表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/7

第3話:彼女の家のツラい事情

 その日の授業が終わり放課後。俺といつきは、すぐに学校を出た。昼休みに理事長から教えられた不登校生徒、藤咲冬馬の家に向かうためだ。彼女の住んでいる場所は隣町で、電車に乗って向かう。

「にしても、まさか不登校の生徒がいたなんてなぁ。全然知らなかったぜ」

 適当に見つけた四人がけの席に向かい合って座っていたいつきに、俺は言ってみる。

「わたし、分かるよ・・・学校に行きたくない気持ち」

「そういえばお前も家にきた頃は、スゲー壁作ってたもんなー」

 なんとなく明るい声で俺は答えた。--いつもはテンションが高いのに、こんな意気消沈したようないつきが、嫌だったからだ--

こいつが最初に家に来たときのことを、俺は思い出していた。親父の後ろに隠れるようにして顔を覗かせるいつき。今日からお前と一緒に暮らす、坂本いつきだ。と紹介されて、顔を俯かせるいつき。家に来て数ヶ月は、ずっと暗かった・・・・・・。

 俺の精神が現実に戻ってきたのは、電車のアナウンスが隣町の駅に着くことを知らせた時だった。俺たちは電車を降り、メモに書いてある住所を目指した。

 そこにあったのは、ごく普通の一軒家だった。俺は玄関のチャイムを押したが、誰も出てこない。鍵も掛かっており、中に入ることができない。さて、どうするかと頭を掻いたとき、

「おや、君たち藤咲さん家に何か用かい?」

 向かいの家から、一人の老人が出てきた。老人は俺たちの格好を見て納得したようにあぁと頷くと、

「もしかして、冬馬ちゃんに会いにきたのかい?」

「え、えぇまぁそんなところです」

 俺は相手に調子を合わせる様にして、話を進めた。隣りのいつきに至っては、不思議そうに首をかしげていたが、話がややこしくなるので、「とりあえず俺に話を合わせろ」と小声で言った。いつきも頷く。だが、このままおじいさんを騙したままで行くのも心が痛いので、

「俺たち、先生に頼まれて冬馬さんの様子を見に来たんです。最近ずっと学校に来てなかったので」

 と真実と嘘を織り交ぜながら話す。もちろん心の中で謝罪もする。

「そうだったのかい。それは大変だね」

 おじいさんはこちらの嘘に気付く事なく話してくる。

 それからは冬馬の家の事を詳しく聞くため、俺たちはおじいさんの家に入ってった。


 林と言うおじいさんは、俺たちを自宅の茶の間へ案内した。部屋は畳になっていたので、自分家にいるようで落ち着いた。ほどなくして三人分のお茶を持ってきてから、林さんは冬馬の家について話をしてくた。

「彼女の家とはね、昔からの仲で、よく助け合いながら生活していたんだ。冬馬ちゃんとも面識があってね、とても素直でいい子だったよ」

 昔のことを思い出しながら、林さんは話を続ける。しかし段々とその声音は、暗くなっていく。

「でも最近、お母さんが亡くなってから暗い性格になっていったんだ。お父さんともうまくいってないみたいで・・・」

(なるほで、理事長の言ってた事と合ってるな)

 俺は心の中で確認すると、林さんの方に軽く身を乗り出していった。

「俺たちは、冬馬さんに学校に行ってもらえるよう頼みに来たんです。でも鍵が掛かってて中に入ることもできない状況なんです。林さん、もしかしたら合鍵とか昔に預かってたりしてないですか?」

 結局のところ、家の中に入らないと何も始まらない。そう考えて一応聞いてみたら、

「え?合鍵かい?ちょっと待っててね。確かいつかの日に預かってたはずだが・・・」

 そんなことを呟きながら、林さんは居間をでた。それを確認したいつきはこちらの方に身体を動かして囁く。

「ねぇ、春人くん。いいの?なんかおじいさんを騙してる感じになっちゃってるけど?」

「しょうがないだろ、理事長に頼まれたんだから。このままいくしかないだろ?」

 いつきと密談しながらほどなく、林さんが居間に戻ってきた。その手には一つの鍵があった。

「あったあった。ハイ、これが藤咲さん家の鍵だよ。もしもの時のために預かってたんだ」

 林さんから鍵を拝借した俺は、軽くお辞儀をした。

「ありがとうございます。これで用事も済みそうです」

「いやいや、こちらこそ助かるよ。こう言う問題は同年代の人に任せた方がいいからね」

 それから少し休憩をしてから、俺たちは林さんの家を出て、改めて冬馬の家に行った。こんな用事さっさと済ませておきたいところだ。

「じゃぁ、開けるぞ?」

 念のためいつきに確認をとってから、俺は玄関の鍵穴に拝借した鍵を差し込んだ。

 家の中を見て初めに抱いた感想は、とっても単純だった。

「おいおい、なんだよこれ?ちゃんと掃除したのか?」

「なんか、テレビでやってたゴミ屋敷みたいだね」

 いつきの意見には同意せざるおえない。玄関には大きなゴミ袋がいくつも放置してあり、人が住んでるとは思えなかった。それでも俺たちは前へ進む。でないとここまで来た意味がゼロになってしまう。

「とりあえず冬馬を探さないといけないのだが・・・」

 ふと何かの音が聞こえた。耳を澄ませてみると何かを叩く音も混じってる。俺たちは首を傾げつつ、音の発信源に行った。廊下を進んで突き当りの角、その扉の向こうから音は聞こえてくる。

「この中か?」

 俺は恐る恐る扉を開けた。薄暗い部屋にある光源は一台のパソコン。そしてそのパソコンを陣取っていたのは、一人の少女だった。

「・・・なに、あなたたち?」

 その少女は突き放すような声で、俺たちを出迎えた。

いざっくです。大分遅れて申し訳ありません。かなり短いあとがきですが、どうか本編を読んでみてください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ