青い屋根と銀の鍵
町はずれにひっそりとたたずむ、まるでおとぎ話から出てきたような青い屋根の洋館。
そこでは先々代の当主から平日の15時から18時の間だけ、綺麗な庭に面した大きな出窓とキッチンがついた部屋でカフェ「ブーゲンビリア」をやっているの。
今の当主桂京一郎は料理どころか普通に生活するのも危ういような人だから、別の人がシェフをやってるわ。
シェフの名前は柊菖蒲。
彼女は世界的なお菓子の大会で弱冠20歳にして日本人として初めて最優秀賞を取った天才パティシエール。
彼女の料理が食べれるのは世界中でここだけなのよ。凄くない?
たくさんの有名店から仕事のオファーが来ていたのに、全部蹴ってここに来てくれた。
とてもありがたいわ。でも、ここに来てくれた理由はわからないの。
いつも、はぐらかされちゃって教えてくれない。
先代が亡くなって、新しい料理人を探すのに凄く苦労したから居てくれるだけでうれしいんだけどね。
そういえば、これだけ有名な彼女が料理人だったら連日凄いたくさんの人が来そうでしょ。
でも、そんなことないわ。ここは、誰かの紹介状がないと入れないの。
入れたとしても、ここの誰かに認めてもらわないと自分のは持てないから、ややこしいのよ。
面倒なシステムよね。でも、昔からそうらしいし、お客さんがいっぱい来るとアヤが疲れてぐれちゃうから、これはこれでいいのかも。
一番簡単な紹介状の入手の仕方は、京一郎叔父さんの絵を買うことかしら。
まあ、どこで売っているのか私は知らないのだけど。
紹介状さえ有ればどんな人でも店に来ることができるわ。子供でも悪い人でもね。
ブーゲンビリアは18時までしかやっていないのだけれど金曜日だけは、実は22時まで営業しているのよ。
特別なお客さん達の為にね。例えば、どこかの王国の姫君だったり、見るからに怪しそうな魔法使いだったり、偉そうな騎士だったりするわ。
まるで、おとぎ話の世界の住人みたいよね。信じなくてもいいけれど、本当のことなのよ。
そういえば、私のことを何も説明してなかったわね。
私の名前は桂雪祢。
現当主、桂京一郎の弟桂双葉の娘よ。今年で17歳になるの。
現役の高校生で、キリスト系の女子高に通っているわ。
ブーゲンビリア唯一のウェイトレスで、数字に強くない京一郎叔父さんに代わって会計も担当しているの。
そのかわり、ここに住めるようにしてもらってるからギブアンドテイクよ。
もうそろそろ開店の時間だから、行かないと。それじゃあ、ゆっくりしていってね。
あら、あなた紹介状もってないの?
しょうがないわね。特別に私からあげるから、大事にしてよね。
その銀の鍵があれば扉が開くから、営業時間中ならいつでも来ていいわよ。
無くさないでね。
Have a nice tea time!
頑張って続けていきたいと思います。
よろしくお願いします。