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第6章:戦いと任務の目的地

「おっしゃあっ!いきなり登場!くううぅぅぅっ燃えるぜぇぇっ!」

 本日3度目の悪魔の襲撃にうんざりしている私を尻目に、悪魔との戦闘初参加のディールは、その数に怯えるどころか嬉しそうに吼えた。

「元気だなあ、ディール。」

「私としてはもうこれ以上の襲撃は勘弁して欲しいわね。」

 すっと剣を鞘から引き抜きつつ、襲いくる悪魔を切り捨てる。

 …何と言うか…

「低級悪魔じゃ私たちには勝てないってこと、そろそろ思い知って欲しいんだけど。」

「いや、それで高位悪魔に出てこられても困るんじゃないか?」

「まあね。」

 ビシバシ悪魔を倒しつつ、私はディールの方を見る。

 …おそらくは何らかの魔法のかかったグローブなのだろう。淡い赤の光を放つそのグローブで、ディールは次々と悪魔たちを殴り、吹き飛ばす。

「いやあ、自分で言うだけあって、なかなかやるじゃないか、彼。」

「のほほんとしてないでさっさと片付けてくれる?無駄な体力を使いたくないの。」

 全く動く気配のないダルに、冷ややかな視線を送りつつ苦情を申し立てる。

「ディールに任せてみるっていうのは?」

「大・却・下。」

 自分で倒そうという考えは無いらしく、ダルは自分の意見の不採用に不満そうな声を上げた。

 …高位神官ってこんなものぐさな奴でいいの!?

「ルフィ姐さん、後ろだ!」

 え…?

 ディールの声を疑問に思う暇もなく、戦士としての勘が私の体を突き動かした。右足を軸にくるりと半回転しつつ敵の攻撃を受け止め、回転の勢いを利用して相手を吹き飛ばす。

 ちいいっ!ダルに苦情を申し立ててる場合じゃなかったか!

「ルフィ姐さん、こっちの援護も頼みたいんだけど。」

「何する気!?」

「魔法使って、一気に一掃。」

 ぱしっと拳を手のひらに打ち付けつつ、ディールは宣言して…襲い来る敵を殴り倒しながらも、口の中で呪文を唱え始めた。

 …呪文は、いわば「力」を借りる際の手続きのようなもの。これが無ければ、魔法はその力を発動してくれない。だから唱えなきゃいけないっていうのはわかってるんだけど…面倒くさいものよねぇ、魔法って。唱えてる間は隙ができやすいし。

 …なんて考えてる場合じゃない!ディールが使う魔法は暗黒魔法。ダルの使っている神聖魔法と違って、「邪」だけを限定して攻撃するものじゃないから…

「ダル、ディールから離れるか、めちゃめちゃ近くに行くかして!」

「ええっ!?何で?」

「ディールの魔法を食らいたいの!?」

「いや、それは勘弁…」

 してください、とでも言おうとしていたのか。だがそれはディールの声にかき消された。

「イビル・ブレイズ!」

 本来なら存在しないはずの漆黒の炎が、術者の呼びかけに応じるように出現した。

 …イビル・ブレイズ…術者の視界に入る範囲内なら、術者以外の存在を焼き尽くす魔界の炎…

 そんなものぶっ放されたら…

「ディール!あんた私たちを殺す気!?」

「…ああっダル兄さん、ルフィ姐さん!?何でそんなとこに!?」

 気づいてなかったんかい!思わず突っ込みそうになるが、それは襲ってくる炎によって阻止された。

 すでに悪魔たちはこの炎に巻かれ消し炭と化してしまったようで、残っているのは私とダルだけのようである。

 …この呪文で死ねないことは、経験上知っている。しかし、不死者の持つ驚異的な回復力をもってしても、この呪文によってできた火傷は完治するまでに2、3日の時間が必要となる。

 …つまりは…食らうだけ損って事!2、3日も火傷の痛みを引きずりたくはない!

「…しゃーないなぁ…」

「え…?」

 ポツン、とダルが何事か呟いた。かと思いきや、彼は錫杖で大地を鳴らし…

「天界烈火」

 …言うと同時に、ディールが呼んだ魔界の炎が消え、周囲は何事もなかったかのような静けさを取り戻した。

 今…一体何をしたの…?

「うっわ。ダル兄さんってやっぱ凄ぇ。」

 目を輝かせながら、ディールはなおも言葉を続けた。

「今のって、俺の暗黒魔法をダル兄さんの神聖魔法で中和したって事だよなぁ!?しかも全く同じ力で!」

「目には目、炎には炎で…。本来の天界烈火はイビル・ブレイズ同様、自分の視界に入った『邪』を限定で焼き尽くす『炎』。マイナスにはプラスをってとこかな。」

 さらりと言ってのけたけど…それって、ディールが使った魔力と全く同じ魔力を使ってぶつけないと完全には中和できないってことじゃない?それってつまり…ダルは魔法を使ってるところを見ただけで、どの程度の魔力を使ってるのかがわかるってこと…?

「て言うかディール。君、魔法を使うときはもう少し周囲を気にしたほうがいいと思うよ。今回は僕がいたから良かったようなものの、下手をすると味方を巻き込みかねない。」

「…以後、気をつけるよ。」

 忠告され、しょげるようにディールは言った。


「…そう言えばさっき、悪魔の奴が変なこと言ってたぜ?」

 あてもなく歩き出した私たちに、ディールが思い出したように声を上げた。

 …どうやら、ダルに叱られた事から立ち直ったらしいわね。

「なんて言ってたんだい?」

「『お前たちを魔王の神殿へ行かせる訳にはいかない』とか何とか。」

 ……?

「ディール。そういうことは早く言ってくれ!これで今回の目的地がはっきりした。」

「ダ、ダル兄さん?」

 がっしとディールの肩を掴み、瞳をキラキラさせて宣言するダル。

 …うわあ、なんかすっごいヤな予感…

「目的地は『魔王の神殿』!そこに今回の元凶がいるとみた!」

 …ああ、やっぱり……。

 まあ、行き当たりばったりの旅じゃなくなっただけ、マシってこと…かしらね。

「魔王の神殿ってことは…相手って、『紅玉の魔王』!?面白そーになってきたぜ!」

「では改めて、魔王の神殿に向かって、出発だ!」

 嬉しそうに声を上げる2人をジト目で見つつ、私は深いため息をついた。

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