Episode:95
「つまりあれかな、予想してたならなんで低学年があんなことになってるのか、でいいのかな?」
「あ、はい、そうです」
予想してたんなら、防げたはずだ。そうすればあの子たち、あんな目に遭わないで済んでる。
何でそんなことになったのか、それが知りたかった。
「どうすればとか分かんないですけど、でも、もうちょっと何か他の方法が……」
「たしかに君の言うとおりだ。ただ学院長は、『様子を見る』と仰られてね。間違いに気づく機会は必要だろうと」
「それはそうですけど」
学院長の言ってることは正しいと思う。大失敗した生徒もいつも学院長が許してくれて、この学院追い出されないで済んでるし。
けど心が広いのも、こーゆー事態になるとちょっと問題だ。
「君の言いたいことは分かるよ。だが学院長だからねぇ」
「ですよねぇ……」
逆にだからこそ学院長、っても言えるわけで。
「まぁそういうわけで、副学院長の行動が予想を上回った、というところかな」
「……上回らないで欲しかったです」
正直に感想を言うと、先生が吹き出した。
「いいねぇ、そのストレートな物言いは。若さだなぁ」
先生がひとしきり笑ったところで、少し遠くで爆発音がした。海のほうだ。
ついさっきの笑顔から一転、先生が少し難しい顔になる。
「どうやら作戦は失敗らしいな」
「失敗?」
少し考えて、俺はやっと意味を理解した。
「それって、船の確保が出来なかった、ってことですか?」
「そうなるね。どうやら爆破されたようだ。行ってみよう」
歩き出した先生の後を、俺もヴィオレイも慌ててついてく。
桟橋の周りは騒然としてて、船の後のほうから煙があがってたた。
「状況は」
先生の声に、近くに居た上級隊の先輩が答える。
「交戦と今の爆発で怪我人が数名。ただ幸い防御魔法を展開していたため、1人が頭を打った以外は軽症です。また教官たちは見張りと思われる数名を残して、ここには居ませんでした。1隻を残して船が無くなっていたので、既に帰島したと思われます」
「やっぱり残った見張り用連中用の船だったか。しかし学院の備品を爆破とは……関わった全員の給料から弁償だな。船は高いんだ」
先生の妙に現実的な台詞に、先輩たちの表情がちょっと緩んだ。