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初デートは危険でいっぱいなのじゃ! サヤ姫ルート

 クレーンゲームを堪能をした……というかさせられた僕らが次に向かったのはゲームセンターの二階。

 ドラムを叩いたり、ギターを弾いたりなど、ここではリズムに合わせて楽器を演奏するリズムゲーム……音ゲーというのでしょうか? が主に稼働しているフロアのようです。


 特にやってみたいゲームがないままウロウロしていた僕達は、とあるゲームを見つけました。

 それはフロアの隅っこに置かれた『ホラ貝の達人』というリズムゲーム。

 なぜこれが僕らの目に止まったのか……いや、正直に言うと目に止まったのはこのゲーム自体ではなく、それを真剣にプレイしている男女でした。


 女の子の方は制服姿で後ろから見ても分かる華奢な体つきに隣の男の子と比べると背も小さめ、恐らく胸も残念な胸だと思われます。そして、いつの間に髪をくくったのか、ポニーテールの髪がふよふよと動いていました。


 男の子の方は緑色のジャージ姿、隣で騒ぐ女の子と比べると、どこか遠慮気味なノリで必死にホラ貝を吹いていました。


「……」

「……」


 僕と朋花ちゃんは無言で顔を見合わせると、スタスタとその場を去ることにしました……。


「誰が残念な胸じゃぁ!」

 

 ──刹那。そんな叫び声が背後で聞こえたかと思うと、僕の頭は何かにスッポリと覆われました。

 

「ちょ、なんなのこれ!? 中が暗くて何にも見えないよ!」

「うむ。主の頭にホラ貝を叩き込んでやったぞ。まあ、これは実物と程遠い偽者じゃがのぅ」

「サヤ姫ちゃん!? この声はサヤ姫ちゃんだよね!? ち、違うよ! さっきのはホラを吹いたんだよ! ほら、ホラ貝だけにホラを吹く。なかなか上手いでしょ!」


 目の前が真っ暗でパニックに陥って寒いギャグを放つ僕ですが、サヤ姫ちゃんの残念な胸のことを口に出した訳ではないのにどうして分かったのでしょうか? この子は何か特殊能力があるのか!?


「って、やめてぇぇぇぇ! 上の穴からゴミを捨てないでぇぇぇぇ!」


 と、さらにサヤ姫ちゃんに拷問を受けた僕は、端から見るとホラ貝を被ってバタバタする頭のおかしい人にしか見られないのでした……。



 なんやかんやあってサヤ姫ちゃんと白木くんに合流した僕達は、お昼過ぎだということもあって近くのファミレスに行くことになりました。

 

「えーと、僕はオムライスで」


「私も同じので」


「……僕もそれで」


「儂は馬肉で!」


「馬肉なんてファミレスにあるわけないじゃん!」

「……むぅ。仕方ないのぅ。なら鳥の臓物で!」

「だから! なんでメニュー表にない物を頼むの!? それにここは居酒屋じゃないんだよ!?」

「チツ。なら儂も主と同じものじゃ」


 こんな感じで店員に注文をした僕達はオムライスが来るまでの間、それぞれどこで何をしていたのかを話し始めました。

 

 どうやらサヤ姫ちゃんと白木くんは商店街を走り回ったあげく(サヤ姫ちゃんが白木くんの手を引いて暴走という捉え方もできます)、僕達がいたゲームセンターに立ち寄り、さっきのホラ貝の達人で遊んでいたとのことでした。


「……サヤ姫さんのペースに合わせるのに必死でした」


 と、疲れきった表情で語るのは今回被害者となったS君もとい、白木君。

 よく見ればジャージが汗で滲んでいるではありませんか。


「白木殿は情けないのう。それでは儂の配下は勤まらぬぞ」


 ……そしていつの間にかサヤ姫ちゃんの配下になっている白木君でした。

 

「そういえば朋花よ。ここから先はどうするのじゃ?」

「そうね……。とりあずさっきみたいに二組に分けましょう。サヤさんと私が交代ということでどう?」

「うむ。儂と主で行動すればいいのじゃな。主よ、共に戦場へ赴こうぞ」

「いやだよ! 普通に商店街でいいよ!」


 午後からのグループ分けも決まったのと同時に、僕の地獄行きが決まったのは良いのですが(本当は嫌なんだよ!)、そもそも僕は午後からも同じグループで行動するとばかり思っていたので、これには少し驚きました。


 朋花ちゃん、白木君とどこへ向かうのでしょう? まあ、元々白木君と朋花ちゃんのデートですからこうなるのは自然ではありますが……。

 

 深く考えようとしたところで、注文したオムライスがテーブルに並べられ、僕は考えるのを止めてオムライスを口に運びました。



「主よ! さっさと来るのじゃ!」


 食事を済ませ、ファミレスを後にした僕達はさっそくグループに分かれて行動することになりました。

 商店街は午前のときより人で溢れており、その中をサヤ姫ちゃんは急ぎ足で歩きます。

 どうやら白木君と商店街をウロウロしていた時、気になる店を発見したらしいのですが、まだその時間では店が開いておらず、今からもう一度その店へと行ってみたいと言い出したのです。


 喧騒を掻き分け、ファミレスからそう遠くない場所に目的地はありました。

 僕は店の前で立ち止まり、看板を一瞥しました。


『模擬刀店』


 ……帰ろう。


 僕は踵を返して歩き出そうとしましたが、


「主よ。さっきは開いてなかったようじゃがもう開いておるぞ!」


 サヤ姫ちゃんに首根っこを掴まれて僕はなす術もなく、店内に引きずり込まれました……。



「刀じゃ! 刀がいっぱい並んでおるぞ!」


 店内に入ると、そこは壁一面に掛けられた大量の刀(模擬だけど)があり、サヤ姫ちゃんは目をダイヤモンドみたいにキラキラさせてそれらを眺め、一人で騒いでいます。


 そう一人で。というのは、こじんまりとした店の中には僕とサヤ姫ちゃしかいないのです。

 まあ、模擬刀をわざわざ見に来る人なんて外国人の観光客か、サヤ姫ちゃんみたいに刀で溢れた時代で生まれた人ぐらしか今時いないと思いますが……。

 僕もサヤ姫ちゃんに連れて来られなかったらわざわざここに来ることなんてないし。


 サヤ姫ちゃんがキラキラ目を耀かせながら模擬刀を見ている横で、興味なんてこれっぽちもない、むしろサヤ姫ちゃんを刀に納めてここに並べておくなんてどうよ? とか考えていると、


「おや、こんな若い子が……ずいぶんと珍しいね」


 店の奥から眼鏡を掛けた初老の男の人が出てきました。

 

「む。それはまさか……火縄銃か!?」


 男の人に向かって……いや、男の人が持っている火縄銃? に向かってシャンデリアのように目を耀かせて飛び込んで行ったサヤ姫ちゃん。


「おお。そうだよ。君は火縄銃に興味があるのかい?」


「うむ。儂が初陣のときには既に火縄銃は主戦力じゃったからのう……。随分と懐かしいのじゃ」


「初陣の時? ははっ、君は面白い子だね。どれ、よかったら君が貰ってはくれないか?」


「なんと。このような物を儂が貰って良いのか!? なら快く貰い受け……」


「ちょっと待った!」


 勝手に取引が成立しそうな所で僕は思わず声を上げます。

 

「なんじゃ。主もほしいのか? 残念ながらこれは既に儂の物じゃ」

「違うよ! こんな物もらってどうするのさ!?」

「家に飾るか……使えそうなら使ってみるのじゃ! まずは主の頭をぶち抜いて……」

「ゴラァ! 勝手に人を的にするなぁ!! それに家に飾るのもやめて!!」


「ははは、大丈夫だよ。この火縄銃はレプリカだからね。本物とは違うよ」


 僕たちのやりとりを見ていた男の人は、笑いながらこの火縄銃が本物でないことを告げました。


 いや、本物じゃなくても貰うのはさずがに気が引けます。火縄銃を持った女子高校生が商店街をウロウロしていると注目の的です。それにその隣を歩く僕の身にもなってください。恥ずかしくて隣を歩けませんよ。


「で、でも。さすがにこれを貰っても使い道ないし……それに持って帰るのも苦労すると思うし……」

「ではありがたく頂戴するとしよう。主よ、帰るぞ」


 どうにか持って帰らない方向に話を進めていた僕ですが、サヤ姫ちゃんはすでに店から出ようとしていました。


「サヤ姫ちゃん! 持って帰るなら他の人から見えないようにだけして!!」


 サヤ姫ちゃんを止められないことを悟った僕は、とりあえず火縄銃が見えないように店員さんにいらない布で覆ってもらい、嬉しそうにスキップしながらサヤ姫ちゃんの後に続こうとした時、


「あれは不思議な物だった。夜になると音を立ててうるさくて眠れなかったよ……」

「え……? それって……?」

「いや、なんでもない。独り言だよ」


 そう言って男の人は店の奥に姿を消し、僕も店を出ました。


 そして鼻唄を歌いながら歩くサヤ姫ちゃんの隣で、僕は布に覆われたそれをずっと見ながらあることを考えていましたが、そんな訳がないと思い、考えるのやめました。 

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