Episode:85
ひとつひとつありそうなことを考えて、俺はすごくヤなことを思いついた。
「もしかしてあの教官たち、反乱に加わるんじゃないか?」
「え、それヤバいよ。ただでさえ講堂とかあんな状態なのに、こっちの教官まで帰ってきたら、僕たち勝ち目ないじゃん」
「ああ……」
何しろ「教官」だ。上級隊の先輩たちを教える側だ。そんなの相手に、俺たち下級生が何か出来るわけ無い。しかも先輩たちがこっちへ引き離されてるから、俺らやられ放題だ。
「先輩たちに、何とか知らせなくちゃ」
「だな。でも教官たちに見つからないようにしないと」
様子を見ながら近づいて、見つかる前に木々の間に隠れる。
話し声が聞こえてきた。
「イマド=ザニエスが逃げ回ってるらしいな」
「ルーフェイア=グレイスも脱獄したらしい」
「それはやっかいだな……あの2人が組んだら、さすがに手ごわいぞ」
内心ガッツポーズする。イマドが逃げ回っててルーフェイアが逃げ出したなら、かなり教官たちはてこずるはずだ。
けど、それも「今のままなら」っていう条件付きだ。もしここの教官たちがみんなで一斉に帰ったら、ルーフェイアだってまた掴まるかもしれない。
「ヴィオレイ、行こう。少しでも早く先輩たちに知らせないと」
「うん」
本当は今、俺たちが船を爆破でも出来ればいいんだけど、そういう技術はまだ教わってなかった。それに何人も教官が居る中を突破して船をどうにかするなんて、たった2人じゃ無理だ。
だから、急ぐ。先輩たちが事情を知って教官たちを足止めしてくれれば、向こうはそれだけ楽になるはずだ。
細い道を見失わないように気をつけながら、俺たちは木々の間を進んだ。道が合ってるかどうかは自信が無いけど、向こうから教官が来る方向を選びながら歩いてく。
平坦だった道が、少しずつ上り坂になってきた。
「もしかして、そろそろ本陣かな?」
「だといいんだけどな……」
そう期待しながらも、何だか心配だ。着いたと思ったら道を間違ってたとか、笑うに笑えない。
けど、今回は当たりだったらしい。坂を上りきった辺りで行く先に明かりが見えた。
「よかった、先輩たちだ!」
ヴィオレイが駆け出す。
「おい、待てよ」
慌てて俺は後を追いかけた。
「おーい、せんぱーい!」
走ってくヴィオレイの前に、人影が立ちはだかる。そして次の瞬間、ヴィオレイは投げ飛ばされて地面に叩きつけられてた。