初デートは危険でいっぱいなのじゃ! 完
さて、みなさん。
突然ですがここで火縄銃の使い方について一緒に勉強しましょう。
まず、銃口に火薬を入れます。(下向きで入れないでね!! 火薬が溢れるから!!)
次に弾薬を入れます。あ、言い忘れていましたが、火縄銃は雨だと使えません。なぜなら火が着かなく……って!!
「んなもん使えるかぁぁぁぁあああ!!」
僕は盛大にツッコミました。
ええ、まず現代社会で銃なんて使える訳がありません。
そもそもこれをくれた男の人も使えないと言っていたではありませんか。
「……もう諦めたの? じゃあ……これで終わりだね」
白木君はバットを振り上げます。
ここでスイカ割りを想像して下さい。僕はスイカで白木君がそのスイカを割ろうとしている人物です。
スイカなら割ると美味しそうな果肉が見えますが、僕の頭を割ると血肉しか見えません。
「白木殿! そこを右! もうちょい手前じゃ!!」
「おいそこぉ!! これはスイカ割りじゃないんだぞ!!」
公園の入り口で白木君に指示を送るサヤ姫ちゃん。
どうやらあのアホ姫は僕を助けにきた訳ではなさそうです。
「さあ、覚悟を決めて自らの死を受け入れなよ!!」
「し、白木君!! 待って待って! もう一度言うけど僕と朋花ちゃんはそんな関係じゃないんだよ!!」
これだけ僕が必死で否定しているにも関わらず、白木君はバットに込める力を緩めようとはしません。
ああ、だめだこれ。
僕は死を覚悟しましたが、せめて最後になにかしら抵抗しようと思い、もう一度火縄銃を構えます。
「ええい! とりあえずなんでもいいから出てきて! どうにかこの状況を突破できる何かが出たらそれでいい! むしろ空砲でもいいから!!」
ここで豆知識。火縄銃の空砲は至近距離でドラム缶をぶち破ることができるそうですよ。豆知識終わり。
僕は白木君に銃口を向け、その引き金を遠慮なく引いたのです!
すると……、
ピカァッ!
「うわっ!?」
「な、なんだ!?」
お互いに目を開けられないほどの光が僕らを包み込みました。
あ、あれ?
なんだこの妙な違和感。
僕はこの火縄銃をくれた男の人の言葉を思い出します。
『夜になると音を立ててうるさくて眠れなかったよ……』
そしてそれに付け加えて僕がサヤ姫ちゃんと出会った時の事を思い出します。
『刀からドンドンと不気味な音が家中に鳴り響き──』
『刀から目を開けられないほどの光が僕を包み──』
あぁ……点と点が繋がるってこういう時に使う言葉なんだね。
光が消え目を開けると、僕は言葉をなくしました。
地面に倒れ込んだ白木君。ピクピクと身体を痙攣させて恐らく失神していますが、ここはあまり重要ではありません。
「ヒナ? ここは一体どこでしょうか??」
そう! ここが最も重要なのです!!
白木君の上でちょこんと正座をしている女の子!!
身に纏っているのは紛れもなく戦国時代の武将達が着ていそうな甲冑!
ええ! これは間違いないでしょう……彼女は、公園の入り口でポカンと口を開けて立っているサヤ姫ちゃんと同類なのでしょう!!
「……」
「……」
キョロキョロしていた女の子と僕はばっちり目が合っちゃいます。
そして、五秒後……
「キャァァァァァァァーーーーーー!!」
彼女は大声で叫び、夕日に照らされた公園に響き渡るのでした──。