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Episode:72

「ここへ来たお嬢ちゃんの話じゃ、低学年は講堂に集められてるらしいからな。何とかせんと」

 耳を疑う。この状況で小さい子たちを一堂に集めてるってことは、待遇はともかく人質にされてるってことだ。迂闊に手を出せない。


「まぁあのお嬢ちゃんには、とりあえず診療所へ行ってもらったが……無事着いているといいが」

 そこまで言うとおじさんは、また教官たちに目をやってつぶやいた。


「ロープが要るな。取ってくるか」

 おじさんが小屋の中へ入るのを待って、隠れた場所からあたしは出た。


 おじだんと話をしようかと思ったけど、結局やめる。接触はいつでも出来そうだし、これが罠って可能性もゼロじゃない。だったらこのまま単独行動をしてたほうが、あたしの居場所やなにかを知られないで済むはずだ。


「セレスティアル・レイメント」

 もう一度教官たちを軽くして、最初に目をつけていたボートの中へ1人ずつ寝かせていく。

 ついでに舫ってある綱を解こうかなと思ったけど、さすがにやめた。流れていって転覆でもしたら面倒すぎる。


 まだ目を覚まさないのを確認したところで、小屋のドアノブが音を立てた。

 急いでまた隠れる。

「おやおや、手際のいいことだ。これじゃ私の出る幕が無いな」

 おじさんが面白がるような調子で言った後、更に続けた。


「それにしても演習島の教官連中、どうも一部帰ってくるらしいな。そうなれば講堂の子たちの救出は、難しくなるか……」

 嫌な情報だ。けど知らなかったらもっと大変なことになるから、教えてくれるのはありがたい。


 ――偽情報の可能性もあるけど。

 相手が焦るような情報を流して慌てさせて、というのは常套手段だ。だから鵜呑みには出来ない。


 そうは言ってももし本当に教官たちが帰ってくるなら、救出が難しくなるのは間違いない。だから罠の可能性を考慮に入れながら、講堂開放に動くしかなかった。

 さっき教官たちを縛り上げたついでに懐から奪っておいた、通話石を出す。あたしが発言するのはムリだけど、こっそり聞くだけなら問題ないはずだ。


『イマド=ザニエス、捕獲できません』

『シーモア及びナティエス=デボワール、所在不明』

 いろんな情報が飛び交ってる。それにしてもさすがAクラス、けっこうな数がちゃっかり逃げてるらしい。

 ただ、その逆も居た。


『ミルドレッド=セルシェ=マクファディ、捕獲しました』

 嬉しそうな教官の声が気の毒に思える。ミルには悪いけど彼女を中に入れるなんて、猛毒を飲み込むようなものだ。

 もっともミルが外に居たら居たで、やっぱり問題が多いのだけど……。





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