向け剣を振り下ろす。しかし周りの貴族も止める気配すらなく、にやにやしながら眺めていた。この国は王が良すぎる為、下が腐っておるな。そう思いつつ、腰の後ろに差したナイフを抜き、振り下ろされた剣を受け止めると、先日と同様、音もせずに、剣先と持ち手が二つに分かれるのだった。それを見た男は、怒りに真っ赤にしていた顔を青ざめさせ、


「な、なんなのだ、そのナイフは。この剣はこれでも切れ味を強化してある魔剣の類なのだぞ」


 唖然としつつそう告げてきたので、


「王の控えの間で、子供相手に魔剣を抜いたうえ、相手の持つナイフがどんなものかすら判らぬとは、やはり目利きは出来ないようですね」


 我がそう呟いていると、集まっていた貴族たちの中の何人かが、侯爵を囲むようにして、こちらに向け、


「おい、侯爵様の剣を駄目にしたのだ、詫びに早くそれをこっちに寄越さぬか」


 よく見ると、街で見た馬鹿な貴族の集まりがこちらに来てそう囃し立てているのだった。そんな様子に呆れつつ、


「父上、このような者達は相手をする価値もありません。我が家の素晴らしい家宝を今日は持参したというのに、価値の分かる見せる相手すらいないとは、拍子抜けですね」


 父上に向け、そう話し掛けると、何の事か判っていないながらも、我の言葉に一応の相槌を打ってくれるのだった。すべての貴族が集まる日に、一番下の男爵家よりそれだけの事を言われ、いままでさんざん威張っていたそのグループの貴族たちは、対面を保とうと躍起になりこちらを降そうとするが、そこに、


「国王の入場です。貴族たちは全て謁見の間に入り、頭を下げて控える様に」


 王の側近の一人であり近衛の隊長でもあるイアンが入口より、良く響く声でそう告げてきた。なので、目の前の貴族たちは渋々、


「後で、覚えておれよ」


 こちらに向け、そう言い残し、中へと入って行くのだった。そんな様子に、少しほっとした父上が、


「何とか間一髪助かりましたね。しかし、セオス。あんまり相手を挑発するんじゃない。怪我でもしたらどうするんだ」


 心配してそう言ってきたので、


「申し訳ありません。しかしどの貴族がどんな方たちなのか、初めてなので知っておこうかと思いまして」


 我のその言葉に呆れつつ、


「普通は挑発ではなく、話をして人柄とは見る物だと思っていたのだが、私の息子は違う様だな」


 頭を抑えつつ、大げさにそう言ってくるのだった。なので、


「いえ、時間があればそうしていたかもしれませんが、儀式の前に、この国の恥部だけでも知っておきたくて」


 悪びれずそう答えると、


「まあ、この国の全ての貴族がああいう方達ばかりという訳ではないのだが、王が平和に民を長く治めていると、中にはああなって来る者が出て来るのも事実ではあるな」


 嘆かわしそうに、こちらに向けそう言ってくる父上に、


「なので、掃除でもしようかと、確認をしていましたのです父上。後は王へと報告すれば綺麗にしてくれると思いますので、大丈夫ですよ」


 我がそう言うと、またも要領を得ないという感じで、


「王様と何か約束でもしているのか?」


 怪訝そうな顔でそう訊ねてくる父上に、


「もうすぐ判りますよ、父上。なので、さあ我々も入りましょう」


 人の少なくなった控えの間より、謁見の間へと歩みながら、笑顔で父上にそう告げるのだった。

読んで下さりありがとうですにゃ^-^ノ

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