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白木殿に宣戦布告なのじゃ!

「決闘じゃあぁぁぁ!」


 同じ空間にいる僕の鼓膜が裂けそうなほど、大きな声でサヤ姫ちゃんはマイクに向かって叫びました。 

 僕は静かにサヤ姫ちゃんの元へ歩み寄り、マイクに手を伸ばし電源を切りました。


「サヤ姫ちゃん!! 何が決闘だよ!! そんなんじゃ白木君が来る訳ないじゃないか!」


 マイクの電源は切ってあるので、僕は遠慮なく叫びました。


「しまった! 儂としたことが、白木殿に決闘を申し込んでしもうた!」


 アホ姫は口ではあたかも失敗したかのような口調で言っていますが、その顔は失敗した顔ではなく明らかにニヤニヤしています。


 僕は一瞬、このアホ姫の口にマイクを突っ込んでやろうかと思いました。


「いや、しかし。拳で語り合ってこそ真の友情というのは生まれるものじゃ。白木殿に家来になってもらう話はそれからでも遅くないのじゃ」


 いえいえ、あなたのやろうとしているのことは暴力で相手に恐怖を植え付けることですから。そこに友情なんて物は生まれるはずがありません。


「さて、儂はここで白木殿が来るまで座禅でもしようかの……」

「ちょっと、サヤ姫ちゃん!? そんなことしてたら先生が来ちゃうよ!」


 のんびり椅子の上で座禅をするサヤ姫ちゃんに向かって僕は言いましたが、聞く耳をもたないサヤ姫ちゃんはそこから離れようとはしません。

 

「そんなことしてても白木君は来ないよ!」

「いや、白木殿は必ずここへ来る!」 


 なんでそこまで自信があるのかは知りませんが、僕はこれ以上こんな茶番に付き合っている暇はありません。ただでさえ貴重な昼休みを使っているのに、それをこのアホ姫のために無駄にしたくないのです!


「もう! 先生が来て職員室に連行されても僕は知らないからね! もしそうなったら僕がここに居たこと言わないでね!」


 ここで起きたことは全てサヤ姫ちゃんの責任なので、僕は関係ありませんが、もし僕も一緒に居たという事がバレたら共犯と思われてしまいます。

 

 なので一応、サヤ姫ちゃんに念を押して、僕は放送室から出ようとドアノブに手を伸ばしたその時でした。


 ガチャッとドアが開いて、僕はその場で固まりました。

 ああ、一足遅かったか……。

 廊下側からドアを開けたのは先生だと思い、僕はこの状況の言い訳を必死に考えましたが、


「さっきの声、やっぱりサヤさんだったのね」


 ドアの向こうに立っていたのは、先生ではなく朋花ちゃんでした!

 僕はホッとして、救われた気分になりました。


「朋花ちゃん! 良かった~。先生かと思ったよ~」

「あら、私もあなたがそこに良かった……なんて思わないわよ!」


 あれ? 急に朋花ちゃんがとてと怖い顔になりましたよ?


「どうしてこの部屋にサヤさんと二人きりでいるのかしら? 説明して」


 まあ、実際にはそこで失神している人もいるから二人きりではないのですが、鬼のように怒った顔をしている朋花ちゃんに言った所で意味がないと僕は既に悟りました。

  

「い、いや。これはその……ってかなんで怒ってるの!?」

「怒ってはいないわ。激怒してるだけ」

「それ怒ってるから! しかもめっちゃ怒ってるじゃん!」

「あなたがサヤさんとこんな所でイチャイチャしてるから私は怒っているのよ!」

「怒ってること認めたよね!? ってか僕はサヤ姫ちゃんと別にイチャイチャなんかしてないから!」


 確かにさっきまでサヤ姫ちゃんと失神した人を除いたら二人きりでしたが、僕はこの状況でサヤ姫ちゃんに手を出したらその後どうなるか容易に想像ができます!


 いや、それに手を出そうだなんて考えている余裕もなかったほどです。いつ先生が来てもおかしくないのですから!


「ちょっと! サヤ姫ちゃんからも何か言ってよ!」


 僕は救いを求めるように座禅しているサヤ姫ちゃんを見ましたが、


「……」



 サヤ姫ちゃんは何故か目を瞑ったまま動きませんでした。とゆうより、座禅をしながら寝ているのではないでしょうか!?


「ちょっと!? サヤ姫ちゃん! もしかして寝てるの!?」


 僕はゆさゆさとサヤ姫ちゃんの肩を掴んで揺らしますが、それでも目を開けよとしません。

 ダメだ。完全に寝ている……。

 いや、この状況で寝られても非常に困るんですけど!!


「あらあら、イチャイチャし過ぎて疲れたようね。ここで私が二度と起きないようにしてもいいんだけど……」

「それ冗談に聞こえないから!」

「あら、冗談に決まってるじゃない……半分」


 ボソッと半分と聞こえたように思えましたが、僕はもう聞こえなかったことにしました。


「さて、サヤさんが寝てからそろそろ私達も行きましょうか」


 そう言ってガッシリ僕の腕を掴んだ朋花ちゃん。僕はとてつもなく嫌な予感しかしませんでした。

 

「……え? 行くってどこに?」

「あなた。私とお弁当を食べる約束したこと忘れたの?」

「あ、あー。そういえばそんなこと言ってたね……」


 確か昼休みが始まってすぐ言われたような……。


「あと、デートの約束をしたことも忘れてないでしょうね?」

「あ、あー。そういえば……いや、それは知らない! デートの約束なんかしてないよ!?」

「私がしようと決意してたわよ」

「それ約束してないじゃん! 何でちょっとドヤ顔なんですか!?」

「とりあえず場所変えるわよ。ここではイチャイチャできないし」

「待って! 僕にはやるべきことが……」


 やるべきこと……白木君を探し出すという僕の目的は、結局サヤ姫ちゃんと朋花ちゃんによって未達成のまま終わるのでした……。

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