Episode:91
たぶん最上級生の先輩たちが、俺の前に並んだ。
1人はイマドと昔同室だった、セヴェリーグ先輩だ。他は顔は見たことあるけど、名前までは分からない。
「君たちはこの子たちが来た船のある場所まで行って、可能な限り早く本島へ帰島して欲しい。桟橋の船を確保できるとは限らないからね」
「了解です。本島へ帰島できた後は、どのように?」
「船着場で船を確保、演習島からの移送を行って欲しい。上級隊が演習島で船を確保してもしなくても、足は必要だろうしね」
「分かりました。――君たち、案内してくれ」
意外なくらいあっさり、先輩たちが命令に従った。俺はもっと細かく訊くと思ってたから、ちょっとびっくりだ。
「ん? 方角が分からなくなったかい?」
驚いてぼけっとしてたら、先輩に1年生みたいな扱いされた。
「いえ、分かります。船着場から砂浜を、ずっと北へ行ったところです」
「なるほど、あの辺りか」
先輩たちは土地勘があるから、これだけで大雑把な場所が分かったみたいだ。
けどそこで、思いもかけない言葉が出る。
「先生、船の場所がだいたい分かりましたので、この子たちは置いていっていいでしょうか」
「え……」
さっきの今でこれなんてヒドい。俺たち、船までの案内頼まれたはずだ。
「先輩、でも」
セヴェリーグ先輩が眉根を寄せて答えた。
「分かってる。ただ君たちを本島までは連れて行けない。そうなると砂浜に残していくことになる。そのとき、無事に本陣まで戻れるって言い切れるかい?」
「それは……」
たぶん大丈夫だろうと思う。ここは定期的に魔獣が駆除されてるし、さっきだって歩いてきた。でも「絶対大丈夫か」って言われたら、分からない。
先輩が正しいって頭じゃ分かる。だけど納得行かなかった。
「先生!」
振り返って抗議すると、先生が肩をすくめた。
「すまんね、最初から行かせないなんて言ったら、船の場所を教えないと思ったんだ」
「そんな……」
これじゃ騙されたも同然だ。
先輩たちがすまなそうな顔で俺らに敬礼してから、砂浜のほうへ歩きだした。
先生が言う。
「悪かった。けど実戦に君たちは巻き込めないしね。その代わり、船の確保作戦を見に行こう。一緒に遠くから見るだけなら大丈夫だろうから」
「……はい」
まだ納得行かないけど、ここでただ待たされるよりはマシそうだ。
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◇あとがき◇
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前作とは一転、みんな揃っての大立ち回り……の予定です
【夜8時過ぎ】の更新です、たぶん。よろしければお付き合い下さい。
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