始まりの神、両親に出会う
神界から別の星へ、期待を込めて転生する。
神々の見送る中、笑顔で挨拶する。
「いってくるので、しばらく宜しく。」
そう言い残し、光と共に去るのでした。
「おぎゃ~~」
よぉ~~し!
母体への負担の大きさから心配していたが、無事うまれ出ることが出来、安心した。周りの気配を窺うと、何人かこちらを見ているようだ。
これから、待ちに待った重大イベントの始まりに心が踊る。
やっと我にも両親というものができ、自分という者を表す名前をもらえるのだな。心の中でそうつぶやくと、こちらを見ている人たちの顔をやっと開くことができた瞳でみつめた。それと同時に周囲の様子も見てみる。一応、自分の両親になるに相応しいと思う人間を、選びに選んだのだ、顔は覚えている。その二人の顔を見つけて安堵したが、どうも自分が生まれると思っていた場所と、いまいる場所が違うことに違和感をおぼえた。
両親は思っていた通り、誠実でやさしそうな人たちだが、貧乏な農民のはずだったが? 此処は何処なのだろう?そう思いつつ目線のみで辺りを見回してみる。
その場所は貧乏な農村の家には見えず、どこかの立派な屋敷の部屋のように思えた。始めは母の体調が思わしくなかった為、病院のようなところに来たのかもとも思ったが、母本人がやさしく見つめ、話しかけてくる様子から、そのような具合の悪さなど感じず、尚且つ周りの家具などから、普通の部屋だと認識できた。
「はじめまして、わたしの可愛い赤ちゃん、ママですよ~~」
「元気に生まれてきて来てくれてなによりだ、パパだよ」
優しそうな笑顔でそう話しかけてくれる両親を、今出来る精一杯の笑顔で見つめ返し、疑問はボチボチ理解できればいいかな、と一心地つくことにした。そうして両親との初顔合わせを行っていると、
「旦那様、奥様、そろそろ赤ちゃんは寝せてあげないと、無理をさせてしまいますよ」
生れてから今の今まで傍から離れようとしない両親に、そうメイド服を着た女性が注意を促していた。
「そういえばそうね、ありがとうエリーナさん」
「そうだね、ありがとうエリーナ」
両親が罰の悪そうに照れながらも、そう答えると、
「いえ、出過ぎたことを」
一言そのように答え、一歩後ろに下がり控えた。
「ゆっくりいっぱい寝て、すくすく育ってね」
名残惜しそうにしつつも最後にそう言って、母が自分をベビーベットに運んで寝せると、
「さあ、静かに寝せてあげよう」
父も皆を促し部屋を出て行った。遠ざかる足音を確認しつつ、う~ん・・まだ我の・・自分の名前を聞かせてもらっていないのだが? そう一人になった部屋で物思いに耽りながら、まずは自分の能力の確認をすることにした。
だいぶん抑えた筈なのだが、こっちの世界には、どれ位の力を持ってこれたのか? 試してみるか?
元の神界では、それこそ全知全能であったがため、星々を司る神々をも作り出し、数多の世界を創造し収めさせていたのだが、自分が名を与えることはできても、生み出した神々は恐れ多いと、自分に呼び名をつけることはしなかったし、できなかった。そうして色々な世界を眺めつつ悠久といえる時を過ごしてきたのだが、ある時、一人の女神が納める世界に自分たちの姿に似た生き物が生れ、文化を築いた。その世界では、男女が子をなし、名をつけ、育て次の時代に繋げていくという短命であるが故の神たちとは違う世界を自分たちで作ろうとし、女神はそれを良しとし見守ることにし、いらぬ手出しをひかえていた。
その世界の人種族を見たとき、思いついたのが・・うむ、不完全な人種族として、一人の人生の分、転生してその星で過ごせば、名を付けてもらえ色々な事が経験出来るな。そう思い立ち、計画をたてたのだが・・・・このまま転生したら、この星は、力に耐えられず滅茶苦茶になるかも知れぬな? という結論に達し、ある程度、力を弱めて生活に支障が出ることなく過ごせるよう考慮し、転生することにした。それこそ、くしゃみをしたら、竜巻が起きるような状態では、普通に生活出来ないからだ。しかし、全く能力なしというのも、思ったこと、やりたい事が出来たとき実行する力がない、というのも困るので、ある程度は必要と使える力の加減を考えながらも計画を実行に移したのだった。
かなり思い通りの力が出せるみたいだな。そう小さな赤ちゃんの手に神力を籠めると、手先が光を帯び、力が集まるのを感じ、緩めると、神力が抜け光がちってしまうのを確認できた。これなら両親を助けながらこの世界で生活するのは余裕で出来そうだな。そのように考えつつ能力の確認作業をおえると、転生一日目を振り返り、色々な疑問を残しつつ眠りにつき、初日を終えるのでした。
頑張って、面白いと思える作品を書き続けられたらと思いますので、応援していただけたら、うれしく思います。