Episode:77
「いつもみんなで、先輩のこと見てます!」
「いつも……?」
あたしなんか見て、何か面白いんだろうか?
そういえば世の中には、好きな相手を徹底的に付け回す人がいる、っていう話を聞いたことがある。
でもこの子を見てる限り、そういうのとは違う感じだった。
「あ、その、別にヘンな意味とかじゃなくて! でも先輩美人だし」
話を聞けば聞くほど、謎が深まっていく。だからムアカ先生が話をさえぎってくれたときは、心底ホッとした。
「はいはい、もうそのくらいにしなさいね。そういう場合じゃないでしょ」
「え? あ! ごめんなさいっ! あぁニネットどうしよう、これじゃ先輩に嫌われちゃう」
前言撤回、やっぱり事態はこんがらかったままだ。
というか、別に誰も嫌ったりしてないのだけど……。
どうしたらいいのか困り果ててたら、また先生が間に入ってくれた。
「ニネット、先輩が困ってるでしょ。あなたの話はその辺までにしときなさいね」
「はぁい」
ちょっと面白いところがある子だけど、悪気はなかったんだろう。ニネットが少しだけ口を尖らせてみせてから黙った。
「で、ルーフェイア、あなたはどうしてここに?」
やっと話が進みだす。
「私が生徒たちから聞いたところじゃ、みんな講堂に集められてるらしいんだけど。あなたは行かなかったのね」
「行かなかったというか……行けませんでした。収監されてたので」
「収監?!」
先生が素っ頓狂な声を出した。
「収監って、牢に入れられることでしょう?! なんであなたが。というか、この学校にそんなものあったの? あ、もしかして営倉?」
「教官が言うには、古い時代の牢屋らしいです」
確かに言われてみると、どうしてあんなものがあったんだろう? それとも貴族の館って、牢屋を作るのがポピュラーだったんだろうか。
先生も似たようなことを言う。
「なんだって建物に牢屋なんて……貴族の考えることって分からないわ。けどそれにしたって、どうしてあなたがそんなところに?」
「分かりません」
むしろ、あたしが訊きたい。
ただ先生は、この答えに納得出来なかったんだろう。言葉を変えてまた訊かれた。