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Episode:08

◇Nattiess


 午後のお茶終わって、それからレポートの資料漁りを図書館でして。だからあたしが部屋に戻ったときは、もうだいぶ日が傾いてた。

「ただいま……あれ?」

 開けた寮の部屋の中は、がらんどう。居ると思ったルーフェの姿、なかったの。


「ルーフェー?」

 彼女のベッドルームも覗いてみたけど、やっぱり姿はない。

「……訓練でも行ったかな?」

 夕方はルーフェ、よく訓練島へ行っちゃう。


 ――歴史のレポートのこと、今のうちに訊きたかったんだけどな。


 ルーフェはともかく成績よくて、中でも歴史は得意だから、教わるにはうってつけ。訊けば概要、すらすら答えてくれる。だからそれ書き留めて参考にして、そこから資料当たれば間に合っちゃう。

 けど、居ないんじゃしょうがない。


 あたしは机の前で、持ってきた本を開いた。でもなんだか用語やら年代やらが、読んでるうちにこんがらかっちゃったり。

 それでも頑張って、ひとつひとつ整理しながら読んでたけど、だんだん疲れてくる。


「やっぱ、解説ないとダメー」

 誰も聞いてないけどそんなふうに言って、本を机の上に置いた。思ったより本を読むのに時間かかったみたいで、窓の外はすっかり夕暮れだった。

 なんか甘いものでも食べよう。そう思って立ち上がる。


 小さなキッチン――って言うよりちょっと広い洗面所――の戸棚開けると、ビンの中にはまだ、キャンディーがいっぱい入ってた。

 役得だなー、とちょっと思う。


 ルーフェのお母さんって、すごくいい人。あたしたちがきっと困ってるだろうって、こうやってルーフェ通じて、お菓子とか送ってくれる。だから相部屋のあたし、甘いものに困らなかった。


 他の生徒にはもちろん内緒。部屋でいつでも食べられるなんて分かったら、何されるか分かんないから。

 もちろんちゃんとおすそ分けしてるけど、この部屋ほどには食べられないから、余計なことは黙ってるに限る。

 でもご飯前だから、そう思ってキャンディーは一つで終わりにしたの。


 ――あれ?


 ご飯前ってことは、もう日が暮れるってこと。

 で、訓練島が使えるのは日暮れまでで、その後は最後の便が本島へ向けて出発して、無人になっちゃう。そうなったら一晩帰れない。


 だから誰が訓練島へ来たかは全部チェックしてるし、最後の便で全員返すのが決まり。

 なのに、まだルーフェは帰ってこなくて……。

 なんだか急に心配になって、もう一回彼女のベッドルームを覗いてみる。





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