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Episode:99

 だが他の階も気配がないのは異常だ。

 ふつうに考えれば上級生が居ない寮は無法地帯で、低学年がやり放題ではしゃいでいるはずだ。なのに、全くそんな気配はない。


 念のために階段を上がってみたが、やはり低学年が騒いでいるはずの階は無人だった。

(自由にさせておいては困る、と)

 低学年が居ないとなると、ただ事ではない。これが真っ昼間なら十分在り得るが、外はもう暗くなっている。


 この時間帯は当番のある者以外は自室で過ごしたり、食堂へ行って夕食を取ったり、図書室へ行ったり、各階の共用スペースでお喋りをしたり、果ては廊下を走り回ったりと、それぞれ思い思いに過ごして良かった。それが居ないのだから、教官が命じてどこかへ連れ出したのは間違いない。


(マニュアルでは、この対応がされるのは災害時でしたか)

 だが、そういう気配はなかった。そもそもそんな事態なら、とっくに目が覚めている。


(やはり、教官がらみですかね)

 高位通話石の遮断の件から考えて、それがいちばん可能性が高そうだ。

 とりあえず様子を確かめようと寮を出る。


(おや、あそこですか)

 暗い寮とは対照的に、寮と校舎との間にある講堂は明かりが灯っていた。周囲を教官が囲んでいるところから見ても、間違いないだろう。

 死角へと周り、中の様子を覗う。


(低学年がほぼ全員ですか)

 目測で数えた感じ、そうとしか思えない。


(まぁ、頭の悪い人間が考えそうなことですが)

 最近採用された教官の水準から思うに、安直な考えで騒ぎを起こしたのだろう。特に今夜は上級生が居ないため、やり易いと踏んだに違いない。


(目的は……学院の掌握ですかねぇ)

 確証があるわけではないが、可能性が高かった。

 高位通話石の異常、特にバックアップの停止は、ほぼ間違いなく管理者が引き起こしたものだ。他の人間でも不可能とは言わないが、難易度が高すぎる。


 また低学年を集めたのも、間違いなく教官たちだ。彼らが勝手に集まるわけがない。

 何か緊急事態が起こってこれから島外へ逃がすというならまだあり得るが、それならわざわざバックアップを潰したりしない。イザと言うときには外への通信が可能かどうかは、死活問題だ。

 何をどう見ても、「知られたくないことをしようとしている」としか思えなかった。


 やっているのは、副学院長派と見ていい。

 学院長やそれに準じる一派は子供好きだ。また公正明大を基本にしていて、何か企むようなことはしない。子供たちの安全を第一に考えつつ、きちんと説明して納得もさせる。そういう者ばかりだ。

 それが、こんなマネをするとは思えないし、そのメリットも見当たらない。






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