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白木殿登場なのじゃ!

 

 僕の後ろでギャーギャー騒いでいた二人は教室に着く頃にはお互いすっかり口をきかなくなっていました。


「儂はどうもあの者が苦手なようじゃ」


 サヤ姫ちゃんは席に着くと、珍しく不機嫌な様子で言いました。

 あの者とは朋花ちゃんのことを言っているのでしょう、そして隣の僕になぜ苦手なのかを聞いてほしいがため、独り言みたいに言っているサヤ姫ちゃんを僕は分かっていながらあえて授業の準備で忙しいふりをしながら聞き流しました。


 

「儂はどうも苦手なんじゃが……」

「……」


「苦手じゃ……」

「……」


白木(しらき)殿が苦手なんじゃ……」

「……ええ!? 白木くんのこと言ってたの!?」


 僕の予想に反した人だったので僕は思わず反応してしまいました。今のは朋花ちゃんが苦手という流れでは!?

 ってか、白木くんとの絡みなんて一回もないから、なんで名前が出てきたのかとても気になります。


 ちなみに、白木くんはクラスが一緒でとても地味な子です。サヤ姫ちゃんとはまさに正反対。それに日直が掃除をサボったら一人で黙々と代わりをしてくれるとても心優しい人なのです。


 ……なんで僕が白木くんの解説をしてるのでしょう。


「なんで白木くんが苦手なの?」


 そもそもなんで急に白木くん苦手宣言をしたのでしょう?


「暗い」

「……他には?」

「地味」

「…………他には?」

「きも……気分が悪い」

「よし、白木くんに謝れ。まだ来てないけど何の絡みもないのに酷すぎるよ!」


 もし白木くんが教室にいたら、絶対今のでかなりの精神的ダメージを受けるはずです。

 僕だったら泣いて帰ります。



「苦手と言えば私も白木くんが苦手よ」


 またもや白木くんを苦手という人物が現れたと思ったら、今度は朋花ちゃんでした。

 この二人は白木くんとはおそらく話したこともないのに、なぜ急に白木くんが苦手と言い出したのかさっぱり分かりません。

 でもとりあえず僕は朋花ちゃんに理由を聞いてみることにします。


「私は基本、あなた以外の男は嫌いよ」


「僕が聞く前に理由を言うの!? それにそれならわざわざ白木くんの名前を出さなくてもいいよね!?」


 それに僕以外の男は嫌いってさらりと言われると、他の男子に聞かれたら僕は絶対、批難を浴びるんだけど……。

 もう何人か僕に視線を送っているけど、気づいていないふりをしました。


 

「なんじゃ、朋花も白木殿が苦手なのか?」

「ええ。サヤさんとは気が合いそうになかったけど、そうでもなかったみたい。さっきは疑ってごめんなさい」

「うむ。儂も先ほどの無礼を詫びよう」 


 サヤ姫ちゃんと朋花ちゃんは互いにガッチリと友情の握手をしました。

 ただ、白木くんには土下座で謝ってほしいと、僕は握手をする二人を見て思いました。


「あ、そうそう。私は今日からあなたの後ろに座るわ。よろしく」


「ええ!? ちょっと待ってよ! 僕の後ろの席は……」

 

 チラッと後ろを見ました。

 さっきまでいなかった白木くんがいつの間にか登校していて、ちょこんと僕の後ろの席に座っていました。

 いつから居たとは、もうあえて触れません。しかし、朋花ちゃんが言う僕の後ろの席とは現在、白木くんの席でもあるのです。

 

「白木くん、だいたい事情が分かっていると思うけど。あなたと私は今からチェンジするから」


 白木くんは現状を把握していないのか、きょとんとした顔で朋花ちゃんを見上げています。

 ってか、僕は朋花ちゃんが後ろに来ることはあまり良い展開ではありません。急に朋花ちゃんが席替えをしかも僕の後ろにしたいと言い出すということは、いつでも僕のことを視界に入れておきたいとか、そういうことを考えているのにちがいありません。

 

 下手をすれば何かされる可能性も十分にあります。

 ここは何とか白木くんに自分の席を死守してもらいたいです。

 ……いや、白木くんだけでは少し心配なので僕も参戦することにしましょう。


「ほら、朋花ちゃん。白木くんも困っているから」


 実際、白木くんは何のことか理解していないと思うけど……。


「白木くん。三秒数えるからここから退散しなさい。もし三秒経ってもここに残っていたら二度と学校に来れないような噂を流すわ」


「朋花ちゃん! もうそれ脅迫してるよね!?」


 と、僕が突っ込んでる間に白木くんは速攻で席から退散し、ポカンと空いた席に朋花ちゃんは満足げに着席しました。

 結局、白木くんは自分の席を奪われ、朋花ちゃんが座っていた席に着いてこころなしか、残念そうにしていました。


 

「はーい。ホームルーム始めまーす。あら? 白木くんいつからそこの席になったのかなー?」


 授業が始まるチャイムと同時に、久しぶりに登場した恋先生が空気の読めない質問をしました。もちろん、なぜ急に席を替わることになったのな本人も分かっていないのに、答えられるはずがありません。


「あ、あれー? もしかして聞いちゃ行けなかった?」


 しばらく微妙な空気が流れ、久しぶりの登場を棒に振ってしまった恋先生。今回起きてしまったことを説明する気をなくした僕は、後ろから注がれる視線に意識しつつ、恋先生がこの空気をどう変えるか見物することにしました。

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