Episode:84
◇Armal
俺たちは磁石を頼りに、海岸を南へ進んでた。
地図がないからはっきり分かんないけど、上陸したところからは、南向けてへずっと砂浜が続いてる。だからヴィオレイと相談して、行けるとこまで砂浜行ってみようって話になった。
で、月明かりの下を延々と歩いてる。
「本陣、どこかな?」
「知るかよ」
考えてみるとかなり無謀だ。
先輩の話じゃ、桟橋からならちゃんと立て札と道らしきものがあるっていう。けど関係ない砂浜に着いちゃったから、位置なんて見当もつかなかった。
分かってるのは、島の東西に高台があって、そこが本陣になってるってことくらいだ。
「高台ってあれかな」
「だと思うけど……」
暗いからはっきり見えないけど、砂浜の先が高くなってる。他にはそれっぽいとこが見当たらないから、たぶんそうだろう。
周囲が切り立った崖でその上に校舎だのがある本島とちがって、ここは砂浜がなだらかに高くなってって、自然に草なんかが生えてる地面に変わる。本島と違って狭いからか、生えてる木はまばらでちょっと小ぶりだ。ただそれでも、俺たちの背丈の倍はある。
どっちにしても、長く続く砂浜のほうが絶対に歩きやすい。だから俺ら、てくてく砂浜を行くしかなかった。
けどそのうち、おかしなことに気づく。
「おい、なんか向こう、明かり見えないか?」
「うん、僕もそれ言おうと思ってた」
砂浜のまだかなり先だけど、小さな明かりが右往左往してた。
「先輩たちかな?」
「教官かもな」
「あ、それヤだ。端っこよらない?」
「だな」
砂浜の真ん中は歩くのやめて、草と木の茂ってる傍に移動する。ここならよっぽど近づかれない限り、見つかったりしないだろう。
木の陰に紛れるみたいにして、少しずつ近づいてく。
「教官たちだね。何してるのかな?」
「船に乗り込んでるみたいだな――え?」
自分で言っといて不思議に思った。
今日の演習は泊りがけで、夜通し続くいちばん大規模なやつだ。だから先輩たちは帰ってこない。なのに教官たちが暗くなってから船に乗り込んでるって、なんかおかしい。