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キラーズギフト  作者: アイズ
一章・魔女
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一章・魔女

*本作品に登場する人物、団体、組織等は実在する人物、団体、組織等とは全く関係ありません

  警視庁・国際刑事警察機構(ICPO )


「先輩~。ちょっと気になる資料が出てきたんですけど」


「ん? なんの資料だ?」


「赤手配(国際逮捕)なんですけど


「どれどれ・・・あぁ、二代目切り裂き魔か」


「え? 切り裂き魔ってヨーロッパで有名なあの?」


「そ、それの二代目。倣犯って訳じゃないんだがな」


「どんな犯罪者なんですか? 」


「ジェイク・リッパー。第一級国際指名手配の大量殺人犯。

通称“二代目切り裂き魔”。あまり表沙汰にはなってないがヨーロッパの悪徳政治家や金持ち、マフィアその関係者や家族を斬殺しまくった殺人犯。使用凶器は刃物。容姿は包帯で顔を覆って分からないが特徴としてはシルクハットとロングコートを身につけていて、あと没落貴族を自称しているらしいな」


「は、はぁ・・・。没落貴族ですか」


「バカみたいに聞こえるがコイツはガチでヤバい。殺人総数は楽々の三桁桁超え、実際は四桁って噂も聞くし、レザーヘッド(国家警察治安作戦中央部隊)が壊滅させられかけたそうだ」


「嘘! イタリアの特殊部隊がですか!?」


「ま、二年前からめっきり活動してないから死んだって噂がもっぱらだけどな」


「怖いですねぇ。日本にそんなのがいなくて良かったですよ」


「いるぞ?」


「・・・へ?」


「いるんだよ。日本にもシリアルキラー断トツの殺人犯でしかも捕まってない奴。なんて言ったっけな・・・たしか




 “魔女”っていったな。





 俺は殺人犯だ。それもシリアルキラーとして認定されている第一級国際指名手配の人殺しだ。だけど別にD.L.L.Rシンドローム(殺人症候群) って訳ではない。必要だったから殺し、身を守る為に殺していた。ヨーロッパではいつからか“二代目切り裂き魔”なんて呼ばれていたが殺しに快楽を求めてもいない。

 まぁ、殺しになんの抵抗も罪悪感も感じないのは俺自身既に狂気に染まっているからなのだろうが。


 そんな殺人犯ジェイク・リッパーこと俺、若久立浪は普通の高校生のように通学している。時刻にして朝の8時。学園までは歩いてあと10分のところを歩いているのだが歩くペースがペースなので遅刻する可能性がかなり高かったりする。急ぎたくても急げない。急ぐつもりもない。


「・・・・・」


 何故なら妹がブレザーの裾を掴みながら歩いているからだ。

 我が妹こと若久有栖。血のように真っ赤な髪と瞳、白い肌はアルビノによるモノ。ついこの前まで日傘を差さなければ日中出歩けなかったのだが今では、日射しの弱い季節なら日傘無しで出歩けるようになった。そういう俺もアルビノで瞳が赤い。普段は紫外線をカットする眼鏡を掛けているが夏場はサングラスを掛けている。


 まあアルビノの話しは置いておいて俺もそうだが我が妹は朝に極端に弱い。今も俺のブレザーの裾を掴みながら歩いているが実は歩きながら寝ているのだ。


「俺も寝たいんだが・・・」


 なんとも器用なことをしているが起こさなければ夕方近くまで寝ている妹。流石にそれでは進級も危ういので兄たる俺は眠気と戦いながら歩みを進めている。

 学園が近づくにつれて増えてくる生徒の数。学園が見えてきてふと時計を見ると時刻は8時20分。どうやら今日は間に合ったようだ。


「お、おはようございます若久先輩!」


 校門前、俺の不機嫌な表情にビビる教師の脇を通り抜けた時に声を挨拶をしてきた一年生。入学以来、朝の有栖を引き受けてくれている委員長だ。名前は知らない。


「毎日悪い。有栖を頼む」


「ハイ! 任せてください!!」


 元気に返事をする後輩に妹を預けて俺は寝るために自分のクラスへ向かう。教室に近づくにつれて中が騒がしい事に気付いた俺は首を少しかしげながら引き戸を開けた。


「・・・・」


 開けた先に広がるのは姿勢良く各々の席に座るクラスメート達。私語などしている人間など誰ひとりいない。

 別に気にしないから喋ってればいいのにと思うが。


「よう。なんか騒がしかったが。なにかあったのか?」


 少しばかり気になったので一年からの名も知らぬクラスメートに尋ねた。


「あ、あのね。ウチのクラスに転校生が来るんだって」


「転校生?」


「うん。名門女子からの転校生。ウチのクラス成績は学年トップで静かだからって噂」


「なるほどな」


 だからクラスが騒がしかったのか。


「あ、あの。浪君も転校生に興味あったりする?の・・・かな」


 納得している俺に名も知らぬクラスメートはしどろもどろになりながら尋ねてきた。


「興味ないな」


「だよね! 興味ないよね! ごめんね変なこと聞いて!!」


 なにやら嬉しそうにしているクラスメートに首をかしげることになったが、気にせず一番後ろ窓側にある自分の席に座る。その時隣に新しい机が置いてあったのに気付くが。どうせ転入生の席だろうと結論付ける。

 そのすぐ後に担任が教室に入って来てHRを始める。俺も興味はないが寝る前に一目見ておこうと思い寝ずにいる。


「さて、皆も知っていると思うが転校生がウチのクラスに来ることになった。喜べ男子、かなりの美人だ」


 普通ならここで他の男子はテンションを上げるんだろが俺のせいで誰ひとり歓声を上げない。担任も強制的に滑らされたので仕切り直して転入生を教室に招き入れることにした。


「それじゃ、夕凪さん入ってきなさい」


「ハイ」


 通った声の返事を合図に扉が開かれ一人の女生徒が入ってきた。静かなクラスに小さく驚きの声が上がる。それもそのはず、その女生徒は日本人の姓をもちながらも美しい金髪とモデルのようなスタイルの持ち主だったからだ。


「はじめまして。今日からここに通うことになりました夕凪純香(ゆいなぎ すみか)です。よろしくお願いします」


 かくいう俺も目を見開いて彼女を見ていた。彼女に見惚れているのではない。彼女の底の見えない濁った瞳、滲み出る狂気、それも俺と同質同等の狂気に驚いているのだ。


「来たばかりで夕凪も勝手が分からないだろうから皆は積極的に助けてやってくれ」


 あの女は一般人なんかじゃない。確実に俺と同類だ。


「席は若久の隣に用意してある。なにかあれば頼るといい」


 なんの為にこの学園に来たのか。俺達を狙ってか?


「分かりました」


 理由は分からないが下手にボロを出すのは不味い。恐らく実力も相当なモノだろう。


「若久君。でいいよね? これからよろしく」


 今は全力で狂気を隠し、相手に俺を悟らせないようにしよう。たがら


「あぁ、よろしく。何か困った事があったらなんでもいってくれ」


 渾身の爽やかな笑顔で対応した。






 直後、クラスから悲鳴が上がったというのは割愛させていただく。

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