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三人で登校なのじゃ!

「主よ! もう朝じゃ! とっとと起きるのじゃ!」



 スヤスヤ寝ていた僕はサヤ姫ちゃんの飛び込みによって起きました。一体どんな飛び込みをしたのか、サヤ姫ちゃんの膝が僕の溝内に食い込み、僕は朝から悶絶しました。


「ゴホっ、サヤ姫ちゃん……もう少し普通の起こし方できないの……?」


 これまでサヤ姫ちゃんは僕の顔に冷水をかけたり、寝ている僕の口に無理矢理朝ごはんを突っ込んだり、ラ⭕ダーキックを顔面にやってみたりなどと、起こし方がいつも過激すぎます。

 朝からいらないダメージを負うことになってしまうのです。


 サヤ姫ちゃんは僕のお腹からピョンと飛び下り、


「主が一度呼んでも起きんなら、儂はどんな手段を使ってでも主を起こしてみせる!」


 と、朝から妙にテンションが高いサヤ姫ちゃん。まあ、いつものことなんですけどね……。

 つか、一度しか呼んでないのかよ。そりゃ起きるわけがない。


「早く支度して学校へ行くぞ」


 そう言い残し、サヤ姫ちゃんは部屋から出ていき、僕もまだ痛む体を起こして学校へ行く支度をします。カーテンを開けると眩しい日光が射し込み、空は雲ひとつない青空でした。


 朝から無駄なダメージを負ったけど、それを忘れるぐらいとてもいい天気でした。



  

「サヤ姫ちゃん!なんで牛乳とパンをミキサーにかけるの!?」


 しかし、もはやいい天気だったていうことを忘れるぐらい、僕はリビングのテーブルに置かれたグロテスクな物を見てブルーになりました。


「何をそんなに怒っておる? 食事も早く終わり、同時に食べられるから一石二鳥ではないか!」

 


 そう言い張るサヤ姫ちゃんは至って普通にパンを食べ、コップに入れた牛乳を用意してあるのを見て、同じことをしてやろうかと思いましたが、それをするとまた余計なダメージを負うことになるので、渋々用意された朝食を口に入れました。




「おえ、まだあの食感が口に残っているよ……」


 思い出すたび吐き気が襲ってくるのを我慢して歩く通学路、青ざめた僕の隣ではサヤ姫ちゃんは上機嫌に歩いています。


「どうじゃ、儂の素晴らしい発想でこうしてのんびりと学校へ行くことができるであろ?」


「いや、のんびり登校するより僕は朝ごはんをのんびり食べる方がいいよ」


 あんなグロテスクな物を食べさせられるより、走って登校する方が遥かにいいと思います。

 

「なら、明日は他の物を混ぜてみようかの……」


「なんでそうなるの!? 僕は普通の朝ごはんでいいから!」


 つか、なんでサヤ姫ちゃんの分は普通なんでしょう……と考えていると、


「主よ。さっきから儂らを付けて来るものがおるぞ……」


「え?」


 急にサヤ姫ちゃんがそんなことを言い出したので僕は振り向きました。後ろには普通に歩く人や、犬の散歩をしている人だけで特に怪しい動きをしている人はいません。

 そもそもサヤ姫ちゃんと僕を付けるような人なんて、いるわけがないと思い僕は踵を返し歩き出しました。


 サヤ姫ちゃんも「気のせいかの……」と呟いて僕の後を追うように歩きました。

 

 しかし、それが決して気のせいでないことを僕はすぐに思い知ります。

  

「おはよう。今日はいい天気ね」


 突然かけられた声に僕とサヤ姫ちゃんは同時に振り返りました。


「お、おはよう。朋花ちゃん」


 僕達の背後に立っていたのは、幼馴染みの朋花ちゃん。

 ついさっき振り向いた時、彼女はいなかった筈なのになぜ今目の前にいるのか僕は不思議に思いました。


「お主、いつからそこにいたのじゃ?」

 

 僕の疑問はおそらく同じことを思っていたサヤ姫ちゃんが聞いてくれました。


「さっきから、ずっとあなた達の後ろにいたわ」


 僕はその答えを聞いて鳥肌が立ちました。そして昨日の帰り道での出来事を思い出して今度は冷や汗が出てきました。


「あら、どうしたの? 朝からそんなに汗をかいて。しょうがないわね……」


 朋花ちゃんは制服のポケットからピンクのハンカチを出して、僕の顔を優しく拭いてくれました。


 そして、拭いたハンカチを朋花ちゃんは両手でガシッと掴んで……、


「朝から汗を拭いたハンカチをゲットできるなんて……今日はなんていい日なのかしら! あなたの匂いが染み付いたこのハンカチを私のコレクションにするわ!」


 鼻息を荒くし、僕の汗が付いたハンカチを見てめっちゃ興奮する朋花ちゃん。僕は朝からそんな幼馴染みの姿を見て頭痛がしました。


「匂い? どんな匂いか儂も知りたいのじゃ!」  


「待てぃ!」


 僕はサヤ姫ちゃんの肩を掴んで引き止めます。こんな幼馴染みの姿を見てサヤ姫ちゃんは引いていると思ったのですが、やはりサヤ姫ちゃんはサヤ姫ちゃんです。

 

 僕は道路のド真ん中で僕の汗が付いたハンカチで騒ぐ女の子の姿なんて、これ以上見たくありません。


「これは私の物よ! 誰にもあげない!」

「少しぐらい儂にも触らせてくれなのじゃ!」 

「いやよ! ってか、だいたいなんであんたが私の想い人と一緒にいるわけ!? 」

「儂とそやつは一緒の家に住んでるから当たり前じゃ!」

「はい!? 同居してるの!? あんたもし変なことしたら私が許さないから!」

「変なことの意味がわからぬ!」

「エッチなことよ!」 

「エッチとはなんじゃ! 英語のことか!?」


 ギャーギャー騒ぐ二人を見て今度は目眩を起こした僕は、黙って歩き出しました。

久しぶりの更新でした!

読んで下さりありがとうございます♪

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