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第7章:魔王と神の居場所

 …って言うか…

「目的地が魔王の神殿って言うのはわかったけど、何で元凶が『紅玉の魔王』な訳?」

 私の問いかけに、2人共ギョッとしたような顔をした。

 …何?私何かまずいこと聞いた?

「まさか『孤紅戦争』の話を知らない人間がいたなんて…」

「ルフィ姐さんって、意外と世間知らずなんだな…。」

 すみません、昔っから神話の類は聞いてもすぐに忘れるもので。

 呆れたように言う2人に、思わず心の中で謝罪。

「『孤紅戦争』…文字通り、孤高の神と紅玉の魔王…天空を司る者同士の戦いのことだ。」

「確か、両者相打ち…孤高の神は紅玉の魔王を『魔王の神殿』に封印したものの、自分も力尽きたって話のはずだぜ?」

「ふうん…。」

 興味無さそうに呟く私に、2人はちょっとばかし落ち込みつつも話を続ける。

「3000年くらい昔の話だから、どこまでが本当の事なのかは定かじゃないけど、結構有名な話だよなあ。」

「神話の時代から神と魔王は戦ってきている訳だけど、『孤紅戦争』は特に有名で、この世界に存在する全ての生命がその戦いに参戦したんだ。」

 私が生まれる1000年も前の話に、正直興味ないんですが。

 まあ、そういう考え方してるから、端から忘れてくって話もあるんだろうけど。

「鷹と烏じゃ、あんまり絵にならないわよねえ…。」

「…そういう物の捕らえ方か、君は。」

 私のイメージをまんま言葉にしたのを、呆れたようにダルが返した。

 一般的に、孤高の神は真紅の鷹、紅玉の魔王は深紅の烏の姿をしていると伝えられている。…まあ、神や魔王なんだから、姿なんていくらでも変えられるんだろうけど。

 ……ん?

「てことは今、孤高の神は不在…つまり、天空を司る者は今はもういないってこと?」

「いや、そうじゃないらしいぜ。」

 不敵な笑みを浮かべ、ディールは言葉を続ける。

「孤高の神は力尽きる直前、自分の分身を作って天空を守らせてるって話だぜ。」

「え?僕の知ってる話では力尽きたのは分身の方。実は孤高の神の本体は孤紅戦争の時、全く動かなかったって聞いてるけど。」

 …どっちにしても、神のやることなのにスケールが小さいし、それ。

「とにかく…一応まだ存在はしてるわけね。」

「まあ、ね。」

 相変わらず不敵な笑みを浮かべたまま、ディールは私の言葉を肯定する。

 …それにしても…魔王相手、か。なんか大変なことになりそう…。


「ルフィ、君に聞きたいことがあるんだけど。」

 夜も更けて火の番をしていた私に、眠っていたと思っていたダルが声をかけた。

 ディールはと言うと、すぴすぴと憎らしくなるくらい心地よさそうな寝息をたてている。

「…寝てると思ってたけど。…何、聞きたいことって。」

 さも当然のごとく私の横に座り、ダルはこっちを見ながら問いかけてきた。

「君は、その…どうして不死者になったのかな、と思って。」

「…覚えてないわ。前に言わなかった?」

「聞いてはいない。でも…そうか、覚えてないのか…。」

 …なんでこいつはこんなことを聞くんだろう。興味本位で聞かれてるなら腹立つんだけど。

「原因を、一緒に探ってみる気はないか?」

「……は?」

 素っ頓狂な声を上げ、思わずダルの顔を見る。

 …ああ、やっぱり美人だなあ…これで男って言うのがもったいない…

「僕はね、ルフィ。君に会えて本当に嬉しいんだ。今までずっと独りきりだったから。」

 独りきり…私もそうだ。2000年間、ずっと独りだった。

 不死者であるが故に、誰もが私より先に死ぬ。どれほど仲の良い人でも、いつかは私を置いて逝く。

 私の心が、孤独に耐え切れなくなっているのを、私は知っている。

 だから…私は、死にたいと思っている。これ以上、独りでいるのは辛すぎる。

「僕は今の状況を楽しみたい。だけど、独りでは楽しめない。…だから、君と一緒にいたい。」

 …は?

「その論理展開の理由が分からないんだけど。」

 眉をしかめて言う私に、ダルは一瞬困ったような顔をして…

「だあああっ!鈍い!鈍いぜルフィ姐さん!ダル兄さんの…男の決死の覚悟の告白が分からないなんて!」

 告白って…

 ……って言うかディール!?

 思わず声のした方に向き直ると、そこには呆れ果てたような顔をしたディールが仁王立ちで立っていた。

「寝てたんじゃなかったの!?」

「寝てたさ!そりゃもうぐっすりと!でもなんかルフィ姐さんが変な声を上げてるからなんかあったのかなと思えば、ダル兄さんが告白してるし!」

「いや、僕は別に告白してたつもりじゃ…」

 ぷんすかと怒るディールに、なにやらもごもごと言っているダル。

 でもって、何がなにやら今一つ理解に苦しんでいる私。

「と…とにかく、考えておいてくれるか?この旅が終わったら、返事が聞きたい。」

 じゃあもう僕は寝るから、と言って、ダルはそそくさと寝袋に入っていく。

 後に残るは、未だ興奮気味のディールと、いまいち現状を把握し切れていない私だけ。

 ……わけ、わかんない…。

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