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初デートは危険でいっぱいなのじゃ!②

「主よ。儂はつくづく思うのじゃが、この服はなかなか機能性に優れておるのぅ。特にこの通気性じゃ、暑い中でもそれを感じさせないぐらい優秀じゃ。おまけにこのヒラヒラのスカート? じゃったか、合戦の時に速さを求める足軽にはもってこいなのじゃ。そーいえば女子はスカートじゃが、男はなぜ長いままなのじゃ? 儂らと同じくスカートにすればいいと思うのじゃが……」


 晴天の下で待ち合わせ場所へと向かう僕とサヤ姫ちゃん。

 結局、サヤ姫ちゃんは暑いという理由で制服に着替え、僕の隣でスカートをヒラヒラと上下に動かしながらそんなことを言い出してきました。


 僕にとっては女の子がスカート、男の子はズボンというルール……というか常識に今更疑問など沸いてこないのですが、まだスカートとかズボンとかそういった概念がない戦国時代に生まれ育ったサヤ姫ちゃんにとって、この時代の常識を不思議に思う所があるようです。


 それにしてもサヤ姫ちゃん。そうやってスカートをヒラヒラさせていると中が丸見えだよ。

 今日はピンク色なんだね。チラチラと見えてしまうからなんだかすごく興奮するよ。


「……主よ。儂の下着ばかり見て楽しいのか?」


 急にヒラヒラさせていた両手をパッと離してピンク色のパンツが見えなくなったと同時に、僕はふと我に返り自分がサヤ姫ちゃんのパンツに釘付けになっていた事に気付きました。

 

「あ、いや、ってかサヤ姫ちゃんがヒラヒラさせるから悪いんでしょ! そんなにチラチラ見せられたら誰だって興奮するのは当たり前でしょ!」


 ほーおぅ。サヤ姫ちゃんは何故か納得したような感じで首を縦に振ると、


「……どうじゃ。どんな気分じゃ?」


 両手でスカートを捲って、パンツが見えるか見えないかの所で手を止めました。そしてニヤニヤと僕の反応を楽しむかのような顔で僕のことを見ています。


 分かってます……本当は分かっていますよ。

 ここで僕が強欲にサヤ姫ちゃんのパンツを見たいと、犬のように尻尾を振ってしまえば、サヤ姫ちゃんの策にまんまと乗せられてしまうことぐらい分かっていますよ。


 だが……それがいい。


「サヤ姫様。パンツを見せて下さい……見たいわん」 

「……主よ。儂は主のことが本気で心配になる時があるんじゃが……」


 サヤ姫ちゃんはそう言って両手をパッと離し、スカートは膝の所まで下りてしまいました。

 ああ! なんだかもう見られないと思うと切ないよ!


「ほれ、何をしておる。さっさと待ち合わせ場所に向かうのじゃ」


 肩を下ろして立ち尽くす僕の手を引いて、サヤ姫ちゃんは歩き出しました。

 

 少しだけ熱が籠った柔らかい手に引かれながら、僕はピンク色の細くて綺麗な髪が靡いたサヤ姫ちゃんの後ろ姿を見て、まるで普通の女の子のように思えてしまい、不覚にもその後ろ姿に見とれてしまいました。


 



 ──しかしいつまでも手を引かれて歩く訳には行きません。手は繋いでないといえ、こんな所を朋花ちゃんに目撃されたらデートの行き先は修羅の国になるでしょう。

 

 なので僕は集合場所の公園が見える前には一人で歩いていました。掌にはまだサヤ姫ちゃんの手の温もりが残っていましたが、あまり気にしないようにしました。




 さて、集合場所には9時前に着きましたが、案の上、朋花ちゃんは既に公園で待っていました。

 朋花ちゃんにサヤ姫ちゃんを連れてきてしまったことを追求されると思いましたが、特に何も言う様子はなかったので僕もその事を自分から言いませんでした。


 既に待っていたと言えば、白木君も公園のブランコに座っていました。

 そんな所に居ないでこっちで朋花ちゃんと一緒に待っていれば良かったのにと、思いましたが、白木君も少し恥ずかしかったのかもしれません。まあ、朋花ちゃんに何か言われた可能性もありますが……。


「さて、これでみんな揃ったわね。ここから駅前まで歩いていくわよ」


 朋花ちゃんはそう言って歩き出し、僕とサヤ姫ちゃん……少し遅れて白木君もその後を着いていきました。


 公園から駅前まではそう遠くはありません。歩いて五分ぐらいで駅前に着くと、そこから電車に乗って商店街前の駅で降りました。


「主よ! 電車というのはずいぶん便利な乗り物じゃのう! 揺れも少なく快適で目的地まであっという間じゃ!」


 と、初めて電車に乗ったサヤ姫ちゃんはかなり興奮気味に言いました。電車の中でも興奮していたサヤ姫ちゃんは、周りの目を気にもしないで子供のようにはしゃぎ、僕はサヤ姫ちゃんを制止するのに精一杯でした。これにはさすがに関わりたくなかったのか、朋花ちゃんと白木君は少し離れたところで他人のフリをしていましたよ。


 

 興奮が冷め上がらないサヤ姫ちゃんと僕が先に改札口で待っていると、僕達より遅れて改札口から出てきた朋花ちゃんと白木君。

 そういえばさっきまで気にしていませんでしたが、朋花ちゃんの私服姿を見るのはかなり久しぶりなような気がします。

 黒のブラウスにピンクのスカート……女の子らしい服装であり、普段は制服姿しか見ないから新鮮でした。

 白木君はというと、緑のジャージ姿……いや、まあラフな格好で僕は良いと思いますが、実際僕もシャツにジーパンという無難な服装なので。


「さて、ここから分かれて行動しましょう」


 と、改札口に着いた朋花ちゃんは開口一番にそう提案しました。

 

「分かれて行動? なぜじゃ?」

「サヤさん。これはデートよ。デートの基本は一対一が基本なのよ」

「うむ。よく分からんがつまりは二人で行動すればいいのじゃな」

「そうよ。ちなみにサヤさんは白木君と行動してね」

「白木殿と? ……むう、仕方ないのう。ほれ、さっさと行くぞ」

 

 こうして、サヤ姫ちゃんは白木君の手を引いて商店街の人混みの中へ消えて行きました。

 いや、なにも言わずに流れに身を任せてしまったけど、あの二人が仲良く街でデートしている姿なんか想像できないのですが……。



「さて、私達も行きましょう」


 ぴとっと、この瞬間を待っていたかのように朋花ちゃんは僕の腕に手を回して腕を組んで来ました。

 そして僕の腕に密着した朋花ちゃんの豊富な胸が当たり、僕の心拍数は急上昇しました。


「あら? もうノックアウト? デートはこれから始まるのよ。フフッ……」


 僕を上目遣いで見ると、朋花ちゃんは昨日、保健室で見せたような妖しい笑みを浮かべました。

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