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キラーズギフト  作者: アイズ
序章。
3/6

プロローグ3

連荘です


 ある日の深夜1時過ぎ。とある街中の裏路地を走る一人の男が居た。

 彼の視線の先には自分に背を向けて走る一人の女性。乱れた髪と衣服、素足で走るその女性からは必死さが伝わってくる。

 彼は恋をしていた。社会人である彼はあまり要領がいいとはいえず、会社でも頻繁に上司から罵声を浴びていた。

 そんな男に優しくする女性社員が居た。容姿もよく仕事もできる同期の女性だ。

 あまり容姿がよくない男は彼女に惚れていたが何故彼女が自分に優しくするのかが分からなかった。

 ある日、ふと男は思った。―― 、もしかして自分に気があるのではないか。

 そう思った瞬間、毎朝が憂鬱だった出勤が、地獄だった勤務時間が楽しい物に感じられるようになった。

 彼女が自分に優しくしてくれる。彼女が自分を見てくれている。

 男の期待が、妄想が膨らんでいく。

 だが男には不満があった。何度食事やデートに誘っても彼女は応じてくれなかったことだ。

 なぜ?自分に好意があるのではないのか?何故?何故?何故?何故?

 ある日彼女に恋人ができた。それを知ったその日男の膨れ上がった期待と妄想が爆発した。


 裏切った裏切った裏切った裏切った・・・・


 男を覆いつくす負の感情。自分を裏切った彼女を男はある日の晩彼女が飲み屋の帰りの所を襲い掛かった。


 裏切った裏切った裏切った!!


 誰にも渡さない。彼女は自分のモノだ。その一心で殴った、蹴った、犯し、殺した。

 泣き叫ぶ彼女を殺した。

 殺した瞬間、男は自分の中の何かが満足されるのを感じた。


 ―――― あぁ、自分のモノにしたいならこうすればいいのか・・・


 これが男の初めての殺人である。

 

 それからも男は人目見て惚れた女性を殺し続けた。

 そして今晩も愛する女性をその手に掛けるために男は闇を走り抜ける。


「いやっ!来ないで!!」


 袋小路に追い詰められた女性は涙と鼻水で顔を歪めながら乱れた髪を振る。


「な、ななんで逃げるんだい?僕はこんなにも君を愛してるのに・・・」


「助けてお母さん!お父さぁん!!」


 必死に叫ぶも誰も来る気配を見せない。男は歪んだ顔で女性へと近づく。

 さぁ、君も僕のモノになるんだ誰にも渡さない。


 醜い感情で愛を語る狂気を纏った男が今まで警察に捕まらなかったのは奇跡だろう。

 今晩も男は一人の女性を自分のモノとする。



「フム、私としては愛とは互いに生あってのモノだと思うのだがね・・・」



 そのはずだった。


「な、なななんだお前は!?」


 男は突然現れた人物に驚く。男に追われていた女性も突然現れたその人物を目にして思考を停止していた。

 その人物は黒いコートとスーツ、シルクハットを身に着け、顔を包帯で覆った人の形をした何かだった。


「これは失礼。自己紹介を忘れるとは私としたことが」


 優雅にも大仰な身振りで不気味に笑い声を上げるその人物。


「だが・・・」


 次の瞬間、男の視界が反転した。司会に移るのは逆さまになって赤い何かを吹き上げている自分の体。


「君に名乗るような名などないよ」

 

 そして理由を考える間もなく男の意識は途絶えてしまった。


「・・・・」


 女性は目の前の光景に自分の目を疑っていた。

 暴漢に襲われていた自分。袋小路に追い詰められて助からないと思った時に現れた奇妙な人物。

 その男は自分が意識するよりも早く暴漢の首を刈り取っていた。

 思考がついていかない。いったい何が起こった。

 停止していた思考が回復するにつれて恐怖が自分を支配する。

 次は自分の番、殺人を見てしまった人間を普通は放って置くはずがない。

 

「大丈夫かねお嬢さん」


 その殺人を犯した人物が自分に向かって歩いてくる。殺される。そう思って目を閉じた。しかし・・・


「申し訳ないのだが一つ頼みを聞いてくれないだろうか」


 掛けられた言葉は自分に対する頼み事だった。

 恐る恐る目を開けると目の前には片膝をつき自分に目線を合わせている包帯の人物。その手は乱れた衣服を丁寧に直してくれていた。


「今日この場であったことを忘れてほしい。ご覧のとおり私は殺人犯でね。世間に私の事が露見すると私も生活が苦しくなるのだよ」


 その言葉にポカンとする女性はただ頷くことしかできない。


「私の事を墓まで持っていってくれるのならばこの街に限り命の保障をしよう。だが世間に露見してしまえば私は君をころさなければなくなる」


「や、約束します・・・」


「いい子だ。さぁもう行きなさい。そして平穏のなかで幸せになって私を忘れなさい」


 そういって立ち上がるとその人物は女性に背を向け歩き出す。


「あ、あの!」


「なんだね?」


「ありがとうございます。あなたの事は絶対に墓まで持って行きます!だから最後に名前を!」


「フッ・・・」


 彼は小さく笑うと彼女に向き直ると大きく舞踏会でダンスを申し込む貴族のように礼をした。


「私の名はジェイク・リッパー。しがない没落貴族さ」














 とある街の海辺ににある屋敷。その一室で一人の女性は深夜3時過ぎにも拘らず一人紅茶に舌鼓をうっていた。

 ゆったりと小さく流れるクラシック。それに耳を澄ましていればいつの間にか眠ってしまいそうなほど心地よい。

 そんな空間に入ってきた風と小さな音。

 それをみみにした彼女はティーカップを置くと窓の方に笑顔を向ける。


「お帰りなさいませ。今宵は思ったより早いお帰りですね」


「まだ起きられていたのか嬢」


 コートを脱ぎながら呆れたように云うのは先ほど街で殺人を犯した人物ジェイク・リッパーだった。


「えぇ、送り出したのは私ですから。卿のお帰りをお待ちするのは当然ですわ」


「こんな血にまみれた殺人犯の送り迎えをするとは悪趣味にも程があるな」


 シルクハット、スーツの上着を脱ぎ、包帯を外したジェイク・リッパー。彼を見て女性は小さくクスクスと笑うと傍に置いてあった衣服と鞄を彼に渡した。


「まぁ、そう云わないでくださいな。さ、お疲れ様でした。車のほうは準備できてますよ若久立浪君」

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