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キラーズギフト  作者: アイズ
一章・魔女
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魔女

「お久し振り。二年ぶりかしら? 少し狂気が薄くなったんじゃない?」


 人々が取り囲む中心で殺人犯カスミは不適な笑みを浮かべる。


「私も丸くなったということだよ。君のその狂気、ますます毒々しくなったものだね」


 シンと静まり返ったホール。この空間を支配しているのは私達の狂気。動けば殺す。喋っても殺す。殺されたくなければじっとしていろ。喚くな、騒ぐなと周囲を縛りあげる。


「せっかく妻が帰ってきたのにそれはないのではなくて?」


「夫相手にふざけた悪戯をする君に云われたくわないのだがね」


 私は懐から一本のナイフを取り出してその先を彼女に向ける。


「選びたまえ。今この場で私に殺されるか。顔を洗って出直すかだ。今はいささか機嫌が悪くてね。私としては後者をおすすめするよ」


「貴方に私を殺せるかしら?」


「では遠慮なく殺らせてもらうとしよう 」


「あ-、御話し中悪いね二人とも」


 彼女に切りかかろうとした直前に私を遮るようにして二階のVIP席から声を掛けてきた光臣。いつの間に移動していたのかその手にはノートパソコンが握られており、なにやら警報らしき音を上げていた。


「僕の網にヒットした。あと五分で来るよ」


 このグラブに初めて来た人間は分からないだらう。だが、VIP会員や常連の人間は光臣の言葉を聞き終える前に動き出す。そう、ここに向かっているのは私達を含め、裏社会の住人の敵。


「警察」


 数秒後、グラブにいる全ての人間は悲鳴を上げて走り出す。このグラブには裏社会でも有名なグラブだ。様々な犯罪者や闇の重鎮もこぞって訪れる程に。

 そんなここは有名な理由は質の高い催しといかなる者の入店を拒まない所と何度踏み込まれても再び出店するという他に


『自分の身は自分で守る』


 店の方針にあった。

 いくら踏み込まれてもめげずに再び出店し、どんな方でもおもてなしをします。だけど自分の身は自分で守ってください。


 そんないつ踏み込まれるのかが分からない緊張感が客のツボにはまっているらしく連日大にぎわいだ。


「はぁ、これじゃせっかくのパーティーも台無しね」


「致し方あるまい。こうなってはダンスどころではないさ」


「ちょっといいかいボウヤ」


 ため息をつく私達に声を掛けてきたのは屈強な男達を引き連れた年配の女性。


「これはこれは東郷会会長夫人、ご機嫌麗しく」


「世辞はいらないよ。そんなことよりもボウヤ達は早く逃げな。今晩はアタシが殿をやってやる」


 和服姿でタバコを吹かしている夫人は目線で男達に指示を出し、この店で一番大きな侵入経路である来客用の入り口をテーブルで塞いでいく。


「前回は坊やに任せきりだったらね。今回はアタシがやらせてもらうよ」


「御老公はご了承されているので?」


「あぁ、旦那からも了承をもらってるよ」


 私はなるほどと納得して


「申し訳ありませんが今宵もご遠慮願いたい」


 と彼女の言葉を切って捨てた。

 それにより夫人の表情は険しくなる


「アタシに恥をかかせるつもりかい?」


「いえ、そういう訳ではありません」


(わたくし)からご説明させていただきますわ」


 私のあとを続くように口を開いたカスミ。優雅に一礼をした彼女は言った。


「既に時間稼ぎと迎撃の手筈は済んでます。ですからおばさまはどうぞごゆるりとお帰りくださいと夫は申しております」


「どういうことだい?」


「今この場所は(わたくし)の妹の箱庭となっております。巻き込まれる前にここを出る事をご推奨させていただきますわ」


 不適に笑う彼女を値踏みするように夫人はじっと見つめて。


「お前達! 引き上げるから準備しな!!」


 通る大きな声で部下達に撤収の指示を出した。


「姐さん。よろしいので?」


「あぁ、どうやらアタシ達がいたらかえって生存率が低そうなんでね」


 若頭であろう男が夫人に確認を取るが彼女は鼻で笑って踵を返す。


「それじゃここは任せたよ。要らぬ心配だが無事生き残ったらアタシんとこに顔だしな茶でも出してやるからさ」


「ハイ、必ずお伺いさせていただきますわ」


「お気をつけて」


 夫人と男衆が去るのを見届けた私達。

 静寂に包まれたホールには小さな足音が響く。

 それは警察の突入部隊が近づいていることを意味する。


「さてさて、皆が完全に逃げ切るまでおよそ10分。私は彼等の前に出向くが君はどうするかね?」


 帽子を外して顔に包帯を巻いていく。


(わたくし)も付き添わせてもらうわ。顔が見えなくても包帯男がいるなんて覚えられては困るでしょ?」


「なら、お願いしよう」


 右手にサバイバルナイフを携え


「アサガオと怪人も逃れた」













 さぁ、ショウの始まりだ。









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