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0日目。たぶん、きっと、自業地獄。

個人企画『コメディ描きが恋愛小説を描いてみよう』のコーナー。

昨今のライトノベルの風潮に倣ってみた。中身は特にエロくない。

多分、エロくない。……きっと、エロくない。

●の中の意味が分からない人はブラウザバック推奨。

また、美少女との恋愛、『彼が優し過ぎるよぉ^^;』みたいな王道の恋愛小説を御所望な人もブラウザバック推奨。

 守るのは、尊厳と誇り。

 そして、貞操である。





 新田俊介(にったしゅんすけ)は高校二年生である。

 彼は後悔していた。どうしてこうなったのか考え、結論が出ず、絶望した。

 彼がいる場所は快適な空間だった。食事は美味い。運動施設もある。漫画もあれば音楽の再生機器もあるし、PCも設置されているし、トレーニング器具もある。

 女の子もいる。

「これは実験よ」

 彼女は色々とヤバい女だった。クラスの中でも浮きに浮いていた。

 有体に言えば腐女子だ。クラスの男子でBL的なエロ妄想をするのは普通かもしれないが、それを平気な顔で漫画にしてしまうような女子である。

 彼女自身はクラスの中で浮きに浮いていたが、こういうモノは『体面』や『羞恥』を捨て去れば一定以上の需要がある。

 彼女はともかく、彼女の漫画は厚遇を持って女子に受け入れられていた。

「私はこの実験に尊厳を賭けるわ。画面の向こう側にいない男なんて『そんなもんだ』と証明する。これは二次元と三次元の……誇りを賭けた決戦なのよ」

 俺を勝手に三次元代表にするな。

 そんなことを言いかけたが、無駄だった。知っている。無駄なのだ。女という生き物は言い出したら聞かない。少なくとも俊介の姉はそうだ。

 もちろん、それは誤った認識ではあるが、そもそも女の子と触れ合うことに少々の抵抗があるシャイな高校一年生男子に、正しい認識をしろというのは酷な話だった。

 俊介は、三時間前の己の愚行と愚考を恥じた。

 それから、今の状況が最悪であることを実感し……ちょっとだけ、泣いた。



 新田俊介(にったしゅんすけ)は高校生二年生である。

 彼は怒っていた。メロス並に激怒していた。激怒はしていたが、その激怒を対象に向けてはいけないと、常々己に言い聞かせてきた。

 対象は、友達ではあるが口がキツく、容赦のない男である。

 少子化の影響でクラス替えはない。それを考慮せずに一年の時に一度だけ喧嘩になった。勝負はこちらの勝ちだと断言できるが、俊介がちょっと憧れている女子にしこたま怒られ、ちょっといいかなと思っていた女子には無視され、ちょっとだけ好きなの女子に背中にガムを付けられた。

 無抵抗の相手を殴っているように見えたのが、よくなかったらしい。

 結局、俊介が平謝りすることで事なきを得たし、話してみると意外と面白い奴だったので、俊介は友達だと思って……いた。

 過去形である。友情はここに崩壊したのだ。徹底抗戦だ。暴力以外で。

 友情に罅が入ったのは、俊介が三回目の失恋をした時である。

『うん……ごめん。クラスに好きな人がいるの』

 ここまではいい。ここまでは分かる。よくあることだ。オッケーだ。

 仕方ないって。一ヶ月くらい引きずってから次にいこうぜ。次があるって。次が。

 同じクラスにモテまくるアホが一人いるので、これはもう仕方ない。人生には負け試合もある。かなり泣きそうだったが、俊介はそう思い込もうとした。


『ああ、違う違う。好きなのは……正人の、相方の方』


 わぁいなにそれひどぅいあいつだけにはまけてないとおもってたのにぃ。

 俊介は屋上で燃え尽きた。

 三回目の失恋だったが、地味過ぎて全体的に真っ黒でこりゃモテねぇと思い込んでた友達が、実はモテていた。内心では『俺の方が絶対にイケてる』と思い込んでただけに、ダメージは計り知れないほど増大していた。

 一週間ほど落ち込んで、俊介は決意した。

「俺は……彼女を作らなければならない」

 徹底的に痛めつけられたプライドを修復するためには、それしかないと思った。

 アホの発想である。俊介はあまり頭が良い方ではなく、失恋の痛手は彼から思考能力を奪い取っていた。

 あるいは、自暴自棄だったのかもしれない。

 俊介は彼女を作る方法を考えた。考えた結果が『数撃ちゃ当たる』という発想である。それはどう考えてもアホの発想だった。学校の教室という環境下において『女子のネットワーク』というものは強固なものだ。そして、当たり前の話だが『誰彼構わず告白するようなアホ男』は、蛇蝎のごとく嫌われる。

 しかし、自暴自棄な男はそれに気づかない。気づかないまま実行した。

 なにも考えず、あいうえお順に、告白していくことにした。

 窓側前列女子の一番。

 相沢みやびに、告白した。



 神様が罰を当てたんだろう。俊介はそう思った。

 告白と同時に、バチィッという音が響いた。気が付いたら見知らぬ天井だった。

 彼がいる場所は快適な空間だった。食事は美味い。運動施設もある。漫画もあれば音楽の再生機器もあるし、PCも設置されているし、トレーニング器具もある。

 見るからに重厚な鍵がかかっている入口は開かないし。

 監視カメラがあっちこっちに設置されているし。

 密室に危ない女子と二人きり。

「あの……相沢さん」

「名前で呼んで、呼び捨てにしなさい。呼ばないと体に電流を流すわ」

「じゃ、じゃあ……その……みやび」

「なに?」

「ご、誤解なんだ。えっと……その、心底悪いかったと思うし反省もしてる……」

「知っているわ」

「え」

「あなたは私を好きじゃないし、私はあなたを好きじゃない」

 相沢みやびは、にやりと笑った。

 見る者を忌避させるような、それはとてもとても危ない笑顔だった。

「だから、意味があるのよ。魂で繋がる崇高な愛は二次元にしかないもの。私は自らの身を犠牲にそれを証明するの」

「……あ……あの? みやびサン?」

「三次元代表として、精々頑張ってね。……まぁ、私の見立てだと最短で五日、最長で十日で終わるわ」

 それだけを言い放ち、みやびは俊介から顔を逸らし、本を読み始めた。

 タイトルを見て絶望する。女性向けの官能小説だった。BL小説だった。

(……神様、マジごめんなさい。もうしませんから。なんでもしますから!)

 俊介は心の中で悔いた。己の愚行を悔いた。友達に謝った。神様に土下座した。

 それでも、自分がこの部屋に監禁されたという事実が覆ることはなかった。

 現実は非情である。

 かくして、俊介の戦いは始まりを告げた。



 ○ヤらない。理性で本能はコントロールできる。

 ○ヤる。本能の前では理性などクソ同然である。


 これは、そういう戦いである。

プロローグと第一話は同時に投稿する主義です。

というわけで、次回に続く。

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