Episode:82
「Aクラスで逃げたの、誰と誰?」
気になってイマドに訊いてみる。
「んー、まず俺だろ、アーマルだろ、ヴィオレイだろ、それにシーモアとナティエス。あとお前が牢壊して出てきちまったから、プラス1。ミルとか他は分かんねー」
「あ、ミル、後から掴まったみたい」
あたしの言葉にイマドが食べる手を一瞬休めて、なんとも言えない表情をした。
「――教官に同情しとくか。つかミル捕まえるとかバカだろ。疫病神飼うようなもんじゃねーか」
「あたしもそう思う……」
彼女を中に入れるくらいだったら、外で好きにさせておいたほうが絶対にいい。もちろんそれでもかなり不安だけど、中に入れてしまうよりは間違いなくマシだ。
敵に回しても違う意味でイヤだけど、味方にいても妙に困る、それがミルだった。
「ったく、ホント教官たちアタマ大丈夫か? お前捕まえて牢屋ってのもアホすぎだし。どうせ壊されるってのに」
「自信あったみたい。魔法が弱められる結界があるって」
「その程度でかよ……」
イマドが食べる手を止めてため息をつく。
「お前の魔法の威力、その辺の連中の倍以上じゃねーか。それで最上級やられたら意味ねーだろ」
「……あのね、面倒だから……精霊、呼んじゃった」
「そこまでやったのか」
イマドが苦笑しながら、お皿をおじさんに差し出した。
「すんません、おかわりもらえません?」
「おう、腹いっぱい食え」
即座にお皿に食事が盛られる。
「ありがとうございます。――にしても、何がどーなってんだ? とっさに教官ども引っ掻き回しに走っちまったから、よく分かんねぇんだよな。なんか副学園長が好き勝手始めたってのは、読み取ったけど」
「あたしもそれ以上は……ってイマド、追いかけてきてた教官たちは?!」
確か奪った教官たちの通話石内でも、イマドは重点的にマークされてたはずだ。なのにこんなところで食べてたら、きっと追い詰められて掴まる。
「一応捲いてきた。もう行くけどな」
「あたし行ってくる! イマドはもう少し食べてて!」
あたしは食堂を飛び出した。
教官たちの通話石を起動させると、念話に変換された会話が聞こえてくる。
『イマド=ザニエス、まだ発見できません』
『施設を全部探してみろ。案外食堂辺りにいるかもしれん』
『了解』
このままじゃ、見つかるのは時間の問題だ。