セオス、お出かけをする、-教会、前編ー
えと、またまとめきれず続きます、よろしくお願いします。
馬車で街の風景を見ながらのんびり進む。うちが用意した馬車はそれ程豪華な物ではなく、人々の行き交う通りを進んでても、領主と気付く者もいない。御者も何故か万能メイドのエリーナがしてくれていて、文官のエルネストと二人並んで座っている。で、馬車の中では農民時代の普段着<貴族の服はいまだに着慣れないそうだ>を着たアルギュロス家の面々が、
「わたし、魔法使えるようになれるかなぁ~?」
「アイシャは良い子なので、きっと女神様が聞き届けてくれると思うわよ」
「そうとも、きっと私やママよりも才能があると思うぞ」
魔法を使えるという期待に、胸を膨らませた姉上に、父上と母上が優しく話しかけながら教会への道程を進んでいく。
姉上も学園に通いだし、庶民もいるにはいるが、やはり貴族や商人の子など裕福な子が多いのであろう、友人達は既に洗礼を受けているものも多く、元農民という事もあり、洗礼を受けていなかったことで、口には出さないが大分肩身の狭い思いをしていたのだろう、かなり嬉しそうなのが顔に出ていた。その様子を見ていた我は、うむうむ、アウラニースが居なかったなら、代わりに我が契約をしておくので心配無用なのだ姉上。などと考えながら、往く先に見える大きな建物に目を向ける。そこには周りに比べ、二つの大きな建物が建っていた。一つは入り口が、大人の胸位までの左右の押戸が付いた、盾と剣を模した看板を下げた物、もう一つが、最上階に鐘を吊るしその上の屋根に十字を飾った、白い豪華な物だった。
まぁ、精霊に調べてもらう程の事でもなく、これが冒険者ギルドなるものと、教会なのだろう。我が知る頃の教会はまだまだ小さきものだったのだが。と、昔の事を思い出しながらも、目前に迫ってきた建物にもう一度目を向けた。
目前の景色に、うむ、そろそろ着きそうだな。そう考えるのと同時に、エルネストが、
「皆様、到着いたしました。私とエリーナは裏の駐馬する場所に馬車を回して預けてきますので、先に中でお待ちください」
待たせぬようにと声を掛け、いったん入り口で馬車を止め皆を下ろした。
「有難う、エルネスト。エリーナも」
二人に対する父上のお礼の言葉に、
「いいえ、これもまた仕事ですので、お気遣いなく。では」
「旦那様、奥様、すぐに預けて戻ってきます」
それぞれが一言ずつ言葉を返し去っていった。
「二人もああ言っている事だし、中で待たせてもらおうか」
残った家族全員に向けての父上の言葉に、
「そうですね、甘えさせてもらいましょう、この子もいる事ですし」
大事そうに我を胸に抱いた母上が返すと、姉上も、
「さぁ、はやく入りましょう」
すでに扉に手を掛け開きつつ、中へと入って行くのだった。
教会の中に入るとそこは、建物の中にもかかわらず、高い位置にある窓により光が降り注ぎ、厳かな雰囲気を醸し出していた。横に三列ずつの長椅子が十列ほど等間隔で後ろにのび、最前列の眼前には大きな女神像が鎮座していた。その像を見て、うむ~~、そこそこ似てはいるが、アウラニースが見たら怒りそうではあるな。と笑いを堪えながら様子をうかがっていると、
「今日はどんなご用件でしょう。礼拝でしょうか?」
我が家族に対し聞いてくる一人の僧侶<冒険者の手伝いが出来る神官>がいたのだった。で、父上が、
「本日は洗礼を受けさせて戴こうかと、参りました」
今日の予定を答えると、その僧侶は、笑顔を引きつらせながら、
「どちらの方が受けられるのですか?」
聞いた言葉に対し、またも聞き返してくるので、
「いえ、家族全員で受けようと思うのですが」
それでも丁寧に父が受け答えをし、返事をすると、
「失礼ですが、あなた方の様な方が全員で洗礼となると、お布施を払えないと思うのですが」
家族全員の姿を見て、今度は鼻で笑うかのような失笑を顔に浮かべたまま、皮肉たっぷりで言い放ってきた。父上はそれでも優しくその者に、
「あの~、お幾ら位、お布施が必要なのでしょうか?」
それ程高い金額を払うべきなのかと思い、尋ねると、
「どうせ払えない者に教えてもしょうがないだろうに」
僧侶は聞く耳など持たず、取り合わずに追い返そうとまでする始末。
この目の前の無礼者は本当に神官僧なのか? 我はこのような者に加護を与えるのを許したつもりはないぞ。目の前の僧侶に対してそう思い、この者の洗礼に関する力を身体から抜き取ってやった。そして、光の精霊を呼び出すと、
「神様~何様でしょう?」
我の呼ぶ声に、すぐに駆け付け聞いてくる精霊に、
「前の女神像に光を上から降らせてくれ」
要件を精霊だけにしか聞こえない様にして声を送ると、
「わかりました~~」
元気よく答え、すぐに実行する。その光景は見る者に絶大な印象を与え、周りが騒然となり、その喧騒により奥の部屋より一人の巫女が現れた。
「何事ですか?」
凛とした響きの声で紡がれたその問いに、慌てた僧侶は、
「これは、エレオノーラ様。それが、・・・・判りません、この者たちと話をしていたところ、突然女神像が光りだしまして」
釈然としない答えに、エレオノーラと呼ばれた巫女は、
「こちらの方々は?」
我ら家族の様子をみつつ、話を聞き、その僧侶は、
「農民みたいなのですが、洗礼を全員に受けさせろ。などと言ってきたのでお帰り願おうかと・・・・」
失礼に当たる言葉を言いかけたところで、入り口から話を聞きながら来ていた文官のエルネストとメイドのエリーナが入ってきて、
「領主様お待たせいたしました、それとエレオノーラ様、お城以来ですね、お久しぶりで御座います」
僧侶の言葉を遮る様に皆の会話に入ってきた、それを聞きつけた僧侶が、
「どちらに領主様が?」
周りを見渡しつつ聞き返すも、
「先ほどから話されていた、目の前にいらっしゃる方が、カイン・アルギュロス領主様です」
呆然とする僧侶に対し、平然とエルネストは答え、
「この教会では駄目だと言われるのなら、多少は遠いのですが、首都の方の教会に伺わせてもらうことにします。まぁエレオノーラ様がこちらに来ていらっしゃるので、あなたに頼まずともこちらの場所でもかまわないとおっしゃるでしょうがね」
失礼な僧侶を睨みながら続けて言い放つと、慌てた僧侶は、
「いえ、そのような事は、この場でさせていただきます」
失敗を取り戻そうとすぐに儀式に入ろうとしたが、
「何故に、祈りが繋がらない、何故に・・・・」
繋がらぬ祈りに、頭を抱えながら地に膝をつくと、様子を見ていたエレオノーラが、
「民を救い導く事を、役目とする我々が慢心して、お布施を先に気にするなど、貴方はもう一度修行をやり直すべきですね」
諭す様に冷たくそう言い放つのだった。その言葉を聞き、まぁ、修行してもあの心根のままなら、我が力を戻すことはもうないがな。と、心の中で呟いていると、エレオノーラという巫女は、
「申し訳ありませんでした、不心得者の代わりに私が儀式を行いますので、平にご容赦をお願いします」
頭を下げつつそう言ってきたので、父上の人の好い、
「はい、無事に受けられるのであれば問題ありませんよ」
優しく返すその言葉ですべて無事解決となったのである。
続きますので、よろしくお願いします。




