Episode:81
「許せんな、私らが精魂こめて作った食事を食べに来させないとは」
「ホントだわ。だいいち子供なんて食べてなんぼなんだから、食べなきゃ持たないのに」
「よし、これから持って押しかけよう」
「だ、だから待ってください!」
また慌てて止める。
「教官たち、武装してます。だから万が一って事も……あとその、隣に食事を。そっちは安全なので、先にお願いします」
みんなにご飯をっていうおじさんたちの気持ちは分かるけど、危険なところへ真っ先に行くなんて論外だ。
「隣の診療所に届けるのは分かったが、講堂はどうするんだい?」
食事を持ち帰り用の箱につめながら、おじさんが言う。
「何人か講堂に行かずに済んでるので、そのみんなで協力してやってみます」
本当は協力できる保証がないけど、そうでも言わないとおじさんたち、講堂へ突撃してしまいそうだった。
「そうかい、分かった。じゃぁまずこれを隣に――」
おじさんの言葉の途中で、裏手のドアが開いた。みんなの視線が一斉に注がれる。
「――イマド?!」
ダーティーブロンドの見慣れた姿が、扉の隙間から滑り込んできた。
「どうしたの?」
「……腹減った」
情けない声でイマドはそう言うと、その場へへたり込む。
「すんません、メシ……」
「よし来た! いっぱいあるぞ、食え食え」
おじさんが嬉しそうに料理をお皿に盛って、彼に手渡した。
「ありがとうございます!」
喉に詰まるんじゃないかって勢いでイマドが食べ始める。
「どこに……居たの?」
「島ン中あっちこっち。つかお前こそどこに居た?」
「なんか、地下牢に入れられちゃって」
それから太刀を誰かが届けてくれたこと、牢を壊したこと、教官たちを何人か倒したこと、隣の診療所は安全なことを話した。
「太刀届けたのは、アーマルとヴィオレイだな。ナティエスがお前の部屋から持ち出したの、あいつらが受け取ってたから」
「そうなんだ……」
あとでちゃんとお礼しないといけない。
それにしてもさすがAクラスだ。教官たちが言ってた通り、けっこう逃げてる。




